ごみ出し、買い物、外出の付き添いなど、高齢者は普段生活する中で様々なちょっとした困りごとを抱えています。高齢者世帯が増加する中、愛知県刈谷市では2024年6月から高齢者のちょっとした困りごとを、30分300円の料金で解決する事業がスタートしました。今回は、刈谷市でスタートしたモデル事業「ちょこっとささえあいセンター」の取り組みを紹介します。
自宅の窓掃除をお手伝い
高齢者にとって、暑い時期の窓掃除は大変な作業です。94歳の男性に頼まれ、男性の自宅の窓を掃除していたのは、プロの業者ではなく一般市民。
「高齢者の方自身が炎天下で窓掃除するよりも、私たちがお手伝いした方がいいと思う」「完璧に綺麗にできるかというとプロではないので難しいですが、汚れが気になっているところをちょっと拭く程度なら手伝えます。それで、楽になってもらえたらいいなと思ってやっています」と、話してくれました。
ちょこっとささえあいセンター
刈谷市役所のすぐ南にある刈谷市民交流センターの1階に、「ちょこっとささえあいセンター」が開設され、2024年6月1日に事業をスタートしました。刈谷市 福祉健康部 長寿課の千家康弘さんに、センターがどのような機能を持っているのか教えてもらいました。
「刈谷市にお住まいの、65歳以上で要支援・要介護の認定を受けている、もしくは75歳以上の方が困っている生活上のちょっとしたことを、市民サポーターが助けに行くためのマッチングを行っています」
困りごとをサポートできる市民をマッチング
どのような困りごとが寄せられるのか、ちょこっとささえあいセンター 畑和子さんにうかがうと、ごみ出しや草取り、窓拭き、通院の付き添い、衣類の入れ替え、人恋しいので話し相手になってほしいなど、多岐にわたるそうです。
現在はこの事業を委託されたNPO法人ラルあゆみの職員4人が、サービスを利用したい人と、高齢者のお手伝いができる人をマッチングしています。
市民サポーターの確保
2024年7月18日に刈谷市民交流センターで、ちょこっとささえあい講座が開かれました。高齢者のお手伝いをするサポーターになるためには、この講座の受講が必要です。18歳以上であれば、刈谷市民でなくても講座を受けることができます。これまでに開催は10回を超え、90人以上がサポーター登録を行ったそうです。
「センターと長寿課がタッグを組んで、サポーターの確保に奔走しています。また、利用者の募集についても各団体に声をかけて困りごとのある高齢者に事業を知ってもらうよう活動しているところです」と、千家さんは話してくれました。
ちょこっとささえあい講座を受講してみて
講座では、手伝いの内容や依頼の流れについての詳しい説明だけでなく、サポーターとしての心得なども学びます。
講座を受講した人は、「この取り組みを知った時に、自分が高齢になった際にこのようなサービスを気軽に受けられる社会になっていると素敵だなと思ったんです。今、私はお手伝いできる側にいるので、詳しく知りたくて受講しました」と話していました。
住民同士でささえあう良い制度だと認識しながらも、果たして自分にもできるのか不安に思う参加者の声も聞かれましたが、講座終了後、さっそくサポーター登録する人の姿もありました。
お手伝いまでの流れ
ちょこっとささえあいは、現在はモデル事業として、刈谷市一ツ木町、司町、城町、荒井町、小垣江町で実施しています。高齢者から依頼が入ると、場所やお手伝いの内容などの連絡が電話またはLINEでサポーターへ送られてきます。お手伝い可能なら、その旨を連絡すると、依頼者の名前や住所などの詳しい情報が電話で伝えられ、利用者とサポーターのマッチングが完了します。
ちょこっとささえあいの現場へ
実際の活動の様子も取材させてもらいました。サポーターになって初めてのお手伝いには、センターの職員が同行します。そして、お手伝いの手続きに必要なサポーターカードや筆記用具、お金の受け渡しに使うポチ袋などが入った、サポーターケースを職員から受け取ります。
今回は、77歳の方からの依頼で、料理の下準備をお手伝いします。利用者は、8年前の病気で、利き手である右手に力が入らなくなり、固い野菜を包丁で切ることが難しくなってしまったため依頼したそうです。会話をしながら、和やかに作業が進んでいきます。
お手伝いを終えて
依頼されたお手伝いが終わると、利用者から報告書にサインをしてもらい、料金を受け取ります。この日は、1時間のお手伝いで600円でした。サポーターが最後に、スマホで作業完了の手続きをして終了です。初めてのお手伝いをした感想を聞いてみると、
「あっという間でした。喜んでいただけるとこちらもうれしいですし、やりがいを感じますね。また機会があればぜひやりたいです。」と、生き生きした表情で話してくれました。
高齢者の困りごとに手を差し伸べる
掃除、ゴミ出し、買い物、外出時の付き添いなど、高齢者の困りごとは様々です。この日のちょこっとささえあいは、自宅1階の窓ガラスや雨戸を掃除して欲しいという、94歳の方からの依頼です。ちょこっとささえあいをどのように知ったのでしょうか。
「市民だよりにチラシが入っていたんです。これを見て、自分ではできない草取りと窓拭きは絶対にお願いしようと思いましたよ」と、話してくれました。
支えるサポーターのやりがい
7月の暑い時期の作業ということもあり、センターではこの依頼に2人のサポーターをマッチングしました。作業に使う道具は基本的に、依頼者の家にあるものを使います。この日は1時間の作業で料金は2人で1,200円でした。
作業を終えたサポーターの方々に話を聞きました。
「ちょっとのことで喜んでもらえるというのはうれしいです。少し暑かったですけど、やりがいがありました」
「こうやって困りごとを気軽に頼めるところが広がっていくといいと思います」
刈谷市内全域でのささえあいを目指す
最後に、千家さんにちょこっとささえあいの今後の展望について聞いてみました。
「これからは3地区に留まらず、最終的には刈谷市内全域で、ちょっとした困りごとのある高齢者と、それを支えるために活動してくれる方をマッチングできるようにしたいと思っています」 ちょっとした困りごとを地域住民同士で支え合う仕組みは、高齢者の皆さんが、長く住み慣れた場所で安心して暮らしていくことに繋がりそうです。
(取材:シークラウド映像舎/リライト:石川玲子 2024年6月取材)
ちょこっとささえあいセンター
住所:愛知県刈谷市東陽町1丁目32-2 刈谷市民交流センター1階
開館時間:火曜日~土曜日 9時~17時 閉館時間:日曜日、月曜日(祝日の場合はその翌日も)、祝日(土曜が祝日の場合は営業)、年末年始 電話:0566-63-6055
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