2022年春卒業の学生を対象にした就職活動が本格化する一方で、新型コロナの影響により、いまだ就職先が決まっていない2021年春卒業の学生たちがいます。
そんななか、愛知県安城市は、大学や高校を卒業しても新型コロナの影響で就職先が決まっていない若者を支援することを目的に「安城市ステップアップ採用」制度を行っています。一体どういった制度なのか?今回はこの制度の担当者と、働きながら就職の準備を進める5人の若者の姿から、「安城市ステップアップ採用」について取材しました。
安城市ステップアップ採用とは?
2021年3月に大学を卒業した人の就職率は96%と、前年同期比で2ポイント減少。新型コロナの影響で就職活動に苦労している若者たちが多くいます。
そんななか安城市は、就職難にぶつかる若者たちを支援しようと、新たに「安城市ステップアップ採用」という制度を開始。非正規の職員を募集しました。
安城市人事課、松元淳一さんはこの制度について「市役所には様々な部署があり、日頃から市民や事業所のためにいろんな支援をしています。その一環として、若者の就職難に対してなにかできないか考えました」と説明してくれました。
働きながら就職活動を行うことを支援
「安城市ステップアップ採用」では、2021年3月に大学や高校を卒業後、就職先が決まらなかった若者を「会計年度任用職員」として1年間採用。新型コロナの影響で就職活動が思うようにいかなかった若者など5人が採用されました。
この制度の特徴は、就職活動のスケジュール優先で勤務ができるほか、興味がある部署の仕事を経験できたり、職員対象の研修にも参加できたりする点です。これにより、働きながら就職活動を行う若者が次のステップに進むのを支援しています。
ステップアップ採用のメリットとは?
市の広報広聴係で働く澤山綾音さんは、安城市ステップアップ採用で採用された一人です。「企業もいま採用ができないから待って欲しいという企業が多く、動きたくても動けないし、どうしたら良いのかと悩む時期が続きました。でもステップアップ採用で、ここで働かせてもらって、仕事の融通を利かせてもらい就職活動ができるので、とてもありがたいと思っています」と澤山さんは話します。
また、同じくステップアップ採用により経営情報課で働く新村陽介さんも「勤務時間が限られているため時間管理がしやすく、自宅に帰ってから採用に向けての勉強ができる」と、この制度のメリットを語ってくれました。
それぞれの目標に向かう若者たち
メリットだけでなく、ステップアップ採用で採用された若者たちは、それぞれの目標や新たなやりがいも見つけています。健幸=SDGs課に勤務する河本絹佳さんは、安城市主催のイベントの企画にも携わるなど、充実した毎日を過ごしています。
「就職活動中は説明会やホームページからしか相手の会社を知ることがありませんでした。しかしここで実際に働いてみると色々と感じることがたくさんありました。いまは地方公務員を希望しています。」
河本さんは、ステップアップ採用を通じて安城市役所に勤務することで、地方公務員の仕事にふれ、その魅力にひかれたということです。
また、危機管理課に勤務する近賀優さんは、民間企業数社から内定を受けていましたが、本当にやりたい仕事かどうかを考え最終的にこの安城市ステップアップ採用を選んだといいます。「学生時代は防災について学んでいたので、防災に関する仕事ができればと思いました」と近賀さん。
そのため、現在は危機管理課に配属され、日々業務に励んでいます。この制度は、こうした公務員のイメージから一歩進んで現場を知ってもらうことにも一役買っているようです。
市で得た経験や知識を次のステップに
新型コロナにより就職という人生の節目に苦難が訪れた若者たち。それでも、ステップアップ採用で働く若者たちは、前を向き、次の目標に向け動いています。2021年春に高校を卒業した安村愛子さんは、「将来は国際関係の仕事に就きたいと思っています。しかしコロナ禍で国際交流などの動きが止まってしまいました。そのためこの制度を利用し、市民税課の窓口業務を行うことで、まずは窓口にくる地域の様々な外国籍の方たちと繋がり、いろんな技能が身に着けられればと思います」と話してくれました。
この制度をはじめた安城市人事課の松元淳一さんは今後の展望について「市の職員として働いた経験や研修で得た知識が、みなさんの次のステップで何らかの形で役に立つと考えています。この制度を活用した若い人たちのこれからの活躍を期待しています」と話してくれました。
新型コロナの影響を受け就職難を経験する若者たち。しかし、安城市のステップアップ採用など様々な支援を受け新たな一歩を歩み始めています。(取材:土田 隆浩/文:石川玲子 2021年6月取材)
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