2021年3月愛知県西尾市の吉良中学校で卒業式前日に卒業イベントが開催されました。生徒、教師、保護者、さまざまな人たちの思いが重なって実現したイベントです。
このイベントを提案したPTA会長の平野一之さんは「コロナで色々なことができなくなったことを嘆くだけでなく、自分たちが行動すればいろんなことができ、いろんな未来や可能性があるということを学んでほしい」と語ります。今回は、コロナ禍でも思い出を作ろうと教師や保護者、そして大切な仲間たちと共に作り上げた吉良中学校の卒業イベントに密着しました。
卒業を前に笑顔で締めくくりたい
コロナ禍で2020年度行事の変更や中止が相次ぎ、仲間との大切な思い出作りの機会が少なかった教育現場。2020年11月、吉良中学校PTA会長の平野一之さんは、コロナの卒業を前に何か思い出を作るイベントが出来ないかと学校を訪れました。「文化祭もないし駅伝も無かったので、3年生たちに楽しめることをひとつ残してあげたい」という平野さんの提案を学校側は喜んで受け入れました。
小嶋隆広校長は「特に3年生は行事が少なかったため、このイベントが生徒たちにとって吉良中で頑張ってきたという足跡になれば」と期待を寄せます。こうして平野さんの提案をきっかけに卒業イベントが動き出しました。
動き始めた卒業イベントプロジェクト
その後、生徒会を交えて話し合いが行われました。生徒会長の新家優月さんは「最初に聞いた時はすごいびっくりしました。自分たちのためにこんなにPTAの方が考えてくださったというのがとても嬉しくて、頑張ろうという気持ちになりました」と喜びを語ります。
こうして始まった卒業イベントプロジェクトは、教師やPTAの協力を受けながら、生徒会を中心に思いをテーマや内容に反映させていきました。そして歌に乗せて感謝の気持ちを届けるという素敵な企画が決まりました。
イベントに向け生徒会が動き始めたなかで、PTA会長の平野さんも生徒たちのためにイベントで披露するスライドショーを用意していました。しかしそこにも、今年ならではの苦労があります。
「いろんな行事が中止になっているので体育祭と修学旅行の写真しかありません。部活も制限されていたため、部活動の写真もありません。そのため、学校に相談して、生徒たちの日常の写真を撮ってもらいました。」
それぞれの思いを胸に準備が進められました。
迎えた卒業イベント当日
2021年3月2日 卒業式を前日に控え、様々な人に感謝の気持ちを伝えるための卒業イベントがいよいよはじまりました。
生徒会のパフォーマンスで幕を開けると、まず行われたのは3年生による有志発表。最初に舞台にあがった3年生の近藤さんは文化祭でピアノ演奏を披露する予定が中止となり、悔しい思いをしました。「吉良中学校への感謝の気持ちと、これから先、どんな困難も乗り越えて、奢らず、気負わずどこまでも突き進むというぼくの決意を込めて演奏します」と話す近藤さん。3年間の想いをぶつけるようにピアノ演奏を披露し、生徒たちが拍手でそれを称えます。
イベントを終え、それぞれの未来へ
その後、3年生たちによる合唱が行われました。3年間の感謝の気持ちを込めて歌う合唱、涙しながら歌う生徒の姿もありましたが、それでも生徒たちの表情はいきいきとしていました。
そして最後には締めくくりとしてPTA会長平野さんが作ったスライドショーが。1、2年生の頃の写真は笑って振り返っていましたが3年生の写真になると、生徒たちの表情が一変します。新型コロナ感染拡大による臨時休校、部活の大会や行事の中止、不安や悔しい気持ちを抱えることが多かった1年間。だからこそ強まった、仲間たちとの絆やかけがえのない思い出が胸にあふれます。
イベントを終えた生徒たちからは「この1年、コロナ禍で色々できなかったけど、3年間を振り返れた」という声が聞けました。PTA会長の平野さんも「やろうと思えばやれるということを伝えられた」と語ります。
生徒会会長の新家さんも「今までは『卒業したくない』って思っていましたが、先へ進んで、自分で決めた道を頑張ろうと思えました」と笑顔を見せてくれました。
PTAや教師の支えの中、一生忘れられないイベントを実現させた吉良中学校の生徒たち。仲間との思い出を胸に、新たな一歩を踏み出していきます。
(取材・撮影:ビデオハウス/文:石川玲子/2021年3月取材)
吉良中学校
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