新型コロナの影響で神社に訪れる人は減少傾向にあります。伊勢神宮の2021年1月の参拝者は前年に比べおよそ4分の1でした。
そんななか、愛知県刈谷市にある市原稲荷神社では、参拝客を少しでも増やそうと新しい取り組みに挑戦しています。風鈴の音色を楽しめる夏詣や、立体御朱印など、様々なアイデアで地域の人を呼び込もうと奮闘する、コロナに負けない新しい神社の姿を取材しました。
市原稲荷神社は地域に根ざした神社
刈谷市司町にある市原稲荷神社は西暦653年に創立された神社で、1300年以上の歴史を誇ります。現在でも地域の人々の信仰を集め、お宮参りや七五三などで多くの人が訪れる神社です。
そんな市原稲荷神社のはじまりについて、宮司の小嶋今興さんは「記録を見るかぎりでは、亀狭山(現在の亀城公園)に神殿を創立したのが始まりといわれています」と教えてくれました。また、市原稲荷神社は地域との関わりも深く、5月に開催される大名行列など、伝統的な祭りが多く開催されていますが、2021年は新型コロナの影響で中止になってしまいました。
神社の在り方にも変化が...
恒例の祭りが中止になるなど、人の集まりを避けることが日常になりつつある今、神社のあり方にも変化が求められています。宮司の小嶋さんは、「神社というのは地域の守り神という形で存在していますので、地元の方々の安全や繁栄を祈る場所であると共に、地域の方々が足を運んでくれる場所であることが大事だと考えています」と語ります。
そこで市原稲荷神社では、コロナ禍でも足を運んでもらうために新しい取り組みを始めました。
新しく始まった夏詣の取り組み
新しい取り組みの一つが去年から始めた「夏詣」です。2014年に東京の浅草神社が提唱した新しい風習で、1年の無事を願う初詣のように、7月1日から神社仏閣を訪ねて今後の無事を願います。市原稲荷神社でも、7月はちょうど1年の折り返し時期ということもあり、初詣を分散できればという思いから「夏詣」を開催することにしたといいます。
市原稲荷神社の「夏詣」では、涼しげな音色を聞きながらゆったりとした時間を過ごしてもらおうと境内に風鈴を設置しています。宮司の小嶋さんは、「最終的には420個くらい設置する予定です」と話します。
訪れた参拝客に話を聞いてみると「去年も来ました。風鈴の規模が大きくなっていて嬉しいですね」「風鈴の音色が素敵です」など、好評のようです。
新しい御朱印も人気
さらに市原稲荷神社では、夏詣だけでなく新たに「午の日参り」を始めたといいます。「午の日」に参拝し、初穂料2,000円を納めたあとに、特製の立体御朱印を受け取ることができます。立体の御朱印は毎月デザインが変わるため、コレクターズアイテムとして少しずつ人気が出始めているそうです。
「2021年3月の初午の日から始めました。毎月飛び出す図柄が異なる御朱印をお渡ししています」と宮司の小嶋さん。立体の御朱印のアイデアを考えたという小嶋さんの妻、都苺永さんは「飛び出す絵本が好きで、アイデアを出しました。他ではあまりないので、みなさん喜んでくれます」と話してくれました。
神社を新たに知ってもらうきっかけに
「2021年3月に始めてから神社に参拝に来てくれる人が徐々に増えています」と語る宮司の小嶋さん。市原稲荷神社を訪れた人に話を聞くと「地元ですが、こういった取り組みをしているとは知らなかったです。午の日参りの立体の御朱印をもらうためにまた来ます」と楽しそうに話してくれました。
午の日参りは、地域の人たちが新たに神社に足を運ぶきっかけになっているようです。
塞ぐ気持ちを楽にしてもらうためにも神社を訪れてほしい
コロナ禍でも参拝に訪れて欲しいという思いからスタートした市原稲荷神社の「夏詣」や「午の日参り」などの取り組み。今後について宮司の小嶋さんは「コロナで塞ぎがちな気持ちを少しでも楽にしてもらうために、地域の人たちに神社へ足を運んでもらい落ち着いた時間を過ごしてもらいたいですね」と話します。
新たな取り組みから、新しい神社の姿を模索する市原稲荷神社。神社の歴史と伝統を守りながら、今後どう地域と関わっていくのか、その悩みはつきません。(取材・撮影:モーション・ビジュアル・ジャパン/文:石川玲子/2021年7月取材)
市原稲荷神社
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