愛知県西尾市東幡豆町にオープンした「suzumiso別邸」では、味噌汁や味噌カツといった地元味噌の料理が味わえると評判を呼んでいます。この店を手掛ける「すずみそ醸造場」は1950年の創業以来、高品質の豆味噌を製造してきました。
豆味噌を後世につなげ、その魅力を伝えようと奮闘する、すずみそ醸造場の取り組みを紹介します。
「すずみそ醸造場」
西尾市の名鉄こどもの国駅すぐ近くにある「すずみそ醸造場」は、創業以来70年以上にわたって手づくり味噌を製造してきました。製造しているのは、豆麹と塩からできる「豆味噌」です。米や麦を混ぜない大豆100%の豆味噌は、愛知県を中心に東海地方で生産され、その見た目から「赤味噌」と呼ばれることもあります。
この道40年以上の3代目・鈴木茂さんは、家業を継ぎ、伝統の製造方法を受け継いできました。現在は4代目となる娘夫婦の石原正康さんと石原寿理さんを含むおよそ10人で製造を続けています。
味噌の仕込み
すずみそでは、気温が低い10月から6月頃に、味噌の仕込みを行います。この日は、蒸した大豆を大きな窯から出し、こうじ室へ持ち込む作業を行っていました。
大豆を手早くこうじ室に運び、種こうじをつけ、36度に温度を保った状態でこうじ菌の繁殖を促します。その後、水と塩を混ぜ合わせて桶に詰め、およそ15ヶ月かけて自然熟成させます。
無添加・手づくりにこだわった豆味噌
すずみそ醸造場3代目鈴木茂さんに、こだわりをうかがいました。
「無添加で、できるだけ機械を使わずに手づくりしています。人工的に温度を変えたり添加物によって発酵を促進させたりするのではなく、夏は発酵が活発になって冬は落ち着いてという風に自然の気候の中でつくると、醸造品は一番おいしいものができると思っています。」
4代目女将の思い
3代目茂さんの娘、寿理さんと夫の正康さんは、15年ほど前にこの道へ入りました。
「独身の頃、東京で働いていた時に赤味噌が売っていなかったんです。その時に赤味噌ってすごくおいしくて、貴重で、尊いものなんだと改めて気づかされて、いつかは跡を継ぎたいという思いはありました」と、寿理さんは当時のことを語ってくれました。寿理さんひとりでは難しい問題もあったそうですが、夫の正康さんと協力して、すずみその味を継承しています。
味噌を生産する事業所の現状
日本の伝統的な調味料である味噌ですが、円安などの影響を受けて材料の大豆価格が高騰、また後継者不足なども問題になっています。生産する事業所は、この20年で半数近く減少し、厳しい状況に置かれています。
「大豆をトン単位で買い付けますから、原材料を買うのも大変です。今まで味噌だけをつくって販売してきましたが、娘や息子たちが、これからはそれだけではいけないと。味噌から発展させて、加工品や飲食店をやっていった方がいいということで、娘たちが頑張っているんです」と、茂さんは話してくれました。
「suzumiso別邸」オープン
寿理さんは、「新しい売り方をしていかないといけないと考えた時に、蔵を父と夫に任せて、私と母は味噌を使った料理を提供することで味噌のおいしさを知っていただけたらと思いました」と、飲食店を開くことを決めたのだそうです。
こうして「suzumiso別邸」はオープン。50年前に愛知こどもの国が開園したときからすずみそが開いていた店があった場所で、25年ほど前から営業していませんでしたが、残された建物をリノベーションする形で、すずみその新たな挑戦がはじまりました。
おいしくて楽しいお店に
肉みそを使ったおにぎりや、味噌汁、味噌カツなど、地元食材を取り入れながら、すずみそを堪能できるメニューを揃えています。みそを使ったケーキも開発しました。店内は味噌づくりに使う樽や、味噌の熟成が分かる展示があり、蔵にいるかのような雰囲気を演出しています。
寿理さんは、自身が子どもの頃に営業していた、すずみそのうどん店を思い出すと言います。「温かい食事と、人がいっぱい集まってみんなでご飯を食べておいしくて楽しい、というのをまた再現したいです。愛知こどもの国の目の前なので、たくさんの人に喜んでいただけるように頑張ります」
お客さんの反応
suzumiso別邸で食事をしたお客さんに話を聞くと、「自分では味噌汁以外であまり味噌を使ったことがなかったが、みそかつの味が濃厚でおいしかったです」「こういうおしゃれな空間で外の景色を見ながら味噌を使った料理を楽しむことで、味噌文化が広まっていくといいと思います」といった声があがりました。
100年続く蔵を目指して
調理を担当する、3代目茂さんの妻・みゆきさんも強い思いを抱いています。「以前から、すずみそを使ったごはんを食べて知っていただける店ができたらということを娘と夢に描いてきました。その夢が叶って、嬉しくてやりがいがあって楽しいです。味噌のテーマパークとまではいきませんが、すずみそを感じていただけるような場所になればと思います。目標は創業100年なので、つなげていきたいと思います」と力強く語ってくれました。
豆味噌や地域の魅力を伝えたい
最後に、寿理さんに今後の展望を教えてもらいました。
「ゆくゆくは飲食だけではなく体験型のイベントや施設をつくっていきたいと思っています。海と山と自然に囲まれたこの素晴らしい土地で、地域の人の良さもたくさん伝わると嬉しいです」
(取材:加藤裕子/リライト:石川玲子 2024年5月取材)
すずみそ醸造場
住所:愛知県西尾市東幡豆町御堂前61-1
公式HP
suzumiso別邸
住所:西尾市東幡豆町奥ノ入28-1
営業時間:11:00〜16:00
営業日:金曜・土曜・日曜
電話:0563-77-5146
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