2021年4月、コロナ禍で需要が低迷する地元農家の野菜の販路拡大を目的に立ち上がった通販サイト「おいしいあんじょう」。ホームページから注文すると、地元野菜が自宅などに届くという、コロナ禍の市民の買い物支援にもつながる取り組みです。
運用開始から10か月、愛知県安城市で行われているこの取り組みの可能性や課題に迫ります。
地元野菜の販路拡大が出発点
地元JA や商工会議所、愛知県、安城市が連携して、市内の特産品のPRを行う安城市農畜産物特産品協議会。2021年4月、コロナ禍で需要が低迷する地元野菜の販路拡大を目的に、通販サイトを立ち上げました。
「おいしいあんじょう」と名付けられたこのサイトは、安城市産を含む「国産野菜セット」と、市内で栽培された「有機野菜セット」などを取り扱っています。市内在住もしくは在勤の人なら誰でも利用可能で、ネットから注文すると自宅まで野菜を届けてくれます。隔週で届くお得な定期便と単発注文があり、配送料は代金に含まれ、さらに置き配にも対応しています。
地元野菜を市民に届けるために
「おいしいあんじょう」を運営する安城市農務課の真茅英美さんは、2021年4月のサービス立ち上げ時からこの事業を担当しています。真茅さんは、このサイトの狙いについて、「野菜のPRが対面でできなくなったことから地元の消費が落ち込み、何か新しいことができないかと思いはじめました。宅配で地元のおいしい農産物を食べてもらいたいと思っています」と話します。
実際にサイトを利用している人にも話を伺うと、「普段自分では買わない野菜も届けてもらえる」、「地元農家の応援にも繋がる」と、それぞれメリットを感じているようです。
目利きが選んだ旬の野菜や果物が魅力
さらに「おいしいあんじょう」の魅力は、販売されている野菜や果物にもあります。サイトで販売されている商品の仕入れを行っている、碧南市の青果卸売業者の八百信では、毎朝早朝から碧南や西尾の市場に出向き、旬の野菜を購入しています。
以前は青果店を営んでいたという代表取締役の荻原拓児さんは、「今一番食べてもらいたい旬の野菜や果物を中心に選んでいます。価格的にもほとんど儲けがない状態で出荷しているのでお値打ちですよ」と話してくれました。
課題は利用者数と利用してくれる層
2021年4月のスタート以来、月間400件の受注を目標にサービスを展開してきた「おいしいあんじょう」。当初は月間 175 件とまずまずの滑り出しでしたが、年末年始を控え、2021年12 月は 111 件にまで落ち込みました。
現状について八百信の荻原さんは、「1回の注文数を30~50件に引き上げたいですね。そのためにサイトを知ってもらうためのイベントなどを行い、利用者を増やしたいです」と課題を感じています。また、サイトを運営する真茅さんは、「もっと高齢の方が利用しやすいようなサイトにすることが必要だと感じています」と、話してくれました。
地方が抱える課題解決を目指し
サイトの開始から約10か月が経ついま、その魅力について、あらためて見直す必要に迫られている、「おいしいあんじょう」。今後の展開について真茅さんは「商品のラインナップがまだ少ないので、もっと増やしていきたいです。また、利用者の状況、たとえば家族の人数に合わせたセットを考えたりするのも必要だと思っています。ドライブスルーの販売会を開催し、高齢の方を含めた多くの方に利用してもらえるサービスにしたいですね」と語ってくれました。
地産地消を目指し、個別配送で商品を消費者に届ける「おいしいあんじょう」。その取り組みは地方が抱えるさまざまな課題を解決する新たな一手となるかもしれません。(取材・撮影:オフィスげんぞう/文:石川玲子/2022年2月取材)
おいしいあんじょう
プロが厳選した地元野菜をネットで気軽に購入できるサービス。隔週で決まった商品を宅配する定期便もあり。
八百信
フレッシュな地産品に こだわりのブランド野菜や果物まで。青果を芯まで愛する社員とスタッフが、三河エリアのお客様により良い野菜と果物をご提案。
場所:愛知県碧南市港本町1-15(衣浦総合卸売市場内)
電話:0566-43-3456
「シリーズ・コロナ禍をこの地域で生きる」は、キャッチの番組でも放送中!
番組名:特集「地域の今」
地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。「シリーズ コロナ禍をこの地域で生きる」では、医療・教育・企業などに従事するこの地域の人々の声から、コロナ禍の時代をどう生きるのか、そのヒントを探ります。
詳しくは、KATCH番組紹介ページ・特集「地域の今」をご覧ください。