コロナ禍の影響もあり減産を余儀なくされている製造業。企業は変革を迫られるなか、そんな企業の後押しをしている会社が愛知県安城市にあります。AMN(エー・エム・エヌ)は、モノづくり企業とデザイナーをマッチングさせることで、消費者向け商品の開発をサポート。企業は、自社の強みを活かして商品開発し、クラウドファンディングで販売するという挑戦をしています。
今回は、コロナ禍のモノづくり企業の今を取材しました。
新しいモノづくりの形に挑戦
AMNは、親会社である愛知県安城市に本社を置く金属熱処理メーカー「メタルヒート」の中にあります。金属熱処理メーカーがなぜ、商品開発をサポートする会社を立ち上げたのでしょうか。
AMNの原渉代表取締役社長に話を聞くと、「もともと企業間連携の業務をやっていましたが、企業間連携だけでなく、垣根なく広がる"ものづくりネットワーク"を作るために立ち上げたのが目的です。これはコロナ禍の新しいモノづくりの形への挑戦です」と話してくれました。
モノづくり企業×デザイナー
そんな目的を持ったAMNでは、東海地方のモノづくり企業とデザイナーをマッチングさせて、新商品の開発をサポートしています。
そのために「AICHI DESIGN VISION」(アイチ・デザイン・ビジョン)という新商品開発プロジェクトを2020年からスタートさせました。コロナ禍の暮らしを楽しく豊かにするモノづくりをコンセプトに、愛知県を中心としたモノづくり企業と、その企業の技術に惹かれ想いに共感したデザイナーをつなぎ、新商品開発を行っています。資金はクラウドファンディングで募り、商品開発後は独自のECサイトで販売するという仕組みです。
デザイナーの発想で、新たなモノを生み出す
漁業で使う網を製造販売している西尾市の木下製網。この日、AMNのメンバーがデザイナーを連れて本社を訪れていました。
実際にどのように企業とデザイナーをマッチングさせ商品開発を行っているか、AMN管理本部の原田晋平さんに伺うと、「デザイナーに工場まで足を運んでもらい、実際に企業の雰囲気や技術を肌で感じてもらう機会を作っています。その後、会社の強みを把握し、どのようなものを作っていくかを4か月程かけて考え、試作品を作ったのち完成させるスケジュールです」と教えてくれました。この時に、デザイナーがどんなインスピレーションを得られるかが鍵となるのだそう。
実際に木下製網の工場見学に参加したデザイナーらは、今回の打ち合わせを経て「どんな手順で、どんな雰囲気で作っているかを知ることができた」、「漁網というプロダクトになじみがなかったので、初心者の気分で素材を開拓しデザイナーの視点で何ができるか考えるのは、チャレンジングで楽しみです」と、これからの新商品開発への期待感を話してくれました。 ?
自動車部品メーカーが小型燻製機を開発
実際にアイチ・デザイン・ビジョンに参加し、デザイナーとともに新商品を開発した企業にも話を伺いました。
自動車部品の試作などを行う安城市のタキオンでは、自社技術を活用した小型燻製器を開発。この開発について杉山恵一代表取締役は、「厳しい経営環境の中で、今のままでは先はないという危機感から、プロジェクトに参加しました。デザイナーと一緒に開発した燻製器の資金を募ったクラウドファンディングでは既に目標金額を達成し、自社の商品が世の中に出てお客さんに期待されているという経験をすることができた。そして社内の雰囲気も明るくなりました」と話します。
苦労を今後の製品づくりに活かす
また、碧南市に本社を置く自動車部品メーカーの旭鉄工では、プロジェクトに参加し、ホットサンドメーカーなど同時に4つの商品開発を行っています。デザイナーと手を組むことで、一般の消費者の方に喜んでもらえる新商品開発をできたということに手ごたえを感じているといいます。
今後について経営企画部に生田厚史次長は、「自動車部品も今後の見通しが非常に厳しい状況です。既存の部品だけで生き残ろうとするのは難しいので、B to C商品で新しい技術の実績を作ってB to Bに活かしたいと考えています」と語ってくれました。
コロナ禍を越えてゆくモノづくり企業
コロナ禍で社会や経済が目まぐるしく変化するなか、企業も生き残りをかけて変化することが求められています。
アイチ・デザイン・ビジョンが提案するサービス、モノづくり企業の消費者向け商品開発は、需要の落ち込みや厳しい状況が続く製造業において一つの選択肢になるのかもしれません。(取材・撮影:モーション・ビジュアル・ジャパン/文:石川玲子/2022年3月取材)
株式会社AMN
木下製網株式会社
株式会社タキオン
場所:愛知県安城市野寺町宝殿26-1
電話:0566-99-4368
タキオンでは、コロナ禍をうけ「握らないドアノブ」の開発も。
シリーズ コロナ禍をこの地域で生きるVol.1「安城ビジネスコンシェルジュが目指す企業支援」
旭鉄工株式会社
場所:愛知県碧南市中山町7-26
電話:0566-41-2350
年間1億円以上の労務費削減を達成。「旭鉄工」のコロナ禍に負けないIoT革命とは?
シリーズ コロナ禍をこの地域で生きるVol.28「町工場IoT革命!旭鉄工(碧南市)がコロナ禍を越えて目指すもの」
「シリーズ・コロナ禍をこの地域で生きる」は、キャッチの番組でも放送中!
番組名:特集「地域の今」
地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。「シリーズ コロナ禍をこの地域で生きる」では、医療・教育・企業などに従事するこの地域の人々の声から、コロナ禍の時代をどう生きるのか、そのヒントを探ります。