昭和3年に国民の健康づくりを目的に誕生し、90年以上職場や学校など、さまざまな場所で愛され続けているラジオ体操。日本人なら誰しも、子どもの頃から慣れ親しんでいるラジオ体操が、自宅で過ごす時間が増え、体力の低下が心配されるいま、あらためて見直されています。
住民の健康づくりだけでなく、交流の場にもなっているという愛知県知立市の知立神社ラジオ体操同好会を取材しました。
知立市はラジオ体操が盛んな街
愛知県知立市はラジオ体操が盛んな街。市内には8団体ものラジオ体操同好会があり、毎朝6時半から、公園や神社の境内など、それぞれの場所でラジオ体操が行われています。そのうちの一つ、市内で最も歴史がある知立神社ラジオ体操同好会は、昭和20年ごろに数人のメンバーで始まり、その後同好会が作られました。
毎朝、知立神社には100人近くの人が集まります。地域の活動や外出の機会が減っている現在、同好会は健康づくりだけでなく、地域住民のコミュニケーションの場としても大きな役割を果たしています。
90年続く知立神社ラジオ体操同好会
知立神社ラジオ体操同好会の竹村和晃会長は、毎朝5時には知立神社を訪れ、ラジカセの準備、そして境内の掃除を行っています。掃除をするのは、場所を提供してくれる知立神社へのお礼のため、45年間続けている朝の日課です。
掃除が終わるころになると、地域の人たちが集まりはじめ、6時半になるとラジオ体操が始まります。密にならないように境内に広がり、元気よく体操を行います。知立神社ラジオ体操同好会では90年以上、元日を除く364日、毎朝ラジオ体操が行われてきました。
健康づくりの核になる
ラジオ体操が長年親しまれてきたのには理由があります。それは誰でも手軽にできること、そして多くの人がその効果を感じていることです。
ラジオ体操第1と第2は、どちらも13の運動で構成されています。それぞれ3分あまりで、両方行うと6分30秒ほど。腕を回したり、背中をそらしたりと、ラジオ体操を行うことで、全身の約400もの筋肉を動かせます。健康面だけでなく、ストレスの発散や自律神経を整える役割もあり、終わった後は清々しい気持ちになります。自宅で過ごす時間が増え、体力の低下が心配されるいま、手軽にできる健康づくりとしてラジオ体操はあらためて見直されているのです。
ラジオ体操は友達づくりの場所
知立神社ラジオ体操同好会で誰よりも大きく身体を動かしているのは、同好会で最高齢の中野茂さん、91歳。仕事を定年退職してから30年近く毎日参加しているといいます。中野さんにラジオ体操に参加する理由を聞くと、「地元の人間ではない上に、定年退職するまでは会社人間だったので、友達がいませんでした。でもラジオ体操に参加すると友達ができるし、健康にもよいのではじめました」と話してくれました。
新型コロナに感染しないよう外出を控えている中野さんにとって、ラジオ体操は健康づくりのための大切な時間。そして元気な中野さんの姿は、みんなの目標にもなっているそうです。
地域の人と会話し、心の健康も保つ
同好会の他のメンバーにも話を聞くと「コロナ禍で友達や地域の人にも会えなくなりましたが、ここに来れば会えるので嬉しいです」、「朝から、みんなと会話して、笑いのあるコミュニケーションが取れるのが楽しみです」と話してくれました。
同好会では新型コロナが拡大する前までは、体操後にモーニングに行ったり、旅行に出かけたりと盛んに交流していたそうです。しかし、現在は新型コロナの影響で旅行などには行けなくなりました。だからこそ、ラジオ体操が貴重なふれあいの場であるとあらためて感じているそうです。参加することで、地域の人と楽しく会話する時間もでき、心の健康も保たれるのです。
ラジオ体操がつなぐ地域の絆
同好会のメンバーの一人、關勝さんは、いまだからこそラジオ体操の場が地域の絆づくりに必要だと話します。「知立神社がある西町は、知立まつりなど三大祭りがあり、子供会の活動も盛んだったのですが、全てなくなってしまいました。地域で集まる機会がなくなり、ラジオ体操の前後にコミュニティの問題や今後についてみんなで話し合っています。いまではラジオ体操が地域の絆づくりの場です。」
毎朝、地域の人と顔を合わせ、言葉を交わす。身体だけでなく心の健康にも大きな役割を果たすラジオ体操。朝の清々しい空気のなか、皆さんも少し早起きをして参加してみませんか?(取材・撮影:映像舎/文:石川玲子/2021年9月取材)
知立神社ラジオ体操同好会
90年以上続くラジオ体操同好会。毎朝、知立神社の境内でラジオ体操を行う。誰でも自由に参加することができます。
開催時間:毎朝6時30分~(元日を除く)
開催場所:知立神社(愛知県知立市西町神田12)
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