愛知県刈谷市にある愛知教育大学。長期にわたる新型コロナウイルスの影響で、教育の現場では留学生の受け入れや派遣など、打撃を受けてきました。今年はようやく留学を心待ちにしてきた学生たちが日本に入国できるようになり、留学生がキャンパスで学ぶことができるようになりました。
第7波の感染拡大が広がるなか、愛知教育大学で学ぶ、留学生のいまを取材しました。
ストップしていた留学生の受け入れ
愛知県刈谷市にある愛知教育大学では、2022年7月現在、約4,000人の学生が学んでいます。教員の育成はもちろん、学生の国際交流にも力を入れている大学です。
しかし、2019年からの新型コロナの蔓延により、海外からの留学、海外への留学が難しい状況になりました。2021年度、愛知教育大学に来ることができた留学生は一人もいませんでした。中国 江蘇省(こうそしょう)出身のク カイコウ(瞿 懐昊)さんも、その影響を受けた一人です。日本への渡航もままならず、母国の中国からリモート授業を受ける日々でした。
ようやく叶った来日の願い
原動力は恩師の存在
当時、クさんは次のように心境を語っていました。「日本に行けなくてがっかりしました。これまで用意したものが全て役に立たず無駄であったように思えました」
2022年3月。来日の願いが叶いましたが、それには多額の航空券代が必要でした。「渡航費用として40万円くらいかかりました。お金はかかったけれど、知識を身につけるほうが大切です」
他にも自主隔離のためのホテル宿泊費、およそ16万円も負担することに。そこまでして、日本で学びたかった理由は恩師の存在にありました。「東京の美術館で松本先生の作品を見て、一番すばらしいと感じました」
クさんが憧れた松本先生の指導
クさんが尊敬しているのが、愛知教育大学 創造科学系美術 特別教授の松本昭彦さん。松本さんが行う「キミ子方式」という絵の指導法は、絵が描けない子に、どこから描き始めたら物のなりたちを理解し、好きになりながら、楽しく上手く描けるかを教えるものです。 クさんは松本さんが行うキミ子方式を使った指導に感銘を受けています。松本さんはクさんに丁寧に指導を行っています。
クさんに将来の夢を聞いてみました。「美術教師になるのが夢です。世界中の子どもたちに美術の美しさを教えたいです」
外国人留学生を日本人学生がサポート
それぞれの夢を追いかける外国人留学生たち。キャンパス内の外国人向けの学生寮では、去年に比べて生活する人数が戻りつつあります。ここでは、留学生に日本語を学んでもらおうと、日本人学生が日本語の授業を行っています。
教えているのは、教育学部社会科専攻3年で国際交流会館チューターの井埜泰史さん。井埜さんは、こう言います。「ここは、日本語を使う中で疑問に思ったことを解決してもらう場です。たとえば『美味しい』と『うまい』の差のようなものですね。」
学内で英語や他国の価値観を学ぶ
愛知教育大学では他にも、日本人学生にも英語を聞き、自ら英語を話す機会をもってもらおうと、毎週月曜と火曜の午後に英語を話すイベントを実施。誰でも自由に参加でき、途中で加わることもできます。この日は留学生の中から、カンボジアのラニーさんとチュニジアのユセフさんが参加。留学が難しい状況になっても、日本の学生は学内で国際交流することができます。
参加した日本の学生は「社会科を専攻していますが、英語を通して他の国の価値観を知ることができるので、この交流会に来ています」と、参加理由を教えてくれました。
出口が見えない中
模索する国際交流の可能性
大学側も留学生たちをさらにサポートしようと模索を続けています。愛知教育大学副学長で国際交流センター長の小塚良孝教授が、このようなサポートを行う理由について教えてくれました。
「一人一人の学生が人生をかけて日本に来ようと、さまざまな負担を覚悟してきてくれている。大学として全力でサポートしたい」
2022年、留学生の受け入れを再開し、学内での国際交流にも力を入れる愛知教育大学。出口が見えないなかでも国際交流の可能性を探っています。(取材・撮影:映像舎/文:石川玲子/2022年7月取材)
愛知教育大学
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