少子高齢化による将来的な労働力人口不足が懸念され、日本経済が活性化するためには、女性活躍の推進が不可欠とされている昨今。いま注目を集めているのが、愛知県安城市に本社を置く株式会社エーピーシィです。従業員の8割が女性で、男女ともに働きやすく活躍できるような職場環境づくりに取り組んでいます。今回は、女性活躍推進の優良企業に選ばれるエーピーシィの取り組みに迫ります。
国内の女性活躍推進の現状
世界経済フォーラム 2021年3月公表
2021年に世界経済フォーラムが公表した「ジェンダー・ギャップ指数」では、経済・教育・健康・政治の4分野で各国の男女格差を調べたところ、日本は156か国中120位と、過去最低を記録。 日本における女性の活躍推進は、まだまだ世界レベルに追いついていない現状があります。
そんななか2022年4月からは女性活躍推進法が改正され、これにより労働者が101人以上300人以下の企業も、育児と仕事の両立支援に焦点を当てた制度作りが義務化されるようになります。そして、制度だけでなく、各企業が育児・介護と仕事の両立を可能とする多様な働き方への対応をどのようにしていくかが、いま求められています。
従業員の約8割が女性のエーピーシィ
安城市赤松町に本社を置く株式会社エーピーシィは、車のフロントガラスなどに取り付ける自動車用プラスチック部品を製造する会社です。
一般的に製造業は長時間労働や不規則なシフト、肉体労働などのイメージが強く、女性の労働者が少ない傾向にありますが、ここエーピーシィでは従業員60人のうちおよそ8割が女性です。 女性が働きやすく活躍しやすい職場環境作りに取り組む、県の「あいち女性輝きカンパニー」と「あいち女性の活躍プロモーションリーダー」にも認定されています。
会社の競争力の源泉=女性従業員
元々、女性比率の高い職場だったという株式会社エーピーシィ。しかし安藤寛高社長が2015年に取締役に就任した当時は、人材を上手く活かせていない状況だったそうです。 安藤さんは、自社分析し「自社の競争力の源泉は女性従業員である」と認識したのをきっかけに、女性が働きやすい職場環境づくりに推進しました。
その際、目指した企業像について安藤社長は、「多様な意見を吸い上げて能力開発の機会や選択肢を増やす、多様な意志を組み合わせて組織能力を発揮する会社です」と教えてくれました。
始まりは「休みを取りやすい仕組み作り」
安藤さんはまず、女性が働き続けられ仕事と家庭を両立できるように、休みを取りやすい仕組み作りに着手しました。これまで有給や育休は、職場の同僚に遠慮したり、上司に許可を得る必要があったりと取りづらい現状がありました。そこで、指定の用紙に記入してポストに入れるだけで有給や早退の申請・取得ができるようにしたのです。
その結果、エーピーシィでは会社全体の有給取得率が90%を超えていて、政府が2025年までの目標として掲げている70%を大きく上回っています。
従業員からも「有給が取りやすくて、残業も個人の都合に合わせて融通を利かせてくれるところが働きやすいところ」という声がありました。
多能工化で急な欠勤にも従業員同士で対応
さらに家庭を持つ女性従業員も多いエーピーシィでは、子どもの体調不良などで当日の急な欠勤にも対応できるように、「多能工化」にも取り組んでいます。
「多能工は複数のスキルを持つ従業員で、普段とは違う場所にヘルプで入れる能力を持っています。多能工化は従業員同士でバックアップしながら支える仕組みです」と話す安藤社長。従業員は、「多能工化」を達成することで、お互いがお互いを支え、みんなが働きやすい職場環境を実現しています。
従業員が多能工化に意欲的に取り組む理由
そして「多能工化」を実現するために、資格取得に必要な研修や教材費、受験費用などは会社が負担をしています。資格取得をすることで賞与や給料アップにもつながるため、社員はモチベーションを上げてスキルを高めることができているといいます。
入社1年目の河村莉菜子さんは、他部署をサポートするためにフォークリフトの資格研修に応募し、資格取得を目指しています。「周りの人たちをサポートできるようになるチャンスだと思って挑戦しようと思いました」と語る河村さん。能力を活かせる職場だからこそ、スキルアップにも前向きになれるようです。
従業員による従業員のための社内改革
様々な取り組みで女性が活躍できる職場づくりを進めるエーピーシィ。こうした取り組みを従業員が一体となり積極的に取り組むことができる背景には、従業員の意見を積極的に取り入れ、社内改革を進めていることが挙げられます。
エーピーシィでは、SDGs推進に向けて定期的にワーキンググループの会議を開催していて、これまでこの会議を通して朝礼の廃止や誕生日休暇の実施などが決まったといいます。 ワーキンググループの参加者に話を聞くと、「こうやって私達の意見を聞き入れてくれる仕組みは、いいと思います」と、やりがいを感じているようです。
従業員があっての会社
安藤社長は今後の展望について、「他の会社にとって弊社がベンチマークになれば、日本全体としてSDGsが推進されるだろうと思っています。会社の市場価値というのは従業員の市場価値ですから、従業員が働き続け、市場価値を上げるのが重要です。従業員が働き続けられないと、会社も続けられません。つまり従業員がサスティナブルでなければ会社もサスティナブルにならないのです」と話します。
女性が働きやすい会社作りを進めるエーピーシィ。全国で女性の活躍推進が進められるいま、エーピーシィの取り組みが広がっていくことが不可欠かもしれません。(取材・撮影:映像舎 2021年12月取材)
株式会社エーピーシィ
安城市に本社を置く自動車用プラスチック製外装部品の製造会社。 2019年には愛知県から「あいち女性輝きカンパニー」優良企業に。 2020年には経済産業省から「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選定されている。
場所:愛知県安城市赤松町新屋敷264番地
電話:0566-74-3881
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