
毎日の料理に欠かせない食材の卵。ごみとして捨てられてしまう卵のカラを、ひと手間加えてリサイクルするお好み焼き店が西尾市にあります。
店が使う卵の量は、1週間になんと300個以上。それをすべて集めて細かく砕き、園芸用の肥料として客へ配っています。「西尾のソウルフード」をつくる、創業70年の店の取り組みを取材しました。
西尾市のお好み焼き店「高知屋」
西尾市中心部の中央通りにあるお好み焼き店の高知屋。
高知県出身の初代店主が1952年に開業し、そこから家族3代にわたって店を経営しています。現在は3代目店主の曾根太一朗さん夫婦と母親の貞子さんが店の味を守っています。
ソウルフードの「高知屋焼き」
高知屋の名物は、もっちり食感が楽しめる高知屋焼。大阪風でも広島風でもない、このもっちり食感の秘密は作り方にあります。一般的なお好み焼きは、生地を焼く前に卵を入れてかき混ぜてから焼きますが、高知屋焼きでは卵はあとから載せて焼きます。
奥さんの佳奈さんにその特徴を聞いてみると、「卵を後から載せて広げています。なので食感は真ん中がふわふわに、外側は生地のもちもち感を味わえます。1枚で両方の食感を味わえるのが他のお好み焼きとは違うところ」なんだとか。
これがいつしか「西尾のソウルフード」と呼ばれるようになりました。
大量のゴミに悩んでいた高知屋
高知屋では卵のカラが毎日大量に発生します。容積のかさばる卵のカラを何とかしたいと考えていたとき、店主の曾根太一朗さんは来店客が話したある一言を思い出したといいます。
「お客さんから卵のカラが肥料になるので分けてくれないかと言われたことがありました。ゴミが多く出ていて何とかならないかと思った時にそれを思い出したんです」
調べていく中で、卵のカラが石灰や土壌改良材の代替になるということが分かったといいます。
環境に優しく、お客様にも喜ばれる
こうして2022年から、卵のカラを砕いて、園芸用の肥料として来店客に配るというリサイクルを始めました。環境にもよい上に、お客さんにも喜んでもらえる取り組みだと太一朗さんは話します。
「70年以上地元の方に通っていただいて高知屋が続いてきたと思っていますので、肥料の配布はお客様への感謝の気持ちでもあり、環境のためにゴミも減らせる、良いことしかないことだと思って始めました」
時間も手間もかかるリサイクル
卵のカラをリサイクルするには様々な工程が必要。まず、カラを潰すには握力が必要で、太一朗さんは「筋トレだと思ってやっています」と笑います。
きれいに洗ってある程度細かくすると次はカラをしっかりと乾かします。1日から2日ほど鉄板の下のスペースに置き、熱を利用して完全に乾燥させます。
最後に、このために購入した機械を使って細かく砕いていきます。
時間も手間もかかる工程について大変ではないのか聞いてみると、「お客さんの喜ぶ顔が見たいですね。よかったよと言ってもらえると嬉しいです」と話してくれました。
これからも地元の人に愛される店を目指して
それまで捨てるしか方法がなかった大量の卵のカラを、園芸用の肥料としてリサイクルし始めた高知屋。3代目の太一朗さんに、今後取り組みたいことを聞きました。
「ニワトリを飼って、卵のカラの肥料を使ったキャベツの外葉を餌にして、そうして産んだ卵とキャベツを使ってお好み焼きを作り、それを子ども食堂の方に提供できたらいいなと思っています。難しいかもしれませんが、SDGsの取り組みにもなりますよね」
これからも、地元に愛される地域に根付いた店にしたいと語る太一朗さん。高知屋から地域へ広がるSDGsの輪となっていくでしょう。 (取材・撮影:杉浦和哲 /リライト:石川玲子)
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