
西尾市一色町で栽培されたサツマイモから作られた芋焼酎。西尾市のふるさと納税の返礼品にもなっています。この芋焼酎を作ったのは、鋳物関連の会社である榊原工業です。産業廃棄物を減らす活動を行ってきた結果、芋焼酎ができたというのです。サツマイモの栽培から行った榊原工業の芋焼酎と環境活動のつながりをご紹介します。
榊原工業の環境活動
榊原工業は、鋳物の型の一種である中子を製造している会社です。中子とは、自動車部品など鋳物製品の空洞部分をつくるための型で、砂を樹脂で固めて作られます。中子は、取引先の鋳物業者で使われると、熱で樹脂が溶けてサラサラの砂に戻ります。取引先での使用後、再利用も行っていますが、一部使えないものが産業廃棄物となってしまいます。近年は、事業者が自社で排出する温室効果ガスだけでなく、納品後なども含めた全体の排出量を管理しようという動きが大きくなっており、榊原工業は先進的に取り組んでいます。
再利用できない廃棄物に新たな使い道
榊原工業 代表取締役 榊原勝さんは、取引先で一部産業廃棄物になっている中子の砂を何とか活用したいと考え、思いついたのが廃棄砂で農作物をつくることでした。
「鋳物の砂は無機質ですから、養分も何もない状態です。そこに養鰻池の底泥を使って養分を入れて、サツマイモをみんなで作ろうかと考えたんです」
榊原社長が着目したのが、一色地区の特産品でもあるウナギの養鰻池でした。
養鰻池の養分を含んだ土+中子の廃棄砂
近年、高齢化やシラスウナギの高騰などでウナギの養殖は厳しい状況が続き、使用していない養鰻池も増えています。この養鰻池の養分を含んだ土と、中子の廃棄砂を混ぜ合わせて土壌を作り、農作物をつくることにしたのです。この土壌を使って3年前からサツマイモづくりが始まりました。
プロジェクトの名前は、英語で砂を意味するサンドとウナギを意味するイールを組み合わせた造語「サンディール」としました。
みんなで取り組む意義があった
サツマイモづくりには希望する社員全員が参加しています。そこには榊原社長のある思いがありました。
「一部の人間だけでやっていると他の人がどうしても白けてしまうと思ったんです。ですから全員で取り組もうということを社内で共有し、希望者を募ったところ、多くの社員が参加するプロジェクトとなりました」
こうして行なわれたサツマイモづくりには多くの社員が参加し、去年の秋には、3回目の収穫が行われました。
プロジェクトに参加した従業員の声
プロジェクトに参加した従業員にインタビューしてみると、
「工場で働いている人たちとは(部署が違うので)あまり普段合うことはないのですが、サツマイモ作りを通して仲良くなるきっかけになりました」
「プロジェクトに参加したことで、私生活でも『環境に優しい』ということを意識するようになりました」
「捨てられるものをリサイクルして、今回は特に、目に見える成果として焼酎という物が出来上がるということで、意識も高くなったと思います」などの声がありました。
地元企業とのコラボで芋焼酎が完成
予想以上の豊作となったため、2年目には西尾市にある醸造会社に協力してもらい、収穫したサツマイモで芋焼酎を作り、昨年2024年5月に完成しました。
「地元の信用金庫の力を借りて、イノベーションマッチングで地元企業とコラボしようということになり、生まれたのがこの芋焼酎でした。社員にも胸を張って『うちはこういう物も作っているんだ』と言える環境を作りたいと思ったのがきっかけですね」
取引先で、産業廃棄物となっていた砂から誕生した「SANDEEL」は、西尾市のふるさと納税の返礼品にも認定されています。
CO2削減のために取り組んでいること
榊原工業では、サンディール以外にも様々なSDGsへの取組みを行っています。その一つが、CO2排出量の見える化と削減です。すべての成型機にメーターをつけ、CO2の排出量を測定しています。数値が見えることで、社員がCO2削減についてより意識するようになったそうです。榊原社長は「SBTというヨーロッパの認証を取っています。SBTでは11年間でCO2を50.4%削減することが目標で、計画し実行したことをチェックして毎年報告書を作っているんです。今の取り組みでしっかり見える化できてきたと感じています」と話してくれました。
防災で命を守る取り組み
また、SDGsの観点から防災にも力を入れています。工場は三河湾に近く、津波が心配される地域にあります。しかし、辺りに高い建物がありません。そこで榊原工業は、工場の屋上を緊急避難場所にしました。地域の人も含めておよそ1,400人が避難できるといいます。
「工場の中で月に1回話し合いを行っています。そこでどうやって命を守るか、工場の復旧、生産の維持といったことを各ワーキンググループが考えています。その中で出た社員からの発案で、屋上に救助用の救命浮き輪を設置しています」
今後はプロジェクトをさらに発展させる
今後の取り組みについて榊原社長に聞いてみました。
「芋を最後まで使い切るということで、バイオエタノール化していきたいと思っています。さらに生産量が増えてきたら、海外に食糧支援として輸出も考えています。活動の裾野は広げても、私たちの活動の原点は中子の使用後に出る廃棄砂を使う、お客様が捨てるものを、私たちの力で処理するということなのは変わりません」
榊原工業のリサイクルへの取り組みは、20年も前に先代の社長が始めたそうです。長年にわたり環境への負荷を減らす活動を率先して行う、榊原工業の今後の取り組みから目が離せません。
(取材・撮影:映像舎/リライト:石川玲子 2025年1月取材)
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