愛知県安城市に県下でいち早く誕生した榎前母子教室。会場の安城市榎前町の公民館では、乳幼児とその母親が集まり、読み聞かせや工作を楽しんだり、母親同士で育児の悩みを相談したりして過ごします。子育て支援の重要性が一層高まるなか、榎前母子教室のあゆみや、それを支える地域の動き、子育て支援のこれからを紹介します。
母親の息抜きや情報交換の場にも
榎前母子教室は8月を除く毎月 1 回、榎前町公民館で午前中 1 時間程度開催されています。年会費は親子で500円です。榎前町内会の福祉委員会が主宰し、参加する母親のなかから役員を決めて運営しています。母子教室は、同年代の子どもが集まることで、その後の友情が芽生えたり、母親たちの息抜きの場になったりしています。
榎前町内会長の岡田好一さんは、母子教室のメリットをこう語ります。
「お母さん同士の息抜きや悩み相談、情報交換などのメリットがある。役員を引き受ける人は大変かもしれないけれど、社会に出るきっかけにもなります」
今から60年前に誕生した榎前母子教室
榎前母子教室は、今から60年前の昭和39年(1964年)に誕生しました。創設時のメンバーだった齋藤尹子さんに当時の話を聞きました。
「子どもが未熟児で保健師さんに来てもらっていたのですが、そのときに『みんなで集まったらどうか』と言われたのです。体重や身長をはかるなど…まわりに声をかけてみたら、榎前では賛同してくれた人が集まりました」
また、齋藤さんは「親世代と同居の家族が多く、昔はお母さんがお姑さんに遠慮して出かけられないことがありました。それでも母子教室なら出かけられるので身体を休められます」と当時のことを教えてくれました。
低体重児の割合も改善
町内会に保管された活動記録からは、子育て環境や社会情勢が今とは大きく異なるなかでの変遷が読み取れます。その一つが低体重児の割合です。昭和35年当時、安城市の低体重児の割合は、県平均を1ポイント以上上回っていました。そこで、母子教室が栄養指導などを行うことで、生活改善を図ることが計画されます。
榎前町母子教室誕生の翌年、安城市の低体重児の割合は、県平均に対し0.7ポイント差まで改善しました。さらに5年後の昭和45年には、県平均を0.6ポイント下回ります。こうして安城市内各地に子育てサークルが続々誕生することになりました。
4年間で49団体まで増えた子育てサークル
当時、安城市子育て支援センターの立ち上げを担当したのが古橋さつ子さんです。市内の子育てサークルの育成を図り、平成10年には24団体だったサークルを、4年間で49団体まで増やしました。古橋さんに当時の話を聞きました。
「手を差し伸べたいのをぐっと堪えて、相談先などを伝えて、主役はお母さん、支援センターは黒子というスタンスで、お母さんたちの気持ちを重視しながら、自分で選択できるようにするのが大切だと思います。サークルは少人数なら少人数でもいいんです」
古橋さんは子育てサークルの母親たちが、市内の公園マップのような冊子を自主的に作り始める活動も育成しました。
榎前町ならではの世代間交流
この日は創立60周年ということで、榎前町のボランティアグループふれあい「えのき」が運営するひまわりサロンの参加者も協力し、母子教室の役員と一緒に、七夕飾りを準備しました。榎前町ならではの世代間交流が、いつもより活動に広がりを生み出したようです。
母子教室の役員さんに話を聞きました。
「はじめてだったので不安でしたが、上手くいってよかった」
「地元がこちらではないので、母子教室を通して、地元の人とつながれたのがよかった」
さらにこの日はサプライズでマスコットキャラクターが登場し、子どもたちを喜ばせました。
子どもだった参加者が今度は母親として参加
榎前町内会に残る母子教室の記録のなかに、当時の参加者が書いた活動メモが保管されていました。そのなかに、子どもの時に参加した母子教室で、母親が書いた活動メモを、今回初めて目にしました。
「子どもたちも楽しみにしていて、来るとなるとよろこぶ。お母さん同士もいい交流になります。いずれ、自分の子どもも大きくなってこの教室に来る時などに、自分もこういうコメントを残しておこうかな」
多世代交流をこれからもバックアップ
県下でいち早く誕生し、今年60 周年を迎えた榎前母子教室。これからについて町内会長の岡田さんに聞きました。
「イベントでは、こういった多世代の交流ができて、経験豊かな人から子育てのアドバイスをもらうなどもありました。コロナ禍もありましたが、町内会が引き続きバックアップして、良い形で進めていけたらと思います」
子育て支援のあるべき姿がここに残されていました。
(取材・撮影:オフィスげんぞう /リライト:石川玲子 2024年7月取材)
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