愛知県刈谷市に本社を置く株式会社テルミック。自動車部品をはじめ一般産業用機械や建設業界、アミューズメント業界などあらゆる分野の金属・樹脂加工を請け負う製造工場です。コロナ禍でも業績を伸ばしているこの企業を取材すると、そこには従来の製造業のイメージを覆す業務改革がありました。今回はテルミックの様々な業務改革から、これからの時代を中小企業が生き抜く術を探ります。
コロナ禍でも成長を続ける企業「テルミック」
1990年に創業した株式会社テルミック。現在社員は約150人、愛知県刈谷市の本社の他に県内に知立営業所とりんくう常滑営業所、県外には島根営業所があり、さらに中国にもグループ会社を持つ企業です。
2021年の売上は約30億円と、コロナ禍でも成長を続けているテルミック。代表取締役の田中秀範さんは会社が目指す先について次のように語ります。「また来たくなるような工場を目指しています。鉄工所らしからぬ鉄工所ということで従業員のみんながまわりに自慢したくなるような面白い仕掛けを色々と作っています。」
鉄工所らしからぬ鉄工所
田中社長が話す「鉄工所らしからぬ鉄工所」、それは従業員数に表れています。テルミックでは従業員の約7割が女性、さらに半数以上が平成生まれです。
男性の従業員が多いイメージの製造業の中で、女性が多い理由について、「女性は製造業に向いていると思います。女性の目線だからこそ気づける点や部品の手配や工程を進めていく上での丁寧なやり方が、いま会社に必要な力だと思っています」と話す田中社長。そこには、ものづくりの可能性をさらに広げたいという強い思いがありました。
開放的なスペースが社員の交流を生む
そんなテルミックがまず工夫をしているのが、働きやすい職場環境づくりです。テルミックのオフィスを覗くと、目を引くのは従業員たちが働くスペースにカフェのような休憩スペースやお洒落なバーカウンターが設置されている点です。この開放的な空間には、コロナ禍でも従業員が交流できるようにという想いが込められていると田中社長は話します。
実際に働いている社員に話を聞くと、「仕事以外でも従業員と交流できるので、仕事もスムーズに進んでいます」、「従業員同士のオフィスでの関わり合いが多いため助け合う風潮があります。社歴や役職関係なく助け合っているのでいいですね」と好評なようです。
誰もが安心して楽しく働ける職場環境を求めて
こうした職場環境の整備などに力を入れるようになったきっかけについて田中社長は、「2008年にリーマンショックで売上が約8割減少し、従業員の雇用に大きな影響を与えたことがきっかけでした。定年まで働くつもりでいてくれた社員にも会社を去ってもらうこととなり...。従業員を減らさなければならなかったのが本当に苦しかったです」と振り返ります。
経営者として、会社を支えてくれた従業員を守れなかった悔しい経験を、もう二度と繰り返さないと心に誓い、誰もが安心して楽しく働ける職場環境を田中社長は作り上げたのでした。
DX化で社員のモチベーションを向上
そして、テルミックが進めるのは職場の環境整備だけではありません。最新のデジタル技術を駆使したDX化も特徴の一つです。テルミックでは社員の位置情報や業務の進行状況をリアルタイムで共有して無駄やミスを削減、また図面などあらゆる情報をデータ化・共有することで、大幅な作業の効率化とペーパーレスを実現しました。
品質管理グループの春日井尚人さんは、業務改革前後をこう比較します。「昔は紙だらけの状態で『図面どこだっけ?』と探すことがあったり、汚れて再印刷したりしていましたが、今は全てパソコンに入っているので、汚れないし、探すのも楽です。」
さらに各オフィスには大型モニターを設置し、全社の営業成績のランキングをリアルタイムで表示しています。さらには、各地の営業担当者が大きな受注を受けると派手なアニメーションが流れる仕組みになっています。
「仕事があと何%残っているかなどが分かることでモチベーションにもつながるし、仕事がやりやすくなると、従業員の意識も高まっていきます」と田中社長。こうした見える化を実現したことで従業員のモチベーションアップにもつながっているようです。
独自の営業システムで、お客さまからの要望に応える
その他にも製造業では珍しい営業スタイルがあります。リーマンショック直後からテルミックでは、外回りの営業から、内勤営業と呼ばれる営業に大きく仕組みを変えました。内勤営業とは、広告などを見て来社した顧客に対し、オフィスにいながらメールや電話などで営業を行うスタイルのこと。
この強みについて生産管理グループの石井美玲子さんは、「スピーディーな対応が可能です。内勤営業なら常にオフィスにいるので、すぐに回答できます。また担当者が休みでもサーバーで状況を共有しているので即答できます」と話します。
内勤営業の推進後、取引先の数はリーマンショック時の約50倍になったといいます。また、新型コロナが感染拡大し始めたころ、その影響で2020年度の売り上げは約4割減少しましたが、DX化や内勤営業などをさらに推進したことで、翌年度の売上をV字回復させることができたといいます。
「ものづくり企業ではありますが、テルミックでは誰もが働きやすく、そして活躍できる会社を目指しています」と話す田中社長。社員を守りたいという思いから生まれたテルミックの様々な業務改革のように、時代の流れに合わせた柔軟な発想が、企業がこれからを生き抜くために、より一層求められています。 (取材・撮影:ビデオハウス/文:石川玲子 2022年8月取材)
株式会社テルミック
自動車部品をはじめ一般産業用機械や建設業界、アミューズメント業界などあらゆる分野の金属・樹脂加工を請け負う、刈谷市に本社を置く企業。
場所:愛知県刈谷市小垣江町永田47番地
電話:0566-28-7766
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番組名:特集「地域の今」
地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。「シリーズ コロナ後の地域を考える」では、この地域の人々の声から、アフターコロナを見据えたこの先の未来をどう生きるのか、そのヒントを探ります。
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