働き方改革などによって副業を許可する民間企業が増えている中、地方公務員の副業をすすめる動きも広がっています。総務省は令和2年、地方公務員の副業に関して許可基準を設定し、公表するように通知しました。この動きから、それまでより許可基準が明確になり、地方公務員も副業に取り組みやすくなりました。
西尾市は2022年から職員の副業を解禁しました。今回は西尾市がなぜこの制度を始めたのか、職員はどのような副業を行っているのか取材しました。
西尾市職員地域貢献活動応援制度
西尾市は、2022年から「西尾市職員地域貢献活動応援制度」として職員の副業を解禁し、現在6人の職員が副業制度を利用しています。
制度について、西尾市人事課 吉永ひかりさんに教えてもらいました。
「内容は、公益性が高く継続的に行う地域貢献活動ということで、地域の活性化や発展に役立つ活動に限定しています。また、営利を主目的にしない、西尾市と利害関係が生じない活動であることなどの条件があります」
例えば、飲食店での副業は認められませんが、学校の部活動や地域のスポーツチームの指導員は、副業として認められます。
制度導入の背景
「西尾市職員地域貢献活動応援制度」導入の背景を、中村健西尾市長に聞きました。
「導入の理由は大きくふたつあります。ひとつ目は地域の担い手不足、高齢化という課題に対して、職員として培ってきたスキルや人脈を還元して地域を活性化するという効果を期待しています。ふたつ目は、職員として仕事をしていく上での幅を広げてほしいという思いがあります。家庭での時間、仕事の時間の他に、地域貢献活動で経験を積み、多様な人間関係を築いて、それらを職務に還元してもらうことで、地域とwin‐winの関係になると考えています」
趣味のバルーンアートで地域貢献
この制度を利用しているのが、バルーンアートの指導者として活動している西尾市建築課課長補佐 片山和政さんです。片山さんは、建築課に所属し、建築物の確認申請の審査や住宅の耐震申請の受付などを行っています。
趣味でバルーンアートを行っていた片山さんは、副業制度が始まる前も市役所子ども部からの依頼で保育園でのバルーンショーを行っていました。
生涯学習講座がきっかけとなり指導者に
片山さんの活動を見た生涯学習課からも声がかかったといいます。
「生涯学習講座でバルーンアートを教えてほしいということで、講座をさせていただきました。その受講生の方々が引き続きバルーンを続けたいという希望があり、クラブが発足することになりました。その指導を続けるにあたり、副業制度を利用したいと思ったんです」と、片山さんは話してくれました。
つるしろバルーンクラブでの指導
市役所での仕事が終わると、片山さんは鶴城ふれあいセンターに向かいました。この日は、月に1度の「つるしろバルーンクラブ」の活動日です。児童クラブの支援員や孫のために参加しているシルバー世代など様々な経歴のメンバーが参加しています。ここで、片山さんが考えてきたバルーンアートの作り方を、メンバーに教えます。作ったのは大小さまざまな大きさの風船を組み合わせた、自立するピエロです。
作品を持ち帰った後にも楽しみが
バルーンクラブのメンバーに、片山さんの指導について聞いてみました。 「指導の仕方がいいので、私たち高齢者でもすごくよく理解できます」
出来上がった作品はどうしているのか聞いてみると、「自分の勤務先に持っていって食堂や事務所に飾っています。みなさん喜んでくれて、中には欲しいとおっしゃってくれる方もいらっしゃるんです。持って帰った後にそういう楽しみもあります」と教えてくれました。
市役所の子育て支援課や児童課の窓口や、子どものためのプレイスペースにも片山さんのかわいらしい作品が飾られ、子どもたちを笑顔にしています。
西尾市をバルーン溢れるまちに
片山さんはどのようなビジョンを持って、「西尾市職員地域貢献活動応援制度」を利用しているのでしょうか。
「やはり、小さい子どもたちに喜んでもらえるのが一番うれしいですね。声をかけてもらえるなら色んな所で活動する機会を作りたいです。西尾市が『色々なところでバルーンが見られるまち』になったらうれしいと思っています」
制度利用の流れ
西尾市役所では、片山さん以外にも地域貢献活動応援制度を利用して野球の審判や、小中学生の陸上の指導、高校生の剣道の指導などを行っている職員がいます。
制度を利用したい職員は、人事課に申請書を提出し、許可を得ることで活動ができるようになりますが、活動は職務に支障をきたすことがないよう、勤務時間外や休日等に行う必要があります。
西尾市職員1700人の特技を活かす
今、日本は人口の減少により、深刻な人手不足に陥っています。西尾市の職員は、西尾市民病院の職員も含めておよそ1,700人います。これだけの職員がいれば、特技や趣味を生かし、地域貢献ができる人材も多くいるのです。
これから制度を利用しようとしているのが、西尾市資産経営課の技師 淺井龍治さんです。市役所では公共建築物の設計や工事の管理に関連した業務にあたっていますが、実は淺井さんは、代々茶道教室を行っている家に生まれ、茶道の師範の資格を持っているのです。
特技を活かしてより西尾市に貢献していく
淺井さんは英語も得意なため、2つの特技を活かし、これまでも抹茶のまち西尾をPRするために職務として海外に出張し、お点前を披露するなど資格を活かした活動をしてきました。
これからの活動について淺井さんに聞いてみました。
「西尾市観光協会からの依頼を受けて、西尾市を訪れる外国人観光客向けのPR活動をしていきます。今までは仕事の中で茶道の講師を務めることもあったのですが、これからは副業制度を利用して、より地域に貢献できる活動につなげていきたいです」
深刻な人手不足解消のヒントに
西尾市役所は、職員の特技を地域貢献に生かしてもらおうと副業制度を整えました。今後、多くの自治体が同様の制度を取り入れることで、深刻な人手不足解消への一助になるかもしれません。(取材・撮影:映像舎/リライト:石川玲子 2024年10月取材)
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