愛知県刈谷市一ツ木町で、日本人と外国人とのつながりを生み出すプロジェクトがおよそ10年前に立ち上がりました。この「ワールド・スマイル・ガーデン」略して「ワールデン」というプロジェクトでは、国籍や性別、年齢に関係なく多様な人たちが集まり、農作業を通じて交流を深めています。
SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」につながる取り組みを取材しました。
農作業を通じた国際交流
愛知県刈谷市は自動車関連の企業が多いことから、そこで働く外国人が多く住んでいます。2022年10月1日現在で36以上の国と地域の5,144人が生活しています。なかでも外国人が多い一ツ木町では、およそ10年前に、地域に住む日本人と外国人とのつながりを生み出すプロジェクトが立ち上がりました。
それが「ワールド・スマイル・ガーデン」略して「ワールデン」です。500平方メートルの畑に国籍や性別、年齢に関係なく多様な人たちが集まり、季節に合わせた様々な作物を植えたり収穫したりして交流を深めています。
一ツ木町で暮らす外国人が町で繋がる
活動に関わる刈谷市国際交流協会ボランティア、金子多江子さんはワールデンの取り組みについてこう語ります。
「外国から来て日本に暮らす人は、不安を抱えながら生活していることが多いです。だから町の中で気軽に話ができればいいなと思っています。こうした農作業中の何気ない会話から繋がりができれば心強いですよね」
活動に参加する外国人にも話を聞いてみました。
「日本人と交流してコミュニケーションも取れるし、日本語の練習にもなるから嬉しい」
SDGsが採択される以前からSDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」につながる活動が行われていました。
挨拶できる間柄を10年で実現
今では多くの人が参加するワールデンですが、立ち上げ当時、日本人と外国人の間には溝がありました。当時を知る前会長の近藤重光さんが教えてくれました。
「当時は外国人の家庭を訪問すると警戒されていました。少しずつ心を開いて来てくれるようになり、今では『楽しいね』と言われるようになりました」
当初の目標は、お互いに挨拶をする間柄になることだったという近藤さん。10年経ってようやく実現できたといいます。これまでに「かかし作り」や「流しそうめん体験」など、日本の文化を体験できる場を提供し、様々な国籍の人が楽しんできました。
外国人が架け橋になり活動が広がる
ワールデンにはどんな外国人が参加しているのでしょうか。
一ツ木町在住でフィリピン出身の川口ビバリさんは、仕事や家事で忙しい毎日を過ごす中でも、町内の日本人とも交流したいと4年前からワールデンに積極的に参加しています。
「ここに来れば友達もできるし日本語の勉強にもなる。毎日忙しいけれど、ワールデンが私を呼んでいます」
川口さんはフィリピン出身者を集めてSBKというグループを作り、フィリピンの民族舞踏「バンブーダンス」を発表する活動などを行っています。さらにグループのメンバーをワールデンに誘い、日本人と外国人の架け橋になっています。
交流することで心の壁を無くす効果も
また、アメリカ出身で知立市在住のケニャッタ・リチャードソンさんは、みんなから「ケンさん」と呼ばれ親しまれています。散歩中に一ツ木町の人に声を掛けられ、人見知りの息子のためになればと思い、参加することにしたそうです。ケンさんはワールデンの活動についてこう語ります。
「活動に参加することで、我が子は人見知りを克服して誰とでも話せるようになりました。たくさんの国の人と交流すれば、外国の人に対する恐怖心もなくなります。日本人の中にはまだ、外国人に対して恐怖を感じる人も多いので、ワールデンに参加することが心の壁を無くすいい機会になると思います」
日本人が気軽に国際交流できる場に
ケンさんが言うように、一ツ木町に住む日本人にとっても日常では外国人と交流する機会があまり無く、ワールデンの活動は貴重な機会になっています。一ツ木町に住む酒井桂子さんはこう話します。
「外国の方が多いのは何となく知っていましたが、ワールデンに参加してみて本当にたくさんの国の人がいるとわかりました。息子たちにも外国人の集まる場を見ていってもらい交流して欲しいです」
今回は、地元の雁が音中学校の生徒も初めて参加しました。感想を聞いてみました。
「外国の人との交流ってあんまりないので、いい経験になりました」
「収穫しながらで変に頑張ったりしなくても自然と話せたのでよかったです」
町ぐるみで「住み続けられるまちづくりを」
国籍や世代をこえて「住み続けられるまちづくりを」目指すワールデンの取り組み。 会長の及川啓太さんは、活動について次のように話します。
「テーブルで向かい合って話すよりも、農作業という目的があって話したほうが話しやすい。おいしい果物を食べれば会話が生まれるし。農作業と国際交流は相性がいいですね。10年で参加者の間で挨拶ができる間柄を構築できたので、今後はより多くの日本人に参加してもらい町全体に広げていきたい」
地域に暮らすもっと多くの日本人と外国人がコミュニケーションをとり、理解し合えるような町を目指しています。 (取材・撮影:モーション・ビジュアル・ジャパン/文:石川玲子 2022年10月取材)
ワールド・スマイル・ガーデン(ワールデン)
国籍・性別・年齢に関係なく、多様な人々が集まって野菜や花を育てたり、料理や文化を紹介しあったり、みんなで楽しむコミュニティガーデン
場所:刈谷市一ツ木町4丁目13番地1
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