都道府県別の生産量が全国3位、そして一人あたりの消費量全国4位である愛知県特産の調味料・みりん。碧南市内だけでもみりんを生産する蔵元が5つもあり、酒販店やスーパーでもみりんのラインナップは豊富です。碧南の本みりんは、酒販店店主やフレンチのシェフも認めています。今回は本物志向や発酵食品人気で注目を集める、碧南市の角谷文治郎商店の本みりんをご紹介します。
日本の本みりんの現状
碧南市にある金原商店・店主の金原弘晃さんは、本みりんの購買層について「贈答品として購入されるのは、50代60代の方が多いのですが、30代40代の自炊する方々が『ちょっといいものを使いたい』と自宅用に買って行かれることも多いです」と話します。
同じく碧南市にある角谷文治郎商店では、もち米と米麹に焼酎を加え、熟成させて作る伝統的な製法にこだわり、三州三河みりんを作り続けています。角谷文治郎商店代表取締役の角谷利夫さんは、今も時折、もろみや麹の状態を確認する現場第一主義です。
本みりんの良さを理解してほしい
角谷社長は、みりんの現状について次のように話してくれました。
「一升の米を使ってできる本みりんは、一升なんです。たくさんの米を使って作られる本みりんは、一部の高級割烹料亭でしか使われない贅沢品のようになってしまい、気がついたら、米よりもはるかに多いブドウ糖と水あめで増量されたものも出回るようになったんです」「100人に一人でも、この伝統的な三河みりんの良さを理解してもらえる人がいるのなら、その一人のお客様に喜んでいただけるみりん作りをしていこうと考えてやっています」
本みりん、みりん風・みりんタイプ調味料
本みりんにはアルコール分がおよそ14%含まれているため、酒税がかかります。また本みりんの中には、焼酎の代わりに醸造アルコールを使い、糖分を加えて熟成期間を短くした製品も含まれます。
それに対し、アルコール分が1%以下のみりん風調味料、アルコールに米麹や糖分、調味料などをブレンドし、塩を添加したみりんタイプ調味料も売られています。これらはそのまま飲めないということで酒税はかかりません。角谷文治郎商店では、糖分を添加しない伝統的製法の本みりんをPRしています。
本みりんを世界に向けて輸出
角谷文治郎商店では、仕込んで3か月ほどでもろみを絞り、さらにタンクで寝かせ、1年以上かけて作る伝統的な製法にこだわり、輸出にも積極的に取り組んでいます。マネージャーの角谷文子さんに話をうかがいました。
「エリアとしては北米、そしてヨーロッパに向けて輸出しています。海外の日本料理店で使われていたり、例えばフランスでは現地のフランス料理のレストランでも使われ、ショコラトリーでは本みりんを使ったボンボンショコラも販売されたりしております」
さらなる広報活動
輸出は香港・台湾・シンガポール・タイといったアジアの国々にも広がっているそうです。1985年に発売した、有機栽培の国産米だけを使った有機本格仕込み三河味醂は、今では各国で高い評価を受けています。
2019年には、社内にキッチンスタジオを整備し、プロも交えて本みりんを使ったレシピ開発を行い、積極的に情報を発信しています。
大ナゴヤツアーズ
角谷文治郎商店ではこの日、大ナゴヤツアーズが開催されていました。これは名古屋のまちを中心とした東海エリアのまちの魅力を、体験や見学することで楽しめるプログラムです。まずは本みりんのレクチャーを受け、蔵見学に出発しました。参加者は蔵見学から戻ると、本みりんの試飲と、本みりんを半分ほどに煮詰めたシロップをかけたフレンチトーストを試食しました。
ツアー参加者の感想
ツアーに参加した人に、本みりんに触れた感想をうかがいました。
「普段住んでいる地域では売っていないため使ったことがなかったのですが、今回すごくおいしかったので、これからはお取り寄せして使いたいと思いました」「まずは消費者が商品を知ることが大切ですね。メーカーさんがどれだけ頑張っても、やっぱり買う人がいないと残っていかないですから、こうやって私たちが知る機会があるというのは大切なことだと改めて思いました」
料理のプロの間でも広まる
力を入れているもうひとつの取り組みが、料理のプロたちに本みりんを知ってもらうことです。この日は常滑市でこだわりの地元食材だけを使ったフレンチレストラン「Le coeuryuzu」のオーナーシェフ 渡邊大佑さんが来社しました。常滑出身のパティシエに、角谷文治郎商店の本みりんを紹介するため、蔵見学に訪れたのです。
渡邊さんは知り合いの料理人やパティシエで興味がある人には、角谷文治郎商店や生産農家をできるだけ実際に訪れて案内しているのだそうです。
よい物を知ってもらいたい
渡邊さんに、自身が使う食材や調味料にどのような思いを持っているのか聞いてみました。
「たくさんのところで使ってもらって広がっていくことで、生産者だけではなく地域にもよい影響が広がっていくのではないかと思います。周りのレストランでも角谷文治郎商店のみりんを使っているところは多いので、今度は一般のお客さんにも、大切に作られている美味しい調味料を知って見直してもらいたいですね」
本みりんの新たな居場所を開拓する
海外からも注目を集め、プロからの信頼も厚い、角谷文治郎商店の本みりん。今後の展開を角谷社長に聞きました。「本格みりんに特化してそれを極めるということに集中しております。ただ、極めていった先が細くなったのでは経営が揺らいでしまいます。今やフレンチの世界では、みりんは特別な調味料ではなくなるほど浸透し、スイーツやベーカリーの世界でも随分とお客様が増えてきております。そうやって居場所を求めていきたいと思います」
(取材・撮影:オフィスげんぞう/リライト:石川玲子/2024年5月取材)
角谷文治郎商店
住所:〒447-0843 愛知県碧南市西浜町6-3
「シリーズ 新しい時代を生きる」は、キャッチの番組でも放送中!
番組名:特集「地域の今」
地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。
「シリーズ 新しい時代を生きる」
コロナを経た社会、物価の高騰、少子化による人口減少など、様々な課題がある中、乗り越えようと取り組む地域の人たちを取材し、ともに地域の未来を考えます。
詳しくは、KATCH番組紹介ページ・特集「地域の今」をご覧ください。
近所の気になる話題を検索!
検索ボックスに気になるワードを入力して、検索ボタンをポチッ!
【うなぎ】【ラーメン】【スイーツ】などのグルメ情報や、【公園】【イベント】【祭り】などのお出かけ情報も満載♪