ひな祭りといえば、ちらし寿司、ひなあられ…に加えて「おこしもの」。愛知県尾張・西三河エリアの家庭では昔から手作りされてきたご当地お菓子ですが、「最近作っていない」という人も多いのではないでしょうか。
そんな時代もあってか、最近は木型の販売も減ってきているそう。おこしものに初挑戦の県外出身ライターが、郷土料理に詳しい「安城の食を考えるプロジェクト」の古居さんと鈴木さんに、おこしものの作り方から、木型の代用品、美味しい食べ方まで徹底取材しました!
※2024年2月取材・撮影。お出かけの際は最新情報をご確認ください
おこしものには先人の知恵が詰まっている!?
おこしものの歴史には諸説ありますが、生まれは江戸時代。お米は献上品として贈られる一方、一般的な家庭では欠けたお米「くず米」を石臼で粉にして、水で固め、蒸して食べていたそう。
後に保存食になり、焼いて醤油などを付けて食べる風習が生まれました。昭和時代には、家庭でくず米を食べることがなくなり、お煎餅屋で材料として使われるように。
さらに、和菓子屋の職人が落雁用の木型を使って、今のおこしものの原型を作り始めたそう。ちなみに、木型に押し付け、型おこしすることから、「おこしもの」「おこしもん」といいます。
「くず米を蒸して食べられるようにしたこと、木型に入れて祝い菓子にアレンジしたことは先人のアイデアですね」と古居さんが話してくれました。
おこしものに必要な材料は?
おこしものは、お雛様へお供えしたあと、焼いて食べられてきました。お祝い菓子にふさわしい形で、赤、黄、緑など着色されているのが特徴です。
一人あたりの材料は次の通り。子どもが食べやすいように甘めの味付けです。砂糖醤油などを付けて食べる方は、指定量より減らしてもOKです。
【材料】
・米粉 150g
・水 75g
・砂糖 30g
・打ち粉用米粉 少々
【色付け用】
・食用色素(赤・黄・緑)少々
・米粉 少々
本体生地と着色生地は分けて準備
まずは本体生地を作ります。米粉、砂糖に水を加えながら耳たぶぐらいの固さになるまでこねます。
次に、食紅と米粉を混ぜて、色付け用の生地を作ります。蒸し上がると色が濃くなるので、食紅の量を調整しながら入れるのがおすすめ。ポイントは「生地の固さを本体生地よりも少しゆるめにすること。自由に形を調整できるので色付けがしやすくなります」と古居さんが教えてくれました。
仕上がりをイメージしながら色付け作業
打ち粉を木型に広げたら、まず着色した生地を色付けしたい部分に置いていきます。古居さんのアドバイスの通り、少しゆるめに練った生地は、丸めたり、細長い棒状にしたり…と扱いやすいです。出来上がりをイメージしながら並べますが、思っている場所にうまく置けず難しい……!
思い出すのは、小さい頃に触った紙粘土の感覚。子どもは楽しんでくれそうですね。
着色した生地を配置したら、手のひらで平らにした本体生地を上から被せ、手のひらや指を使って押し込みます。真ん中にくぼみができたら、さらに生地を足し、均一の高さになるよう調整。はみ出した生地を指で型に合わせます。
木型を立てて持ち、台の上でトンとたたき、生地を型から外します。外しにくいときは、木串で丁寧に。
木型がないときこそ、アイデア広がる!?
木型がない場合は、クッキーの型を使うこともできます。本体生地を薄く伸ばし、クッキーの型で型どり、色付けした生地をのせ、手のひらを使って均一の厚さにします。
色付きの生地をのせた立体感をあえて残したり、白い生地に色付きの生地を混ぜて、マーブル状にしたりなどのアレンジも。家にある道具で、ぜひおこしもの作りを楽しんでみてください。
蒸したてはモチモチな仕上がりに
出来上がった生地を8分程度蒸したら完成!出来立てはもちもち!砂糖を加えているから、そのままでも優しい甘さでペロリと食べてしまいました。生地の厚みがある分、モチモチで食べ応えがありました。
その他にも、砂糖醤油やきな粉を付けて食べるのもいいですし、チーズをのせて温めて食べるのも美味しいのだとか。
木型を手に入れるには
おこしものの木型には、桜や梅など花の形をはじめ、富士山、松の木、鯛、宝袋など縁起物のモチーフがあります。最近では蝶や自動車の形も作られているそう。
おこしものを家庭で作ることが少なくなったこともあり、最近は木型の生産も減っているようです。欲しい方は調理道具の問屋さんで探してみてください。アイデア広がる!おこしもの作り
愛知県にかわいい郷土菓子があると知り、気になっていた筆者。初めて食べた感想は、モチモチで甘さがあり、おいしい!作る際は、木型の形に合わせて、どこに色がつくと綺麗かな?と考えながら作業するので、思っていたより頭を使った気がします…!
以前は大工などの職人が彫っていたという木型。現代の機械で作られたものに比べると、彫りが深く、職人の技を感じられるものでした。今はなかなか手に入らないようですが、見つけたときには買ってみたいですね。
この木型でつくるおこしものの文化も長く後世に伝わるといいなと思います。
安城の食を考えるプロジェクト
今回おこしものの作り方を教えてくれた古居さんと鈴木さんは、古くからある食文化を守り、まちおこしや地産地消による食料自給率の向上を図る、認定NPO法人エコネットあんじょうの所属団体「グリーンそう」で活動しています。年に2~3回、おこしものの講座を開かれているそう。
とても明るいお二人は、食の教室だけでなく、廃食油を使ったせっけんづくりなど環境に優しい教室も開いています。気になる方は、エコネットあんじょうもしくはエコきちをご確認ください。
NPO法人地球温暖化対策地域協議会 エコネットあんじょう
公式サイト https://econetanjo.org/
柿田公園管理事務所 エコきち
公式サイト https://www.ecokichi.net/koza.php