3月3日のひなまつりに合わせ、愛知県西三河エリアの風習を取材してきた「近所のはなし」。2023年には「いがまんじゅう」、2024年には「おこしもの」を調査し、いよいよ西三河エリアのひなまつりをすべてこの手に収めたかとさえ思っていた矢先―。
「愛知県西尾市の幡豆エリアでは、『油菓子』をおひなさまにお供えするらしい」
この情報が入るまで「油菓子」の存在さえ知らなかった生粋の刈谷市民が、初めての油菓子体験をレポート!油菓子とはいったい何なのか、どんなお味なのかなどをお伝えします。
知られざる風習との出会い
「愛知県西尾市の幡豆エリアでは、『油菓子』をおひなさまにお供えする」
この情報が入ったのは、2024年2月29日のこと。ひなまつりを目前に飛び込んできた情報に、近所のはなし担当者は一同騒然!どのくらい浸透している風習なのか?そもそも油菓子とは何なのか?さっそく西尾市出身の人たちに聞き込み取材を開始しました。
「おばあちゃんが幡豆の人だったんだけど、ひなまつりの時期になると朝から油菓子を山ほど揚げてくれて…私は大人の目を盗んでつまみ食い(笑)」
「え、むしろ、市外の人は食べないんですか??」
そして大本命・幡豆エリア出身者から…「毎年ひな飾りにお供えしています!我が家ではこんな感じでおまつりしております!」とのコメントとともに、実際のお写真を入手!それがこちら。
とってもきれいなひな飾りにうっとり。
と、その足元には…!
世界よ、これが油菓子だ!
中央におはします「油菓子」。
ドーナツのような、サーターアンダギーのような印象です。小麦粉、砂糖、卵を使った生地を油で揚げたお菓子だそう。西尾市のお隣・蒲郡市の郷土菓子として知られていて、保存がきくことから漁のおともに食べられていたのだとか。
おひなさまにお供えするということで期間限定の食べ物かと思いきや、年中買えるとのこと。これは食べてみなければ!と思っていたその矢先…。
お写真のみならず、なんと実物までも頂戴してしまいました…!
こちらは西尾市寺部町にある「手づくり菓子 なごみ」さんの油菓子。長さはだいたい8cmくらいで、意外にもずっしりとした重量感あり!表面はカリッとしていて、陶器のお皿に出すときはカランと心地よい音が。ではさっそく一口…。
けっこう硬い!
前歯では少々不安になったので、犬歯でガブリといかせていただきました。カリカリというか、ポリポリというか…歯ごたえがありつつもスムーズにほぐれていき、生地の香ばしさと甘さが口いっぱいに広がります。シンプルながら後を引くおいしさで、このお菓子を普段から買える幡豆エリアのみなさんがうらやましくなりました!
「初めての油菓子」まとめ
【まとめ】
・幡豆エリアのひなまつりでは「油菓子」をお供えする。
・蒲郡の郷土菓子として知られ、近隣エリアでは年中買える。
・意外にハードな歯ごたえ!後を引くおいしさ。
以上、油菓子との出会いから、初めての油菓子体験までをお伝えしました!
ちなみに、「なごみ」さんの油菓子は手綱こんにゃくのような形をしていますが、お店や家庭によって形はさまざまなのだそう。また、別の人からは「ごまを生地に入れる家庭もある」「最近はやわらかめに仕上げるお店が増えてきたらしい」といった情報も。
「油菓子」の世界はまだまだ広く、そして奥深いようです。(取材:鶴見弥耶/2024年3月取材)