旧暦の8月15日は「十五夜」。1年でもっとも美しくきれいな月が見られるとされています。新暦(太陽暦)の今では9月中旬~10月上旬頃ですね。
そんな十五夜のお月見に欠かせないのが、やっぱりお月見だんご。真ん丸で白い一口大のお団子を積み上げたものが一般的ですが、愛知県の一部地域ではしずく型で、色も3色あるらしい!?そんな特別なお月見だんごを提供するお店に直撃取材。形や色の由来、作り方を調査しました!
※2023年9月取材・撮影、2024年9月店舗情報を更新
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知ってる?しずく型・三色のお月見だんご
こんにちは、近所のはなし編集部員の鶴見です!生まれも育ちも愛知県刈谷市。給食でこの「しずく型お月見だんご」が出されたことを鮮明に覚えています。
てっきりこの地域の定番と思い込んだまま大人になりましたが、ひょんなことから愛知県内、さらには刈谷市内でも知名度に差があることが判明!それに、形や色の由来も全然知らない…!
今回は、刈谷市でこのお月見だんごを製造・販売している「みよしや八幡店」で詳しい話を聞いてきました!
刈谷の人気店で調査!
刈谷市の亀城公園にほど近い「みよしや八幡店」。おにぎりやお弁当、秋祭りの投げもちをはじめとするおもち各種、和菓子などを製造・販売しています。
店内のショーケースには手作りのおいしそうなおにぎりやお惣菜がずらり!ひっきりなしにお客さんが訪れてはお買い物や注文をしていきます。
総支配人の石崎修さんにお話を聞きました!
しずく型ではなく「里芋型」だった!
お月見だんごは3色入って300円(税込)。9月限定の販売で、予約注文も可能です。この形は、愛知県、特に名古屋方面で親しまれているそう。1個ずつフィルムシートで包んであって、手がべたべたしないのがうれしいですね。
石崎さんによると、この形はしずくではなく「里芋」。旧暦8月の十五夜に見られる月を「芋名月」と呼び、秋の収穫物、特に芋類を供えて実りに感謝します。
十五夜の月を「中秋の名月」と呼ぶのは有名ですが、芋名月はちょっぴり知名度が低いかも?
3つの色で開花・結実・収穫を表す
気になるのがこの3色の意味ですが…里芋の花が咲き(ピンク色)、実を結び(白色)、土の中から収穫する(茶色)様子を表しているのだそう。
「一連の流れを表現しているので、3色セットで販売するときはピンク色・白色・茶色の順に並べるんですよ」と教えてくれました。
お月見だんごの作り方は?
もっちりやわらかな食感が特徴の、このお月見だんご。みよしやでは、お花見の三色だんごに近いレシピで作っています。
米粉と砂糖、浮き粉(小麦粉からでんぷんを精製した粉)に熱湯を加え、「蒸練機」という特別な機械で蒸しながら練ります。その後、餅つき機でつく→一旦冷水へ→さらに餅つき機でつくことで、食感がしっかりするのだそう。最後に、決められたサイズにカットし、成型して完成!
ピンク色は食紅、茶色は黒糖で色をつけています。「黒糖の風味がきいている茶色が一番好き!というお客さんも多いですね」と石崎さん。
根強い人気を誇るお月見だんご
お月見だんごの、例年の売れ行きについて聞くと「好きな方が毎年決まって買いに来るという印象です」。根強い人気を感じます!
ちなみに、石崎さんご自身は高浜市出身。このお月見だんごは、みよしやに入ってから知ったそう。“刈谷の生き字引”ともいわれた先代から、由来や意味などを教えてもらったのだとか。
愛知県の市民たちは...
今回取材した「みよしや八幡店」のある刈谷市民のみなさんに尋ねたところ、意外にも「初めて見た!」という意見がちらほら。市内でも知名度に差があるようです。
愛知県内全域に範囲を広げ、聞き込み調査を行ったところ、知多市・知立市・豊田市から「知ってる!」の声があがりました。対して、知らない側の市民からは「ちまき?」(西尾市)、「サラダチキンに見えた」(高浜市)という声も。
何気なく過ぎてしまいがちな「十五夜」。今年はきれいな月をゆっくりと眺めながら、お月見だんごをめぐる談義に花を咲かせてみては?
(取材:鶴見弥耶/2023年9月取材・撮影、2024年9月店舗情報を更新)