全国にその名を知られる愛知県安城市の名物「北京飯」。中国料理の北京本店の看板メニューです。白米の上に特製ダレを合わせた半熟卵と豚肉の唐揚げを乗せた一品で、トロトロの卵に甘辛いタレが絡み、サクサクの豚の唐揚げと見事にマッチした人気商品です。
今回は、北京飯を武器に、コロナ禍を地域全体で乗り切ろうと奮闘する、北京本店の新たな取り組みに注目しました。
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甘辛の醤油味、半熟でふわトロの卵が決め手
北京本店は2022年で創業62年。創業から2年後に北京飯は誕生したということで、約60年前から提供されている北京本店の看板メニューです。味の秘訣について、杉浦充俊代表は、「北京飯の味は卵がキモで、甘辛の醤油味です。また、焼くときに半熟にふわトロに焼くっていうのが北京飯の一番大事なところだと思っています」と話してくれました。
また、北京飯といえば「安城名物」と書かれたどんぶりも特徴。これについて杉浦さんは、「北京飯も北京本店も安城で誕生して以来、地域の人にかわいがってもらっています。安城名物として、安城にみんなが来てもらうきっかけにもなればいいなと考えています」と話してくれました。
もっと多くの人に「北京飯」を
そんな北京本店では2021年、北京飯の缶詰「北京飯缶」を販売開始しました。さらに同年12月には安城市に、防災備蓄品として北京飯缶100個を寄贈。
お店の味を楽しめるようにと、約1年半かけて開発されたという「北京飯缶」は、固くなりやすい白米の代わりに玄米を使用し、豚の唐揚げも缶詰用にサイズや形など工夫してあります。「缶詰にすることで、世界でも販売できるようになる可能性があります。また、コロナ禍で外食がむずかしい日々の中では、自宅で気軽に食べてもらえるなど、色々な使い方がある、大変魅力的な商品です」と杉浦さんは話してくれました。
地元の仲間の協力で「冷凍北京飯」が誕生
また、北京飯の缶詰以外にも新しい商品があります。安城市内にある八百芳商店で製造、北京本店で販売している「冷凍北京飯」は、独自の方法で急速冷凍し、食感を保つことができるといいます。
開発した八百芳商店四代目の神谷豊明さんに話をうかがうと、「いまは1週間で20個しか作れないので、北京本店さんの予約分で終わってしまう状態です」と人気のようです。
神谷さんは北京本店の杉浦さんについて「地元を盛り上げるために北京飯を作る許可をもらっています。だから杉浦さんの周りには、コロナ禍で大変な時期に、みんなで力を合わせてやっていこうという地元の仲間が集まっています」と語ってくれました。
たこ焼き屋でも北京飯が楽しめる
その他にも安城市内には北京飯を食べられるお店があります。たこやき屋「TAKOYAまんぷく」もそのひとつです。
たこ焼きをメインにしながら、2021年から北京飯の提供も始めましたTAKOYAまんぷくの築山恵太さんに、北京飯をはじめたきっかけについて聞くと、「北京飯は昔から知っていましたが、本格的にやりたいっていう気持ちになったのは、やっぱりコロナ禍がきっかけです。北京本店さんと一緒にプロバスケットボールチーム『シーホース三河』のスポンサーをしており、その試合会場でたこ焼きの出店をしています。みなさんが喜んでくれるのであれば、僕が修行して試合会場の外で販売できないかな、と杉浦さんにお話ししたのがきっかけです」と話します。
色んな人を巻き込み、楽しみながら広げていく
様々なアイデアで独自の取り組みを打ち出す北京本店。多方面にわたる「北京飯」を活用した取り組みが行えるのも、これまで杉浦さんが大切にしてきた人とのつながりから生まれているようです。
料理研究家の長田絢さんは北京飯について、「全国的にみると北京飯を知らない人も多いので、まだまだ広がる可能性は高いメニューです。杉浦さんの尊敬できるところは、新しいことにチャレンジしていく『ワクワク』を楽しみながら、色んな人を巻き込んでいくところ。そして、みんなでウィンウィンにしていくところだと思います。これからも色々な取り組みをご一緒したいと思っています」と話してくれました。
地元を盛り上げるために
北京飯をきっかけに地域を盛り上げていきたいと話す杉浦さん。今後も新しい展開を見据えています。
「普段、調理場から北京飯食べているお客さんが笑顔になってくれている姿を見ると嬉しいです。つながりのある仲間たちも含め、僕の周りの人たちには、みんなに笑っていて欲しいなと思っています。そのためにも何がやれるかというと、やはり僕がやれるのは北京飯なので。北京飯を通して最終的に安城が盛り上がれば一番いい形なのかなと思います」と、最後に杉浦さんは北京飯に込めた思いを語ってくれました。(取材・撮影:モーション・ビジュアル・ジャパン/文:石川玲子/2022年1月取材)
北京本店
八百芳商店
場所:愛知県安城市和泉町上之切108-1
「八百芳商店」コロナ禍の取り組みについてはこちら
Vol.38「地域のニーズに合わせ業態転換!八百芳商店(安城市)の挑戦」シリーズ コロナ禍をこの地域で生きる
TAKOYAまんぷく
場所:愛知県安城市横山町下毛賀知140
「シリーズ・コロナ禍をこの地域で生きる」は、キャッチの番組でも放送中!
番組名:特集「地域の今」
地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。「シリーズ コロナ禍をこの地域で生きる」では、医療・教育・企業などに従事するこの地域の人々の声から、コロナ禍の時代をどう生きるのか、そのヒントを探ります。
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