日本で暮らす外国人が増えている中、質の高い日本語教育の必要性が高まっています。SDGs17の目標の4番には「質の高い教育をみんなに」という項目があります。発展途上国に限らず、日本もこの課題を抱えています。
今回はこの地域の中でも、碧南市の外国人へのサポートに注目、ボランティアで営まれている日本語教室の実情や課題をお伝えします。
外国人が日常生活を円滑に営める環境を
SDGs17の目標の4番には「質の高い教育をみんなに」という項目があります。発展途上国に限らず、日本もこの課題を抱えています。
2019年に施行された日本語教育推進法。これは、日本に暮らす外国人が日常生活や社会生活を円滑に営むための環境を整備することを目的とした法律です。この法律は、日本に暮らす外国人に対する、日本語教育体制の整備が遅れていることを踏まえて制定されました。
日本語学校に入る前の学習の場にもなる
碧南市向陽町にある碧南中部公民館では、週3回日本語教室「きぬうら学院」が開かれています。
現在、きぬうら学院に通うのは、小学生から社会人までの10人ほど。授業を受けているアリエルさん、17歳。アリエルさんはこの春、インドネシアから母親が働く日本にやって来ました。
アリエルさんに将来の夢を聞くと、「大学でITを学び、ゲームなどを作るプログラマーになりたいです」と語っていました。
漢字など壁の多い日本語
アリエルさんが学ぶ隣の部屋では、小学生を中心に、学校の宿題をボランティアスタッフがサポートしていました。
「子どもたちは学校の宿題をしたり、遊びに来たりします。お母さんが、日本語が分からないので、宿題の音読を代わりに聞くこともあります。子どもたちにとって居場所になれればと思っています」ときぬうら学院の代表、神谷みどりさんは言います。
全国の小中高校で日本語指導が必要な子どもたちは、年々増加し続けています。
外国人の子どもたちが感じる日本語の壁
碧南市に住む中学2年生、ニケンさんはインドネシア出身です。最近、ニケンさんは地理の問題に悪戦苦闘しています。ニケンさんに勉強の苦労を聞いてみました。
「漢字が多いので大変です。もし教科書などで漢字にルビが振ってあれば、もう少し楽に勉強できるかなと思います。やっぱり漢字を頑張らないと......」日本語の壁は、外国から来た子どもたちの進学やその先にも大きな影響を与えています。
日本語指導が必要な子どもたちの高校中退率
2021年の高校進学率は全体で99.2%なのに対し、日本語指導が必要な子どもたちの進学率は89.9%と、10%ほど低くなっています。さらに、高校進学後に中退する割合は、日本全体では1%なのに対し、日本語指導を必要とする子どもでは5.5%にも跳ね上がります。
外国にルーツをもつ子どもの高校中退率の高さについて、神谷さんは「日本語で上手くコミュニケーションできず孤立してしまい、学校をやめてしまうケースが多いです」と言います。
きぬうら学院の様子
民間のボランティアで営まれているきぬうら学院の神谷さんには不安もあります。
「今この学院がなくなってしまったら、ここにいる子たちはどうなってしまうんだろうと不安に思います。そう思わなくて済むように、信頼できる誰かに託せればいいのですが」
多国籍化も加速している中、外国人の子どもたちの学習をサポートし、楽しい居場所を作ることは、何十年後この日本を支える外国人人材の育成につながるのだと神谷さんは言います。そのため、神谷さんときぬうら学院は力の限り外国人のより所になろうとしています。
(取材・撮影:オフィスげんぞう/文:石川玲子 2022年8月取材)
きぬうら学院(碧南市中部公民館)
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