2030年に向けた世界の新たな道しるべSDGs。世界の発展を目指す17の目標は、組織や個人で誰もが取り入れることができ、いまその取り組みは各地域で広がっています。
そんななか、愛知県刈谷市に本社を置く引越一番は、引っ越しの時に不要になった家具や生活雑貨を引き取り、提携団体を通じてアジアのリサイクルショップで販売する取り組みを行っています。今回は、引っ越しの不用品で、途上国の子どもたちを支援する引っ越し業者の取り組みをご紹介します。
引越一番・本田社長が思い続けてきたこと
刈谷市今川町にある引越一番は、2003年に創業し、現在の従業員数は35人、トラック10台を所有する引っ越し業者です。
本田的士社長は、27歳で引っ越し業界に入り、34歳の時に独立。引越一番を立ち上げました。本田さんは会社を立ち上げてから常々思っていることがあるといいます。
「近年はウォークインクローゼットが主流になっていることもあり、家具などが不用になるのですが、なかには思い入れがあったり、まだ使えたりするのに、私たちが引き取り処分しなければならないのが、もったいないなと感じていました。」
厳しい引っ越し業界の現状
いま、引っ越し業界は厳しい状況にあります。現在の状況について本田社長は、「私が引っ越し業界に入ったのが18年前です。当時、引っ越しの市場は日本全国で8千億から1兆円といわれていました。しかし今は3千億~4千億といわれています。当時の3分の1です」と話します。
さらに新型コロナの蔓延により、引っ越し業界に追い打ちをかけ、引越一番でも売り上げが減少してしまいました。そこで本田さんが、経費削減のために目をつけたのが、年間1千万円ほどかかっていた不用品の処分でした。
不用品を活用した途上国支援
引越一番では、これまでほとんど処分されていた不用品の一部を、提携団体を通じてアジアのリサイクルショップで販売する取り組みを行っています。
「引っ越しを機に家財を整理する人から、まだ使える不用品を引き取り、豊明市にある『もったいないボランティアプロジェクト』という団体を通じて、発展途上国の恵まれない子どもたちに支援しています」と本田社長。処分費用が減るだけでなく、不用品で海外の子どもたちの支援ができるというところに非常に感銘を受けたといいます。
不用品を販売した収益で孤児院の子どもを支援
不用品を活用した途上国支援の仕組みは、まず引っ越しで出た不要品のうちまだ使えるものを、もったいないボランティアプロジェクトに寄付します。それらの不用品は、貿易会社を通じて海外で販売され、その収益でミャンマーの孤児院で暮らす子どもたちを支援しているのです。
豊明市にある「もったいないボランティアプロジェクト」の岩花紅実さんに引越一番との提携理由について伺うと、「日本人が使っていた高級な家具は、途上国ではとても需要があり高い値段で買い取ってもらえます。販売利益があがれば子どもたちを支援する金額も増えますので、非常にありがたいと感じました」と話してくれました。
途上国支援の取り組みがセールスポイントにもなる
実際にどのように不用品の活用をしているのか、引っ越しの様子にお邪魔しました。この日、引越一番のスタッフが運び出す荷物のなかに不用となった食器棚とソファーがありました。引き取れるかどうかの判断は、見積もりの時に行います。担当者が、スマホアプリを使って不用品の写真をもったいないボランティアプロジェクトに送ります。すると10分程で査定が行われ、結果がわかります。これで作業は完了とのこと。
営業部の浅井純正さんは、営業のセールスポイントにもなるこの取り組みに手応えを感じています。そしてそれ以上に、途上国の支援につながっていることが喜びになっていると話してくれました。
経費削減の取り組みが子どもたちの笑顔につながる
引越一番がこの取り組みを始め1年以上が経ち、2021年9月時点で依頼件数は45件、約560kgにのぼります。5kgのリサイクル品を輸出販売することで、平均およそ10円の寄付になるそうで、この金額は、ミャンマーの孤児院で暮らす子どもたちの食事1食分にあたるといいます。
引っ越しで出た不用品が、途上国の支援につながる引越一番の取り組み。コロナ禍の経費削減をきっかけに始まったこの活動は、持続可能な社会づくりをめざすSDGs、そして子どもたちの笑顔にもつながっています。(取材・撮影:映像舎/文:石川玲子 2021年10月取材)
引越一番
引越一番では、不用品を「もったいないボランティアプロジェクト」を通じて、国内・海外支援を行っています。不用品の引き取りは、引越しの見積もり時に相談受付しています。
住所:愛知県刈谷市今川町中矢戸9番地1
電話:0120-154-313
引越一番 公式Webサイト
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