流行り廃りの早いファッション業界。流行が変わるとそれまで使っていた糸や布は不要なものとなってしまいます。そのような状況に対し、愛知県西尾市一色町のアパレル会社、渦japanは、環境に対して持続可能なお店でありたいと、2年ほど前から取引先の倉庫で眠る糸や生地を新たな商品へ生まれ変わらせる取り組みを行っています。
SDGs17のゴールのうち12番の「つくる責任 つかう責任」につながるアパレル会社の取り組みをご紹介します。
三河に根差したアパレル会社「渦japan」
渦japanが目指すのは、袖を通すたびに体に馴染み、着ることでワクワクして毎日が楽しくなるようなカジュアルウェアづくり。代表の青木さんが2016年に夫婦で立ち上げた会社で「UZUiRO(ウズイロ)」というブランドを展開しています。
渦japanがある愛知県の三河地方は、古くから繊維産業が盛んな街。以前に比べ工場の数は減ったものの、今も高い技術が受け継がれています。妻の青木愛さんは「布はどこからでも仕入れることは可能なのですけど、三河を大事にしたいなと思いました。できるだけ愛知県内で完結させて、ここじゃないとできないことをしたい」と、自社のコンセプトを語ります。
地元のつながりから環境に対して
持続可能なお店を目指しはじめた
渦japanでは、三河木綿など地域の工場で作られた生地を使うため頻繁に工場を訪れています。近隣にあるため頻繁に工場を訪れ、実際に見て触れて生地を選んでいます。工場を訪れているうちに、青木さんはあることに気が付きました。
「生地が余っちゃったけど使う?とか、隅のほうが傷になっちゃったけど使える?などの打診を受けることがありました。まだ使えるのに買い手がないものをアイデアで商品に変えられたらおもしろいなと思ったのが、この取り組みを始めたきっかけです」
不用品となった倉庫で眠るもったいない生地や糸。それらがきっかけとなり、環境に対しても持続可能なお店でありたいと取り組みを行うようになったのです。
不用品にデザインやアイデアで
新たな価値をもたらす
他社と連携して行うプロジェクトは「MOTTAiiNA(モッタイイナ)」という名前で、2020年からスタートしました。
協力してくれたのが、靴下や手袋などを製造している西尾市吉良町の石川メリヤス。代表取締役 大宮裕美さんに倉庫の糸について聞いてみました。
「製品を作るためにちょっと多めに仕入れるため少しずつ余ってしまいます。またサンプル用に仕入れたものの本生産に至らなかった場合には、サンプル用の糸が結構残ってしまいます。もったいないので、いつか何かに使えないかなと思って保管しています」
この企画によって作られた製品の一つが靴下です。たくさん余っていたグレーの糸と、少しだけ余っていたカラーの糸を組み合わせ、おしゃれな靴下が完成しました。
「アップサイクル」で新たな価値を
こうした捨てられるはずだった不用品に、デザインやアイデアで新たな価値をもたらすことを「アップサイクル」と言います。しかし、残っている糸や布の量もマチマチであるため、その量を考慮しながら色の組み合わせを考えるのは難しく、途中で糸がなくなれば、違うデザインを考え直す必要もあります。つまり「アップサイクル」は通常よりも時間も手間もかかるのです。
しかし青木さんは「倉庫の中に眠ったままだと単純にもったいない。そういうものを活かせるかどうかは、アイデアを出すこととやると決めることです」と言い切ります。
地元の企業と連携して作り上げる
メイドイン西尾の商品
渦japanの商品は、自社工場でヤマモモやあかねなどを使い、草木染を施しています。その染料にも「モッタイイナ」を取り入れています。シャツをグレーに染めるために使うのは、西尾市の特産品である抹茶の原料の碾茶。明治初期から150年続く老舗の製茶場「赤堀製茶場」から商品にならないものを仕入れています。
代表取締役の赤堀正光さんに染料の碾茶について聞いてみました。
「これは工場でお茶を生産している際に、機械のつなぎ目などからこぼれ落ちてしまうような茶葉です。茶園で肥料としても使えるのですが、染料というのは新しい使い方ですね」
地元の企業と連携して作り上げるメイドイン西尾の商品は、西尾の産業や農作物のPRにもつながっています。
ちょっとした一手間が、
持続可能な社会を作る上で何より大切
さらに、渦japanでは通常の製品作りで出た端切れも無駄にせず、詰め合わせて販売しています。丁寧に作られたウズイロの布は、手芸をしている人にすれば宝物のような商品なのです。アイデアとデザインで、不要になった生地や糸などを、価値あるものとして生まれ変わらせる渦japan。
青木さんの「ちょっとしたことをつなげる流れを作るのが大事。ちっちゃい気持ちを共有したい。」という言葉のとおり、毎日大量に出るごみや廃棄物から見ればほんの小さなことかもしれませんが、行動をしようと思うその気持ちと踏み出す1歩が、持続可能な社会を作る上で大切なことなのかもしれません。(取材・撮影:映像舎/文:石川玲子/2022年5月取材)
渦japan
袖を通すたびに体に馴染み、着ることでワクワクして毎日が楽しくなるカジュアルウェアづくりを目指す。愛知県三河エリアから地元生産者と力を合わせ、1着1着大切に製作。
住所:西尾市一色町松木島榎31
電話:0563-75-1208
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