ビジネスやライフスタイルが多様化している現代。地域の事業者も悩みや不安を抱えています。そのような事業者らを支援するため、2024年4月、愛知県の西尾駅高架下に西尾未来共創拠点「ニコラボ」がオープンしました。ニコラボは、西尾市が運営する新しい拠点です。
オープンから1か月以上たったニコラボが、西尾市でどのような存在となり新しい風をもたらしていくのか取材しました。
市が運営するビジネス支援拠点「ニコラボ」
西尾未来共創拠点ニコラボは、西尾市が2021年から構想し、2024年4月にオープンした無料の相談窓口です。西尾市内の事業者や起業したい人を対象に、市が運営しています。事業者たちは、経営や起業などに関する悩みを気軽に相談することができます。
ニコラボには、中小企業診断士や公認会計士、税理士といった専門アドバイザーなどが在籍しているため、事業者が抱える悩みに応じて各分野の専門家に相談に乗ってもらうことができます。
市内事業者のスタートを手助け
この日は、2024年3月に市内で創業した、アキヤモリ代表の永吉篤弥さんが相談に来ていました。永吉さんが代表を務めるアキヤモリでは、空き家の片付けや遺品整理などを事業としています。創業して間もないため、どのように認知度をあげていけばよいか相談していました。ニコラボのメンバーが会社の経営資源をヒアリングしながら一緒に考えていきます。
永吉さんは、「創業したてで、まだ何もわからないことだらけです。ニコラボに来るといろいろなヒントをもらえるので助かっています」と話してくれました。
ニコラボに寄せられる相談
自動車部品などの製造業が盛んな地域である西尾市には、約7000の事業所があります。 地元で生み出すものが多い一方、市内での消費に結びついていない現状があります。オープンして1か月経ったニコラボには、多種多様な業種の事業者から相談があるといいますが、中でも、個人に対して商品やサービスを提供する、いわゆるBtoC向けの事業に関する相談が多いそうです。
西尾市内のビジネスの現状
ニコラボに常駐し、様々な相談を受けるチーフコーディネーターの中村彰収さんは、市内のビジネスの現状について次のように話します。
「製造業の、『モノを生み出す』というところは、非常に大きな役割の一つです。一方で、商業は一般のお客さんが消費するというところが大きなポイントだと考えます。一般のお客さんが関心を持つことができるコンテンツをどう確立するか。その部分がなかなか西尾市の中で本領を発揮できていないんだろうと思いますね」
ニコラボの伴走型支援
ニコラボでは、事業者に寄り添った伴走型支援を大切にしています。この日、中村さんとニコラボ・西尾市商工振興課の小林直文さんは、西尾市巨海町にある「愛楽農園はいぼーなす」のファーマーズラボを訪問しました。
愛楽農園はいぼーなすは、こだわりの野菜や果物などを生産しており、最近では、自社の農作物を使ってドライチップやジャムなどの加工品にも力をいれています。さらに、新たな分野に挑戦しようと新商品の開発に取り組み、ニコラボに相談しました。
データに基づいた事業者目線のアドバイス
愛楽農園はいぼーなす代表・三上佳之さんに、なぜ新商品を開発したいのか聞いてみると、「農業分野の可能性を広げ、挑戦していきたいという思いから始めています」と教えてくれました。当初、自社ですでに商品となっているポップコーンの豆から、加工品として味のついたポップコーンを開発しようとしていたといいます。
その話を聞いたニコラボのメンバーは、訪問までに実際に自分たちでポップコーンの試作や、他社の調査をしてきました。そのデータをもとに、中村さんは他社との差別化を図るほうが良いと三上さんに的確なアドバイスをしていました。
事業者と共に作り上げる
会話を重ねるにつれて、はいぼーなすが元々持っている、野菜や果物を乾燥させるドライ技術をいかした、「だし」の開発に路線変更することになりました。ニコラボのメンバーも一緒に試作を重ねます。この日の試作品を試飲し、しっかりと素材の風味が残っただしに手ごたえを感じたようです。
「自分の枠の中にはない、違う目線からのアドバイスをもらえるので、非常に新鮮味があります。一緒に試作をしてもらいながら、ワクワク感を感じられてとても楽しくて。本当によかったなと思います」と、三上さんは話してくれました。
事業に対する考え方に変化が
一色町で造園業を営む「作庭 嘉エ門」の代表取締役・都築孝紀さんもニコラボを利用しています。都築さんが知り合いの紹介でニコラボを知ったときには特に悩んでいることもなく、相談する気はなかったといいます。
しかし、興味本位で利用したところ、自身の事業に対する考え方に変化が生まれたそうです。「自分の頭の中で言語化できていなかったことが、チーフコーディネーターの中村さんとの対話の中で明確になっていきました」
潜在的な個性やポテンシャルを引き出す
「自分の中で今までにない選択肢が増えた、という感じですね」と話す都築さんは、自分の弱点など、今まで考えてこなかったことを考えるようになったといいます。
今後、ニコラボのサポートによって、事業者自身も気づかなかった個性やポテンシャルが引き出されていくのかもしれません。
中心市街地の活性化とビジネス支援
西尾市が運営するニコラボは今後、中心市街地を活性化するために市がすでに取り組んでいる、空き店舗での出店のサポートなどの役割も担っていきます。
小林さんに話を聞きました。「ニコラボの目的はビジネス支援だけではなく、中心市街地活性化という側面もありますので、例えば創業・起業の相談に来た方がまちなかで出店したいという希望がありましたら、空き店舗の相談もお受けできます。中心市街地の活性化とビジネス支援という二面があるところが、私たちに相談してもらうメリットではないかと思います」
イノベーションを起こす拠点へ
最後に、ニコラボが目指す姿について中村さんにうかがいました。「立ち上がったばかりですので、まずはどういう部分が相談者やお客さんにとって、ありたい姿、あってほしい姿なのかということをこれから見出していく必要があると思います。『西尾未来共創拠点』という名前にもあらわれていますが、共創=イノベーションを起こしていく拠点でありたいです」
(取材・撮影:小林伊織 /リライト:石川玲子 2024年5月取材)
西尾未来共創拠点 ニコラボ
住所:西尾市住吉町3丁目36番地1 (名鉄西尾駅高架下)
営業時間:平日 9:00~17:00 (土日祝日・年末年始を除く)
公式サイト
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