刈谷市野田町にある、日進精機で開発されたスタイリッシュなペッパーミル。自動車部品を製造している社員らにより、部品を製造する時に出るアルミの端材をアップサイクルして作られています。これまで培ってきた技術や設備を生かしながら、廃棄していた端材を新しい商品に生まれ変わらせる日進精機の取り組みに密着しました。
端材を新たな製品に
70年以上の歴史を持つ自動車部品の製造会社の日進精機。自動車部品の中でもオートマチックトランスミッションに使われる高精度な部品を製造しています。鉄やアルミを、切削と研磨によってミクロン単位で高精度に加工し、毎日15万個ほどの部品を出荷しています。部品を製造する中で、どうしても出てしまう端材。生産技術部の社員たちはこの毎月1トン以上出るアルミの端材に注目しました。
生産技術部の山下雄也さんは、ペッパーミル誕生のきっかけについて「端材を有効に活用できないかと考えて、思いつきました」と話します。
自動車業界のEV化とその影響
ペッパーミル誕生の裏側には、ガソリン車から電気自動車への過渡期にある、自動車産業が抱える深刻な問題があります。代表取締役社長 中村智さんにお話を聞きました。「製造している自動車部品の一部も電気自動車では不要となるため、EV化されると仕事が減っていく」
西三河には、自動車部品製造を中心とした中小企業が多く、西三河の工業が衰退すれば、高度な技術が失われてしまう可能性があります。中村社長は、「高価な設備や培ってきた技術を失うのはもったいない。後世に残すためにも、新たなアイデアを募り、新しい事業を始めた」と話します。
持っている技術と新しい挑戦を掛け合わせる
会社の危機に多くの社員がアイデアを出し合い、商品化したのがペッパーミルでした。開発したのは、生産技術部の部長・小瀬良和弘さん、山下雄也さん、浅井亮太さんです。
近年、様々な企業が異業種へ参入していますが、日進精機でも2022年秋から農業へのチャレンジとして、コショウの栽培を始めていました。「コロナ禍で外食に行く機会が少なくなり、家庭で調理をすることが増えたので、調味料になるものを作れないかと、スパイスに着目しました」と小瀬良さんは当時を振り返ります。
このコショウの栽培とアルミの端材を結びつけたのが、ペッパーミルだったのです。
開発の苦労を乗り越えて
開発までの苦労について、生産技術部の浅井さんは、「手のひらサイズに収まるように、コンパクトにしたのが一番工夫したところです。通常であればこすり合わせてコショウを挽きますが、手のひらサイズにするにあたって、ノック式でどうコショウを潰して出すかというところが一番難しかったです」と話します。
通常業務の合間や就業後の時間を利用し、およそ1年かけて開発し、2023年12月に完成しました。
こだわりが詰まったペッパーミル
こだわったポイントについて山下さんは、「元のアルミ材のイメージを生かしたデザインにしています。また普段作っているのが小物の高精度な製品ですので、小型であることにもこだわりました」と紹介してくれました。
コショウだけでなく、岩塩のミルとしても利用できます。また、長さ9センチ、直径2センチのサイズは携帯性に優れているため、アウトドアはもちろん、外食の時など、普段から持ち歩くこともできます。
会社の未来につなぐ
今後、日進精機では新しい分野への参入も計画しています。山下さんは、「新しい仕事を獲得するためにも、知名度を上げていく必要があります。こういう特殊な、面白い商品もやっているというところも前面に出していきたいと思っています」と、ペッパーミルに込めた思いを語ってくれました。
最後に、今後の展望について中村社長は、「私たちの会社は、従業員の平均年齢37歳という若さ溢れる会社です。この若さを借りて、工業のまち西三河を元気にするという目標に向かって、新しいものづくりへのチャレンジを続けたいと思います」と話していました。
(取材・撮影:映像舎/リライト:石川玲子 2024年4月取材)
日進精機株式会社
日進精機株式会社
住所:愛知県刈谷市野田町新田25番地
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