環境や人にやさしい暮らしのアイデアがぎっしりと詰まったフリーペーパー「エシカル、ここから」は、かわいらしいイラストと、カラフルな色使いが目を引く冊子です。親子2人が始めたフリーペーパーは今、全国各地に広がっています。一人ひとりの考え方や行動変容を促し、身近なことから世界を変えてゆく。親子の挑戦を見つめます。
楽しい内容の紙面づくりを心掛けている
フリーランスのグラフィックデザイナーとして活動する傍ら「エシカル、ここから」の制作に打ち込んでいるのは、愛知県安城市に住む、眞坂藍さんです。「何か問題があって、それを解決するためにどうするかというと、どうしても暗い話が多くなってしまいます。楽しい内容かな、って思ってもらえるように考えて作っています」と、紙面の制作にあたって心掛けていることを教えてくれました。
親子で楽しく読めるように
藍さんは、「エシカル、ここから」を過去4年間で16冊発行してきました。「エシカル」とは「環境保全」や「社会貢献」を表す際に使われる言葉です。カラフルな紙面には、環境や人に優しい暮らしをするためのアイデアがぎっしり詰め込まれています。
さらに、冊子はマジック折りを施し、裏表で読める仕掛けです。片面は大人向け、もう片面は子ども向けの内容になっていて、親子で楽しく読めるように作られています。評判について聞くと、「押し付けではなく、問いかけになっているのがいい、と言われます」と藍さんは話してくれました。
日々の暮らしでの実践
紙面に書かれる情報の多くは、藍さん自身が暮らしの中で実践していることです。マンションのベランダに備えられていたのはキエーロ。黒土と微生物の力でごみを処理する方法で、集合住宅でも取り組みやすいものです。またキッチンで使う道具にも、細やかな工夫がありました。コーヒーフィルターは金属製のものを使い、食品を保存する袋は繰り返し使えるものを選んでいます。
こうした一つひとつを見直すだけでも、ごみの量を格段に減らすことができたそうです。「自分自身もやりながら勉強して、それを紙面で伝えるようにしています」
持続可能な開発目標 SDGs 日本は
国連サミットで採択された持続可能な開発目標であるSDGsには、2030年までに達成すべき17の目標があります。これを達成するために、社会全体で意識を高めることが大切です。しかし、日本の達成度ランキングは、2017年の11位をピークに低下しています。昨年のデータでは初の20位台に転落するなど、課題が多く残っています。
世界との意識の差を目の当たりにして
藍さんが日本と世界との差に直面したのは、フランスで開かれた広告のフェスティバルに参加した際の旅行でのことでした。そこで、意識の違いに衝撃を受けたといいます。
「スーパーでは量り売りが主流だったり、オーガニック商品が多く取り扱われていたり、レジ袋は販売もされていませんでした。日常的に使うスーパーの中だけでも、それだけ違いがありました」その体験から、自分でできることから取り組まなければいけない、と藍さんは感じたといいます。
娘の熱意に押されて
藍さんの理解者となったのは、岐阜県美濃加茂市に住む、母の眞坂治子さんです。娘の熱意に押される形で協力し、エシカラという名で団体を設立しました。治子さんが文章、藍さんが紙面のデザインや構成を担う形で分担しながら、2020年に自費出版でフリーペーパーの発行を開始し、現在は全国220か所以上、5,500部以上を配布するまでに至っています。
娘、藍さんの熱意について治子さんは、「元々、何かには集中する子だったんですけど、ここまでの情熱を感じたのは初めてだったんです」と話してくれました。
まずは知るきっかけに
二人はどのような思いでエシカラの活動に取り組んでいるのでしょうか。治子さんにうかがいました。
「SDGsっていうと私たちの世代は『アルファベットが並んでいて意味が分からない』と思う人もいると思います。私もそうだったんですけど、苦手意識があるとその先に進めなくなりがちですが、何がやれるのかを知らないだけで、誰もがやれることなんです」藍さんも、「冊子を見て、そこからエシカルを始めてくれる人がちょっとずつ増えていったらいいなと思います」と語ってくれました。
活動を応援してくれる人たちの存在
2023年8月に安城市内に引っ越してきた藍さんは、この地域での活動を徐々に広げています。この日は、冊子を設置してくれている刈谷市宝町のワクラバコーヒーに冊子を届けに向かいました。エシカラのフリーペーパーは店内の一角に設置されています。
ワクラバコーヒー代表の河野大輔さんは、藍さんたちの活動の理解者です。お客さんたちの反応について、「新しい号が出るとすぐ手に取って開いてくれて、お子さんに読んで聞かせている方もいます」と教えてくれました。「エシカル、ここから」の設置場所をさらに増やしていけるとお店としても何かしら協力できるのではと、応援してくれています。
安城市との連携
安城市でも地域と連携した試みが始まっています。2023年4月上旬、安城市民交流センターで行われたのは、藍さんが講師を務める講座の打ち合わせです。講座のテーマは、施設や会社などで大量に廃棄されている「ワンプ紙」です。普段は紙面を通じてメッセージを伝える藍さんですが講座で講師を務めるのは初めての経験です。再利用に前向きに取り組んでもらうためにどんな言葉で伝えるか、打ち合わせにも熱が入ります。
地球に優しく社会に優しい安城市を目指して
身近なSDGsをテーマに講座を企画したことについて、安城市民交流センターの榊原康子さんにお話をうかがいました。
「まずは身近なことから、やれることはこんなにあるんだよということを眞坂さんたちと一緒に発信していきたいと思っています。地球に優しく社会に優しい安城市になっていくことを目指したいです」
共創パートナーとしてSDGs啓発を狙う
SDGs未来都市にも選定されている安城市は、企業・団体などと連携して進めていく「あんじょうSDGs共創パートナー制度」を設けており、2024年、エシカラも登録団体に仲間入りしました。
安城市企画政策課の橋本美香子さんにお話を聞きました。「SDGsについてまず知ってもらうために、啓発は重要です。エシカラさんのフリーペーパーは、デザイン性が高く子どもにもわかりやすく伝えてくださいます。このような活動をしている方が安城市内にいることは、地域としても幸せなことだと思います」
身近なことから世界を変えるために行動する
眞坂さん親子は、次の紙面づくりに取り掛かっています。この日はボランティアで手伝ってくれている友人も交え、ウェブ会議が行われました。治子さんからは「エアコンを適切に使って快適な家にする」という意見が出され、エシカルな住宅をテーマに紙面を作るアイデアについて3人で話し合いました。
一人ひとりの考え方や行動を促し、身近なことから世界を変えてゆく。親子の挑戦は続きます。
(取材・撮影:リンドワークス/リライト:石川玲子 2024年4月取材)
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