新型コロナの影響で、イベントや舞台などの中止や延期が相次ぐなか、愛知県知立市では、コロナ禍のいまだからこそ地域を盛り上げようと、「池鯉鮒大田楽」と題する芸能公演の準備が進められていました。地域の発展のためにと取り組む人々の姿とその想いを取材しました。
池鯉鮒大田楽の復活に挑む
鉄道の高架化など駅前開発が進む愛知県知立市。新しい知立の玄関口の完成に合わせ、市民が駅前に集い地域を盛り上げたいと考える人がいます。知立市中山町で「シューズハウス・クゼ」を営む久世泰男さんです。
そのきっかけの一つとして久世さんが考えたのが「池鯉鮒大田楽」の復活です。平安時代に生まれた芸能「田楽」を狂言師 野村万之丞さんが現代に再構築した「大田楽」。 知立市では、野村さんとの交流があったこともあり、過去に「池鯉鮒大田楽」と題した公演が行われていました。久世さんは、この大田楽を再び復活させることで、駅前に人が集うきっかけづくりをしたいと考えたのでした。
大田楽でまちに賑わいを
池鯉鮒大田楽復活への想いについて久世さんは、「2026年に駅前の再開発が完成し、駅から通称南北線というメインの30m道路が伸びるようになります。池鯉鮒大田楽を1年に1回30m道路を利用して開催させてもらい、新しい賑わいができたらと思っています。
知立市は『歴史とロマンを感じるまち』ですから、周辺の人たちが集う拠点として、もっともっとこの場を活かしていくような取り組みにできたらいいですね」と、開発が進む知立駅前で話してくれました。 そしてその目標の実現のため、久世さんがまず考えたのがプレビュー公演でした。
プレビュー公演を計画するも...
当初久世さんらは、知立市の市制50周年記念式典にあわせて、池鯉鮒大田楽のお披露目を兼ねたプレビュー公演を行おうと準備を進めていました。しかし、新型コロナの影響で市制50周年記念式典が延期に。プレビュー公演も延期となり市民へ披露する機会を失ってしまいました。
それでも久世さんは、なんとかプレビュー公演を開催しようと日程を再調整し、2021年9月にリリオ・コンサートホールで実施しようと考えました。コロナ禍での開催について、「ストレス発散や安らぎを感じてもらえる知立らしい良いものにしていくのが私たちの義務だと思っています」と、久世さんは話します。
公演を後押しする人たち
「池鯉鮒大田楽」の復活を後押しする人たちもいます。その一人が、知立市弘法町にある遍照院の副住職、横井紫光さんです。
「池鯉鮒大田楽を地域に根付かせてまちおこしに活かしてほしい」と話す横井さんは、現在の社会状況を踏まえ大田楽の復活を願うようになったといいます。
また、大田楽には久世さんらが呼びかけた市民総勢80人が参加します。
踊りの練習にはげむ市民の方に話を聞くと、「日本の伝統にも繋がっていて、とても素敵だと思ったので参加しました」、「衣装、音楽も素晴らしいものになっています。全体のハーモニーを感じてもらえれば嬉しいです」 公演に向けて練習してきた参加者は「いまプレビュー公演を行うことで、新型コロナの影響が明けたときに、もっと大きな流れになるといいなと思っています」と話してくれました。
地域の賑わいづくりのために 想いは続く...
様々な人たちの想いが集まり進められてきた「池鯉鮒大田楽」プレビュー公演ですが、2021年8月27日に愛知県でも緊急事態宣言が発出されたことにより再度の公演延期を余儀なくされました。(※2021年9月22日時点)
しかし、久世さんたちは断念することなく、駅前での大田楽開催を夢見ながら、地域を盛り上げるため「池鯉鮒大田楽」の復活を模索する日々は続きます。今後について久世さんは「諦めず新型コロナの感染拡大状況をみながら公演を行えるように準備していきたい。地域の人たちも巻き込んで賑わいづくりに繋がっていけば」と、語ってくれました。(取材・撮影:モーション・ビジュアル・ジャパン/文:石川玲子/2021年8月取材)
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