ラトビアで一番有名な日本人〜小さな村から学んだ地域の絆〜

特集
安城市

2024年11月27日

ラトビアで一番有名な日本人〜小さな村から学んだ地域の絆〜

#新しい時代を生きる

ラトビアで名前を知らない人はいないほど有名な日本人がいます。内堀宜江（うちぼりのりえ）さんです。内堀さんは、心豊かに暮らすラトビアの人々に魅せられ、その文化を日本に広めたいと活動しています。

ラトビアに魅せられカフェを開業

内堀宜江さんは、安城市でラトビア料理を提供する「カフェライマ」を営んでいます。
ラトビアとは、欧州のバルト三国の一つで人口は約190万人。名古屋市の人口よりも少ない小さな国です。豊かな自然と中世からの絢爛な建築や文化をもつ美しい国ですが、日本人にとっては決してメジャーとは言えない国です。内堀さんは、そんなラトビアに魅せられ、その文化を発信しようとカフェをはじめました。

同世代の若者たちに刺激をうけた

内堀さんが初めてラトビアにふれたのは2008年のことでした。大学4年生の時、日本政府の国際交流事業で訪れたのがきっかけです。そこで感じたのは、自分たちの民族文化に誇りを持つ、同世代の若者の郷土愛でした。
内堀さんは、当時のことをこう語ります。
「同世代の若者たちが、自分たちがこの国を作るとか、ラトビアが大好きという熱い気持ちをもっていたのに衝撃を受けました。なぜなら、彼らが3歳とか4歳のときにラトビアが旧ソ連から独立したからなんです。彼らが大切にしているラトビアについて、もっと深く知るため、大学院で文化人類学を専攻しました」

自然豊かな小さな村

ラトビアに関心を持った内堀さんは、彼らの考え方や文化を学ぶため、研究者のフィールドワークとして3年間単身でラトビアで暮らすことにしました。その時訪れたのがアルスンガ村です。ラトビア西部に位置し、首都リガから車で４時間かかる、人口およそ200人の自然豊かな小さな村です。

3年間の暮らしがドキュメンタリー映画に

日本人を見るのは初めてという人ばかりの中、内堀さんを預かってくれたのは、当時80代の女性、ルッチさんでした。内堀さんは当時の生活をこう振り返ります。
「ルッチさんの提案で日本を紹介するイベントをさせてもらったんです。それ以降、村の中で受け入れてもらえました」
そんなルッチさんと内堀さんの3年間の暮らしは、現地の映画監督の目に留まり「ルッチとのりえ」というタイトルでドキュメンタリー映画化されました。ラトビアの映画賞を受賞したのをきっかけに「のりえ」という名前はラトビア全土で知られるようになりました。

ラトビア文化を伝えるのが使命

「日本に帰ってくると、ものが溢れています。それに比べて向こうでは、ものがないけれど、人間味あふれる生活をしていたなと思います」と語る内堀さん。
「ラトビアでおばあちゃんからもらった無償の愛に対して何ができるかと考えました。日本ではラトビアという国があまり知られていないので、まずはラトビア文化を日本に伝えることが自分の使命なのではないかと思いました」

ラトビアカフェをオープン

帰国した内堀さんは地元、安城市に「カフェライマ」をオープンしました。日本ではほとんど知られていないラトビア料理のほか、ハーブティーの茶葉などを販売するアンテナショップにもなっています。また、子育て中の母親を招いたイベントも行い、ラトビアのハーブティーを振る舞う他、内堀さんが学んだラトビアの文化についても伝えています。
「ラトビアは男性が子育てに参加するのは当たり前です。女性も何かに捕らわれることなく、自分らしく生きています」と内堀さん。

人と人が助け合い、生きていく

内堀さんが伝えたいことは、決して遠く離れた異国の話ではなく、ここ安城市でも生み出せる人と人との繋がりの大切さです。
「ラトビアはものがないからこそ、人のつながりを大切にしています」
人と人が助け合い、生きていくこと。ラトビアカフェは忘れてはいけない大切なことを教えてくれます。(取材・撮影：PAQLA/リライト：石川玲子　2024年9月取材)