愛知県安城市で情報紙を発行したり、ふれあい交流事業を行ったりする、住民のボランティアグループがあります。それが榎前町の「ふれあいえのき」のみなさんです。コロナ禍で多少のセーブはあっても、日々活発な活動が行われています。
今回は町内会ではない独自の組織が地域で行う、情報発信活動とふれあい交流の様子から、コロナ禍で薄れた住民同士の絆について考える手がかりを探ります。
日々活発な活動を行う「ふれあいえのき」
1999年に町内会ではない独自の組織として発足した「ふれあいえのき」。安城市榎前町に暮らす住民による住民のためのボランティアグループとして活動しています。
「住んで良かった」のまちづくりを目指し、町内の福祉委員会・自主防災会・町内各種団体と連携し、ふれあいサロンや町内情報紙の発行を行っています。
ふれあいえのき代表の沓名典昭さんに活動について伺うと、「普段は仲間内でのおしゃべりを楽しみながら活動しています。楽しむことが大切ですね」と、話してくれました。
さまざまなサロン活動
そんな「ふれあいえのき」では、様々なサロン活動を行っています。毎週月曜日の朝には小物作りやおしゃべりを楽しみながら住民同士が交流する「ひまわりサロン」、水曜には高齢者に健康体操などを指導する「水曜サロン」、さらに地元保育園の園児と高齢者が交流する「せせらぎサロン」などが開かれています。
また、こうしたサロン活動をとおして、毎年町内の新1年生に製作した交通安全マスコットをプレゼントするなど地域のための活動を行っているのです。
地域情報紙「えのき」がつなぐ人の縁
そして、もう一つの主な活動が、設立当初から行う町内全戸配布の情報紙の発行です。毎月発行される情報紙には、行事の様子や転居者の紹介、住民の俳句、さらに落とし物のお知らせまで、20ページ以上にわたり町内の様々な情報が掲載されています。
記事を主に書いているのは間瀬トシ子さんと、高松明子さんです。発行当初から記事を書いている間瀬さんは「毎月楽しみにしてくれている人がいます。だからコロナ禍で町内行事が中止になった時も、いま町民が求めている情報を発信してきました。情報紙を配達しているのも町民のみなさんなので、榎前町のために今後も頑張ろうと思います」と話してくれました。
この日は町内の子ども会がサツマイモの植え付けと田植えを体験する姿を取材していました。2017年から取材班に加わった高松明子さんに参加のきっかけを伺うと、「写真を撮るのが好きだったので。自信はなかったのですが、地域の助けになるならと思って引き受けました」と話してくれました。
また取材をしてきて良かった点について、「あるおばあさんを取材したところ、その情報紙を読んだ昔の友達が訪ねてきてくれたそうです。おばあさんはもう亡くなられてしまったのですが、ご家族から、記事を見たおばあさんがとても喜んでいたと聞き、やりがいを感じました」と教えてくれました。
えのきの活動は地域との繋がりをつくる
「ふれあいえのき」最新号の発行日には、毎月安城市民活動センターに代表の沓名さんや間瀬さんなどメンバーが集まり印刷作業を行います。町内全戸配布ということで発行部数も多く、作業は見た目以上に体力勝負です。そして印刷が終わると配達ボランティアのメンバーに渡され、各家庭に届きます。
新たに配達ボランティアに加わった尾崎公敏さんは、参加した経緯について「こちらに引っ越してきた直後にコロナが蔓延し外に出られなくなってしまって...。そんな時に配達員募集を知り、地域と繋がる良い機会だと思って志願しました」と語ってくれました。「えのき」の活動は地域の繋がりも作っているのです。
人々の繋がりが活動の原動力
「えのき」と連携する榎前町内会では、情報紙の発行費用を一部補助するなどの協力をしています。加藤研一会長は、「町内会の機関紙の役割をしているものは他にもありますが、やはり『えのき』はボリュームも多く、様子が伝わります」と、町内にこうした組織があることに心強さを感じています。
発足から20年以上が経ち、最近手伝いを頼むと気前よく手伝ってくれる人が増えました。楽しみながら活動することで、新しい活動へと広げていきたいと思います」と原動力について語る沓名代表。「ふれあいえのき」では、人々の繋がりが活動の原動力になっているようです。(取材・撮影:オフィスげんぞう/文:石川玲子/2022年6月取材)
愛知県安城市榎前町 ふれあいえのき
安城市榎前町で活動するボランティアグループ。住民が「榎前に住んでよかった!」と感じ、安心してこの地で最期を迎えられる。そんな地域を目指して活動している。
ふれあいえのき ホームページ
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