新型コロナウイルス収束の兆しが見えないまま迎えた2021年。例年は賑わいをみせる初詣でも多くの人たちが不安を募らせ、「今年はあまり外に出たくない」、「混雑する初詣は何となく怖い」という声が聞こえてきます。
毎年、三が日には約4万人が訪れる愛知県知立市の「知立神社」も経験したことがない状況に直面し、関係者は「かつてない正月、我々も初めてのため緊張している」と声を漏らします。今回は、コロナ禍の知立神社の年末年始の様子を取材しました。
コロナ禍の知立神社の年越し準備
2020年12月下旬。知立神社では新年に向けた準備が着々と進んでいました。
全国の神社で分散参拝などが呼びかけられているなか、知立神社の神山忠憲さんは「例年ですと三が日は大勢の人が集中してしまうため、それを避けるため12月のうちからお参りをしてもらうようお声がけをしています」と話します。 また新年から頒布される破魔矢や干支置物などの縁起物も12月から頒布を始め、お守りやお札は郵送での授与に対応できるようにしたということです。
さらに三が日の新型コロナ対策も準備が進められていました。神山さんは「例年、拝殿から鳥居まで1本の長い列ができます。今回は列が密になるのを防ぐために、境内を何度も折り返して間隔をとって並べる動線を作る予定です」と参道を人が密集しないように一直線の並びをやめたということです。
また、初詣定番のおみくじも専用の場所を設け、縁起物などを頒布する授与所は、社務所と休憩所の2か所で整理券を配布して人数を制限することに決めました。
近隣市町へのお願いも対策の一環
知立神社の取り組みは地域にも目を向けます。知立市や刈谷市などの近隣の市町に初詣に対する啓蒙チラシを配布しました。チラシには混雑を避けるための分散参拝のお願いや、甘酒の振る舞いの中止など例年からの変更内容が記載されています。
「これを読んでいただきコロナ禍に対応した新しい参拝の仕方でお越しいただければと」と話す神山さん。神社では最大限コロナ対策をし、安心してお参りできるよう準備していると語ってくれました。
地元の人たちも協力して準備を進める
知立神社の氏子総代や、神社横の知立公園の花菖蒲を管理する花菖蒲育成会のメンバーもまた、安心して新年を迎えたいと願っています。会では、毎年知立神社拝殿のしめ縄の交換を行っています。
例年では12月の中旬から新しいしめ縄作りを開始していましたが、2020年はコロナ禍を踏まえて人数を減らし、11月下旬から作業を開始しました。作業を終えた花菖蒲育成会のメンバーは「例年よりも飾り付けを手伝ってくれる人は少なかったですが、無事に知立神社のお正月の準備を終えられてよかったです」と笑顔を見せます。
例年では初詣で神社が賑わうことは喜ばしいことでしたが、複雑な思いを感じている人もいます。花菖蒲育成会の藤井公人会長は「小さいときからここで生まれ育ったから、本当はみなさんに知立神社にお参りしてもらいたいです。でもこんなことになってしまって......。来年はコロナのないようないい年にしたいです」と話していました。
様々な地元の人たちの思いが交錯するなか、知立神社ではコロナ禍でも無事に新年の準備が整ったようです。
新しい形で願う、よりよい年への祈り
2021年1月1日。境内には今までにない、風景が広がっていました。参拝者一人一人がマスクを着用し、間隔をあけて並ぶなど、それぞれの対策を徹底していました。 参拝者からは「来た人がそれぞれ対策をしっかりしていて安心した」「神社の対策がしっかりとされていてよかったです。対策をしてくれた神社の関係者に感謝です」といった声が聞かれました。
神社、地域、参拝者それぞれが工夫し協力したコロナ禍の年末年始。知立神社にはコロナが収束し、日常を取り戻すことを願う人たちの姿がありました。
(取材・撮影:映像舎/文:石川玲子/2020年12月取材)
知立神社
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