愛知県刈谷市で車いす支援事業や障がい児の教育支援事業などを行うNPO法人アジア車いす交流センター、通称「WAFCA(ワフカ)」。ここでは、これまで6,590台以上の車いすを東南アジアの国々に寄贈し、刈谷市周辺の人たちの車いすの修理などを行ってきました。
今回は、アジアに暮らす障がい児の自立のために支援を行うWAFCAを取材しました。
車いすで途上国の障がい児の自立を支援
世界の人口の15%、約10億人は何らかの障がいを抱えており、その80%にあたる約8億人が開発途上国に暮らしているといわれている現在。途上国の多くの障がい者は、教育や就職などで苦しい立場に置かれ、社会への十分な参加の機会が保障されず、貧困に繋がっています。
こうした現状のなか、車いすで障がい児の支援を行っているのが、刈谷市司町に事務局を置くNPO法人アジア車いす交流センター、通称「WAFCA」です。1999年に自動車部品メーカーデンソーの支援で設立され、「車いす支援事業」や「障がい児教育支援事業」「バリアフリー化支援事業」などを行ってきました。
みんなが自分らしく生きることができる社会へ
WAFCA事務局長の熊澤友紀子さんに、支援事業について伺うと、「車いすサービスの提供支援がメインの活動です。日本で支援金を集め、それを現地に送金。現地で車いすを調達して、ソーシャルワーカーや医師などと協力し、子どもの身体の状況などを見ながら、その子に合った車いすと支援を提供できるようにしています」と教えてくれました。
収入のほとんどは会員の会費とデンソーやその他の企業からの寄付で成り立っているというWAFCA。それでも、「みんなが自分らしく生きることができる社会」の実現を目指し、これまで累計6,590台以上の車いすを東南アジアの国々に寄贈してきました。
車いす支援事業の仕組み
WAFCAの車いす支援事業の特徴は、基本的に使用する国で調達できる車いすを使っている点です。これにより輸送コストを抑え、品質の良いものを豊富な種類で寄贈できます。また現地では、個々の身体のサイズや障がいの特徴に合わせたフィッティング、車いすを届けたあとのフォローアップ、さらには、障がい児の生活や通学のニーズに沿った支援とセットで提供することが可能となっています。
障がい児の本当の意味での「移動の自由」「生活の質の向上」を目指すうえで、車いすを寄贈するだけでなく、それに伴うサービス・支援をいかに充実させるかが大切だということです。
WAFCAの車いす病院
WAFCAの活動資金のほとんどは会費や寄付などで成り立っていますが、国内で車いすの修理、不要となった車いすの回収、中古車いすの販売なども行うことで、その収益を途上国の障がい児支援のために使っています。
その一つが事務所横にある車いす病院です。現在、車いす病院では23人のボランティアが活躍していて、高齢者施設などで使われる車椅子を有償で修理したり、不要となった車いすの改修などを行ったりしています。
車いすの修理に携わる人たちの想い
車いす病院の指揮を執っているのがボランティアリーダーの小田秀一さん。地元の企業デンソーのOBです。小田さんに車いす修理のやりがいについて伺うと、「車いすを動かせるようにすることで、使う人が笑顔になれます。さらにこの活動を通して、途上国の障がい児の自立支援にも繋がっているということも、やりがいを感じています。子どもたちの笑顔が一番ですね」と話してくれました。
共に活動するメンバーたちも、世代は違っても同じ想いで修理に携わっています。WAFCAの活動は携わる人たちの想いによっても支えられているのです。
さらにこの車いす病院は、車いすへの理解を広げることにも繋がっています。 メンバーの中でひときわ若い現役高校生の佐々木悠人さんはボランティアに参加した理由について、「親がデンソーに勤めていて、このボランティアを教えてもらいました。車いすの修理方法などを知ることができて楽しいです。また参加するまではWAFCAの取り組みについて知りませんでしたが、いまは国際協力やSDGsに少しでも関われているという実感があります」と話します。
佐々木さんのように私たち一人ひとりが車いすへの理解を深めることが、WAFCAの活動を広げ、そして途上国の車いすの利用者を救うことにも繋がっていきます。(取材・撮影:映像舎/文:石川玲子 2022年4月取材)
NPO法人アジア車いす交流センター「WAFCA」
1999年に自動車部品メーカー株式会社デンソーの創立50周年を記念する社会貢献事業の一環として、刈谷市に設立。車いすや教育の支援活動を通じて、アジアの障がい児を取り巻く社会的課題に取り組む。
住所:愛知県刈谷市司町1丁目2番地 ふれあいプラザゆうきそう内
電話:0566-23-5822
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