2024年3月10日、愛知県碧南市の市制75周年の記念事業の一環として、「碧南きづなぁぐ」が碧南市の明石公園で行われました。この催しは、「活気あるまち」をつくろうと、市民活動団体・ボランティア団体が集まり、その活動内容を多くの人に知ってもらうためのイベントです。
今回のイベントには、これまで取材してきた地域の日本語教室や、外国人コミュニティーの多くの外国人も参加しました。ひとりの市民として共に歩んでいる彼らの姿に注目しました。
多くの市民がつながる「碧南きづなぁぐ」
今回が第1回となるこのイベントには、市内で活動する19の団体、そして9つの飲食店が出店しました。 訪れた市民たちは、ステージで披露されるダンスや歌を楽しんだり、家族で楽しめるゲームに参加したりなど、イベントを楽しみました。
「このイベントには市民がつながることで、活気あるまちづくりをしたいという思いが込められています。碧南市だけでも40ヵ国以上の国籍の方がいますが、国籍・年齢・性別を問わずいろいろな方がつながってまちづくりができたらと思っています。」と、碧南きづなぁぐ実行委員長 荒川祥子さんは話しています。
若者たちのサポートをする「マミー」
碧南市にあるインドネシア人の集まりの中心となっているのは、デウィ・シンタさんです。
デウィさんは、およそ20年前に来日し、現在は碧南市栄町にあるインドネシア食品店「チョイ・マート」とインドネシア料理店「マリ・チョイ」を経営しています。
彼女は普段から、家族と離れ来日した外国人のため、引っ越しの手伝いから、マイナンバーなどの書類申請、仕事や食事のことまで面倒をみるなどお母さんのように接してくれるので、周りから「マミー」と呼ばれています。
つながりを持つことで、明るく過ごす
デウィさんは、この地域に住むインドネシア人たちが、より早く地域社会に馴染み、元気で明るく過ごせるように、フットサルやバンドを結成するなど、積極的に集まりを作っています。
デウィさんは、このような集まりがあることで、情報交換やリフレッシュができ、働いているこの地域でより前向きに頑張ることができると考えています。
「彼らには、毎日の仕事でのストレスや大変さといった悩みの話し相手がいないじゃないですか。でも、ここに来たら友だちがいっぱいいるでしょ」
日本の生活を楽しんでほしい
イベントでは、デウィさんの提案で結成したインドネシア人バンドが歌を披露しました。インドネシア語と日本語で歌う珍しい外国人バンドの姿に、公園を訪れた多くの人が足を止めて歌に耳を傾けました。彼らは来日前から音楽が好きだったものの、日本で働き始めて忙しくなり、音楽からは離れていました。しかし、デウィさんが背中を押してくれてバンドを結成しました。演奏を終えたバンドのメンバーは、「緊張してうまくいきませんでした」と言いながらも、嬉しそうにインタビューに答えてくれました。
ダンスを披露するきぬうら学院の生徒たち
そして、ステージでダンスを踊ったのは、碧南市中部公民館で行われている日本語教室、きぬうら学院です。ベトナムやネパール、インドネシアなど、国籍も年齢も、日本に来た時期も様々なメンバーに日本語を教えている、きぬうら学院代表の神谷みどりさんも一生懸命踊りました。神谷さんが日本語を教えるのも、イベントに参加するのも、外国人の生徒たちに、日本の生活を楽しんでほしいという思いからです。
「うちの教室にはダンスの好きな子がたくさんいて、とにかく楽しんでほしいと思って出演しました」と神谷さん。
きぬうら学院 神谷みどりさん
その後、会場で、およそ1年半前に取材したニケントゥリ アンジャニさんに再会しました。当時のニケンさんは高校の受験を目指し、きぬうら学院で日本語を学んでいました。その時はまだ日本語で話すのが難しかったニケンさんでしたが、勉強を続け、碧南高校に合格したそうです。
神谷さんに、日本語教室に通う子どもたちの成長を感じるかと聞いたところ、「毎日のように起こる目の前の問題を解決するだけで精一杯」と話していました。しかし、神谷さんは、生徒たちの高校の合格など一人ひとりの成長を誰よりも喜んでいます。
課題を解決しながら共に進む
地域に住む外国人たちとつくる新しい時代のためには、神谷さんの言葉のように、解決すべき課題が山積みです。しかし、地域にはデウィさんや神谷さんのように、寄り添い、共に生きようとする人たちがいます。これらの活動が続いていくことが、日本人と外国人がお互い助け合う地域につながっていくはずです。
(取材・撮影:キム セジュン /文:石川玲子 2024年1月取材)
インドネシア料理店 「MARI COY(マリ・チョイ)」
住所:愛知県碧南市栄町4-1
080-4966-9991
きぬうら学院(碧南市中部公民館)
住所:愛知県碧南市向陽町3丁目48
開館時間:水曜~金曜 15:00~17:00
メール:maimu0810@yahoo.co.jp
きぬうら学院HP
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