ものづくりのまちである刈谷市を拠点に活動する刈谷少年少女発明クラブは、2024年で創立50周年を迎えました。子どもたちは自ら考え、形にする楽しさを感じながら活動しています。独創的なひらめきと、豊かな創造力。子どもたちが持つ無限の可能性を経験豊富な指導員が引き出し、ものづくりの心を伝え続けている活動をご紹介します。
50周年を迎えた刈谷少年少女発明クラブ
2024年6月29日、刈谷市総合文化センターアイリスで刈谷少年少女発明クラブの50周年記念式典が開かれました。支援団体の関係者やクラブに通う子どもたちとその家族など約700人が集まり、半世紀続くクラブの節目を祝いました。
1974年に誕生した刈谷少年少女発明クラブは、日本の将来を担う子どもたちがものづくりに親しむ機会を創り、優れた人財を輩出していくことを目指し生まれた全国初の発明クラブです。創立30周年目となる2004年からは、拠点を現在のゆうきそうへと移転し、子どもたちは充実した環境の中でものづくりを学んでいます。
創意工夫ができる資質を育てたい
刈谷少年少女発明クラブ 会長の山下博久さんは、
「資源の少ない日本においては、創造力を発揮して物に付加価値をつけていかなければなりません。創意工夫を重ねる資質を持った子どもたちを育てるということを目的に、刈谷少年少女発明クラブは設立されたと聞いています」 と話してくれました。
クラブには現在、小中学生約1,000人が通っています。学年別にコースを設け、子どもたちの力を徐々に積み上げていく育成方法が最大の特徴です。
子どもたちの好奇心をものづくりにつなげる
入り口となるのが、小学1年生を対象とした入門コースです。紙工作を中心に作品を作り、子どもたちの好奇心を刺激します。小学2年生、3年生が対象の基礎コースでは工作の基本となる図面や木工、電気工作の基礎的な技能を身につけます。作品に自分のアイデアを加える工夫をし、ものづくりの醍醐味を味わいます。
参加している子どもたちは、自分の使いやすいように作品をアレンジしたり、オリジナルのパーツを付け加えたりしながら、自分だけの作品を作り上げていました。 小学4年生から6年生を対象とした中級コースではからくり作品作りに取り組みます。自らアイデアを生み出し、それを形にしていく力を徐々に身につけていきます。
未来を生き抜くための創造性を育む
基礎的な力を積み上げた子どもたちは、中学生を対象とした上級コースへと進み、からくりやセンサー、プログラミングを使った、より精度の高いものづくりに挑戦します。自ら課題を見つけ、考え、改善するという、子どもたちが未来を生き抜くための創造性を育みます。
ほかにも、夏休みなどに開催される創意工夫工作教室や2024年に新設されたAIチャレンジコースもあり、充実した環境の中で、子どもたちがものづくりに没頭しています。
子どもたちに話を聞くと、それぞれものづくりの喜びを感じている様子でした。
ものづくりの第一線で活躍してきた指導員
子どもたちを導くのは、主にトヨタ系の企業や教員のOB・OGからなる指導員です。日本のものづくりの第一線で活躍してきたエンジニアから技術を学べるとあって、クラブ員は地元刈谷市だけでなく近隣市町からも通っています。
「小さなことでも、発見してそれを具体的に解決するようなものを作ることで、だんだんと独創性のあるものができてくると思います。クラブではステップごとに教材を用意し、着実に力をつけていけるようにしています」
と山下さんは語ります。
クラブOB・OGへのインタビュー①
50年の歴史の中で、多くの子どもたちがこのクラブでかけがえのない経験をして、巣立っていきました。株式会社デンソーの米山琴美さんもそのひとりです。クラブでの経験で今に生かされていると思うことを聞いてみました。
「一番印象に残っていることは、OM世界大会で優勝できたことです。自分の視野が広がって、世界で活躍するエンジニアになりたいという夢を持つきっかけを与えてもらいました」
クラブOB・OGへのインタビュー②
2017年の全国小中学生プログラミング大会で準グランプリを受賞した、平野正太郎さんもクラブのOBです。
「クラブで学んだことは、ものを作るうえで、『こういうものがあったらいいな』という発想の仕方や、新たなものづくりのための発見が人との関わりの中で得られるんだという気づきです」
クラブOB・OGへのインタビュー③
名古屋市でWebサイトなどを扱う会社を経営する井出基泰さんは、考え方の原点はクラブでの学びにあると言います。
「これからの時代にこそ、ものづくりの考え方を通じて物事を考える力をつけた人が増えていくと、ひいては日本の発展にもつながっていくと思います」
OM世界大会でのW受賞
50周年の節目となる2024年、嬉しいニュースがありました。それがOM世界決勝大会のビークル種目での世界一と、優れた創造性を発揮したチームなどに与えられるラナトラ・フスカ賞のダブル受賞です。
OMとは、与えられた課題に対し、いかに創造的な解決をしたかを競う大会です。刈谷少年少女発明クラブはこの大会に向けた特別訓練コースを設けていて、発想力やプレゼン力、英語力、チームで課題を解決していく力を養っています。クラブが歩んだ日々の積み重ねが、50周年の節目に花開きました。
世界大会に出場してみて
参加したメンバーに話を聞きました。
「大会までたくさん練習してきたので大丈夫だろうと思っていました」
「自分が持っているものをすべて出し切ることができました」
「本番ではすごく楽しかった」「その日のことはすぐに頭にパッと思い浮かんできます」などと話してくれました。
日本の将来を担う人財を育てる
山下会長は、 「節目の年に刈谷少年少女発明クラブの歴史に大きな賞を残すことができました。これからも指導員と職員一同、力を合わせて、子どもたちの創造性育成に頑張って取り組んでいきたいと思います」と、これからの意気込みを語ってくれました。
刈谷少年少女発明クラブは、ものづくりのまち刈谷市を拠点に50年もの月日を積み重ねてきました。ものづくりに親しむ機会を創り、日本の将来を担う人財を輩出するという思いは、今も脈々と受け継がれています。
(取材・撮影:リンドワークス /リライト:石川玲子 2024年6月取材)
刈谷少年少女発明クラブ
住所:愛知県刈谷市司町1丁目2番地 ふれあいプラザゆうきそう内
「シリーズ 新しい時代を生きる」は、キャッチの番組でも放送中!
番組名:特集「地域の今」
地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。
「シリーズ 新しい時代を生きる」
コロナを経た社会、物価の高騰、少子化による人口減少など、様々な課題がある中、乗り越えようと取り組む地域の人たちを取材し、ともに地域の未来を考えます。
詳しくは、KATCH番組紹介ページ・特集「地域の今」をご覧ください。
近所の気になる話題を検索!
検索ボックスに気になるワードを入力して、検索ボタンをポチッ!
【うなぎ】【ラーメン】【スイーツ】などのグルメ情報や、【公園】【イベント】【祭り】などのお出かけ情報も満載♪