愛知県まん延防止等重点措置が解除されてから1か月あまりの2022年5月。お店も感染に気をつけながら通常の営業を行っていて、街には少しずつ賑わいが戻ってきています。
愛知県刈谷市にある刈谷駅前商店街は、いまどのような変化をしているのか?飲食店のいまを取材しました。
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店を開けられる喜びを実感
まん延防止等重点措置解除後の2022年5月時点の刈谷駅前の現状について刈谷駅前商店街振興組合の沢田佳代子理事長は、つぎのように語ります。
「商店街の人は働くのが好きなんですよね。ですから、店が営業できて働けるのは本当に楽しいねって言っています。街は、人がいて熱気があって、はじめて商店街になるんです。人が来るお店があるから街が賑わうと思います。」
2020年4月7日に日本で初めて緊急事態宣言が発令されてから2年あまり。この間、街から明かりが消え、お店は休業や時短営業を余儀なくされる苦しい時期が続きました。特に飲食店の倒産件数は、他業種を圧倒する数に上り、助成金だけでは立ち行かなくなるお店も多くありました。
このときの状況を沢田理事長は「街を歩く人も本当に少なくなって、街が死んでいる感じでした」と表現します。
そして2年が経ち、現在飲食店は通常通りの営業ができるようになりました。取材した4月下旬、商店街は人通りが増え、2021年2月と比較すると街に活気が戻ってきている様子が見てとれました。
この日、沢田さんが営む「あお喜」では、サラリーマン3人組がお酒を酌み交わしていました。「2年くらい一緒に仕事をしているのですが、こうやって3人で飲みに来るのは、これでまだ2回目です。街の様子も少し変わってきましたね」と、久しぶりのお酒の席を楽しんでいました。
自動車関連企業が多く集まる刈谷駅周辺。駅前商店街は、これまでこうした企業に勤めるサラリーマンの利用によって支えられてきたのです。
苦しいときこそ、みんなで励まし合う
一方でまだまだ苦しい現状もあります。コロナ前は常にお客で賑わっていた「居酒屋ひふみ」では、この1ヶ月あまり客足が戻ってきてはいるものの、いまだ歓送迎会などの宴会の予約はゼロの状況が続いています。
それでも現状について、居酒屋ひふみの鈴木博道さんは、「コロナが流行り始めたころは営業できない時期もあったので。それに比べて今は、お店の営業もできるので楽しいです。お酒や料理だけでなく、それ以上に元気をお客さんに提供したいですね」と、コロナ禍でも来店してくれるお客への感謝の気持ちを語ってくれました。
そんな鈴木さんには、コロナ禍で心の支えとなっていたことがあります。それは、毎朝の仕入れの時間です。毎朝、仕入れに訪れるのは同じ商店街にある青果店の「ニワ商店」。ここで店主の丹羽陽三さんと話すひとときが鈴木さんにとっても、丹羽さんにとっても心の支えだったと話します。
「先の見えない不安に飲み込まれそうになりますが、商店街の仲間がいることが心の支えになり、ここまでやってこられました」と丹羽さん。
鈴木さんも「いままでは商店街全体を考えることがあまりなかったのですが、コロナをきっかけに周りと励まし合ってやっていくしかないなと思うようになりました」と、変化を語ります。
この2年半余りを乗り越えられたのも、苦しい時に励まし合い、時には愚痴をこぼしながら支えあってきた商店街で一緒に働く仲間がいたからだということです。
街が変わっていくために
新型コロナにより、社会の仕組みや常識が変わり、私たちの考え方も変わるなかで、刈谷駅前商店街振興組合では、街も変わらなければと様々な形で動きだしています。その内の一つが、新年度の理事に若い世代を迎えることです。新たな理事には刈谷駅周辺で3つのお店を経営する30代の清水優樹さんが選ばれました。
「街だけでなく、刈谷市全体を盛り上げたいと思っているので、キッチンカーなどのイベントをどんどんやって若者が楽しめる街にしたいです」と抱負を語る清水さん。若い世代の代表として周囲も期待を寄せます。
さらに刈谷駅前商店街振興組合では、2年間中止していた1夜限定の飲み歩きイベント「カリアンナイト」の復活も決めました。イベント復活について沢田理事長は、「みなさんも待ち望んでいたイベントです。まだまだブレーキを踏みつつアクセルを踏むような状況ですが、それでも、こういうイベントができるようになっただけでありがたいです」と話します。
長引くコロナ禍で、いまだ厳しい状況が続く刈谷駅前商店街。それでも「自分たちが変わらなければ街は変わらない。」そんな思いを胸に、コロナ後の未来を見据え、歩み続けています。(取材・撮影:映像舎/文:石川玲子/2022年4月~5月取材)
あお喜
居酒屋ひふみ
ニワ商店
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