日本経済を直撃した新型コロナウイルスの影響。特に観光、宿泊業は未曾有の大打撃を受ける事となり、経営が破綻した旅館、風前の灯火になっている旅館は全国に数多く存在します。
そんななか、愛知県西尾市にある「吉良温泉」も例に漏れず苦境に立たされています。「一度退いてしまった客足は戻らない」「なぜこんなに苦しまなきゃいけないのか......」悲鳴のような嘆きが聞こえるなか、コロナ禍を生き抜く吉良温泉の1年の取材を全3回に渡りお伝えします。
中編・後編はこちら
Vol.35「苦境を生き抜く観光地。西尾市・吉良温泉コロナ禍の闘い -中編-」
Vol.35「苦境を生き抜く観光地。西尾市・吉良温泉コロナ禍の闘い -後編-」
未曾有の大打撃を受ける温泉街
三河湾を望む愛知県西尾市「吉良温泉」は、年間14万人が訪れる景勝地です。吉良温泉の取材を開始した2020年5月、新型コロナによる影響で、外国からの観光客はもちろん、国内からの客足も途絶え「一度目の緊急事態宣言」が解除された後も、その深刻さは増すばかりでした。
吉良温泉にある旅館の一つ「吉良観光ホテル」では売り上げが80%以上ダウンし、国の補助金などでいくらか補填していても、厳しい状況にありました。
吉良観光ホテルの代表取締役で吉良温泉観光組合の組合長でもある山本裕充さんは、「少人数で来るお客さまが少しいらっしゃいますが、以前のような団体のお客さまはありません。これまでもさまざまな理由でお客さまが少ないことはありましたが、ここまで人が来なくなるのは30年やっていて初めてです。とにかく外出禁止や自粛などの影響を、一番受けているのが私たち宿泊業なのではないか」と、当時語ってくれました。
集客の"命綱" 「ハワイアンフェスティバル」
「16回目になるのですが、2020年も行うつもりでいます。他のイベントが次々と中止になっていくなか、ハワイアンフェスティバルが起爆剤になってくれればいいとは思うのですが...」と話す山本組合長。
毎年4日間に渡り行われるハワイアンフェスティバルは、700人以上のフラダンスを踊る参加者がイベントに参加するだけでなく、食事をしたり宿泊したりと周辺の旅館にとっては集客の機会でもあり、コロナ禍においては、もはや集客の為の"命綱"です。山本組合長からは厳しい現状につい弱音が漏れます。
「今まで通りにはいかないと思うので、ゴールの見えないマラソンがはじまった気がします」
失った命綱。それぞれの戦いの始まり
しかし2020年7月。追い打ちをかけるかのように新型コロナは第2波の広がりを見せ、西尾市内でも感染者が増加。吉良温泉観光組合は苦しい決断が迫られます。
そして2020年7月29日、西尾市定例記者会見の場で吉良温泉観光組合が「ハワイアンフェスティバル」の中止を決めたことが発表されました。
「なにか起こったときのリスクを考え、中止を決めました。正直に言うと、これで『イベントでコロナが出た』という事態は起こらないので、ある種の安心感はあります。しかし商売としては最悪の事態です」と、山本組合長は苦しい胸の内を語ります。
コロナ禍での"集客の命綱"を失った吉良温泉。ここから生き残りをかけた"それぞれの旅館の戦い"が始まったのでした。(中編に続く)(取材・撮影:シークラウド映像舎/文:石川玲子/2020年取材)
中編・後編はこちら
Vol.35「苦境を生き抜く観光地。西尾市・吉良温泉コロナ禍の闘い -中編-」
Vol.35「苦境を生き抜く観光地。西尾市・吉良温泉コロナ禍の闘い -後編-」
吉良かん(吉良観光ホテル)
三河湾沿岸を中心とする三河湾国定公園内、吉良温泉郷の高台に位置する吉良観光ホテル。周辺の自然を満喫することができ、三河湾が見渡せる景観が自慢の宿。
場所:愛知県西尾市吉良町宮崎田ノ上15
電話:0563-32-1181
「シリーズ・コロナ禍をこの地域で生きる」は、キャッチの番組でも放送中!
番組名:特集「地域の今」
地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。「シリーズ・ コロナ禍をこの地域で生きる」では、医療・教育、企業などに従事するこの地域の人々の声から、コロナ禍の時代をどう生きるのか、そのヒントを探ります。