重度の知的障がいを持つ人が通う、愛知県西尾市の生活介護事業所「エディサービス合同会社」。この事業所の利用者が、災害時にも役立つという、古新聞をリサイクルしたペーパーログを製作しています。
今回は障がいを持つ人の日々の作業を通して、リサイクル、そして持続可能な社会を目指す、エディサービスの活動を紹介します。
エディサービス利用者がつくるペーパーログ
現在エディサービスでは20代の利用者7人が、平日の朝9時から夕方5時まで過ごしています。利用者たちは、スタッフから必要な支援を受けながら、ペットボトルのリサイクル作業や作品制作をはじめとする様々な活動を行っています。
新型コロナの影響で、受注していた自動車部品の組み付けなどがなくなり、他にできることはないかと考え、たどり着いたのが、古新聞をリサイクルする、ペーパーログでした。
注目される紙の薪・ペーパーログ
ペーパーログは、古新聞を細かくちぎって、水で溶かし、型で固めて乾燥させて完成します。ペーパーログに加工すると、燃焼時間は30分以上になります。
エディサービス合同会社の豊山かおりさんに話を聞きました。
「捨ててしまうとゴミになるものもまた使える形にしていくということで、SDGsとしてもいいのではないかと思い、取り組んでいます」
バーベキューや薪ストーブの燃料として適しているペーパーログは、災害時の燃料として、また、コロナ禍で、密にならないレジャーとしてブームになったキャンプでも、薪の代わりとなる燃料として注目されました。
古新聞をリサイクルしてつくる
ペーパーログの材料は、古新聞と水だけです。道具は、新聞紙を溶かすための入れ物と、薪の形に成形するためのケースを用意します。エディサービスでは、太巻き寿司用の型を使っています。
最初に古新聞を手で小さくちぎっていきます。なるべく小さくちぎるのがコツだと言います。豊山さんは作業の様子について、「新聞をちぎるという作業が好きな利用者さんが多いので、皆さん集中して黙々と作業しています」と話してくれました。
ペーパーログの作り方
次に、ちぎった新聞紙を水、またはお湯に浸し、しっかり水を含んでどろどろになるまで手作業でこねます。紙の繊維を細かくすることで形が整いやすくなるだけでなく、インクの臭いも減り、じっくり炭のように燃える質の高いペーパーログになるのだそうです。
1時間ほどかけてこねたものを型に入れ、余分な水分を抜きます。手作業で2回圧縮し、最後は並べた型の上に板を乗せ、その上に乗り全体重をかけて、水分を抜きます。
薪の形に整えられたペーパーログは、およそ1週間天日干しで乾燥させて完成です。
これから地域に広めたい
「入れる新聞紙の量や圧縮具合によって、質が全然違ってくるので、今のこの形にたどり着くまで結構試行錯誤しました」と話す豊山さん。納得のいくペーパーログができるまで、およそ1か月かかったそうです。
少しでも多くの人に使ってもらいたいと、現在は無料で配布していますが、広く知れ渡ってはいないと言います。
「これから、愛知こどもの国など、この地域でも使ってもらえるようにしたいと考えています」
愛知こどもの国で試してみると…
そこで、愛知こどもの国でエディサービスのペーパーログを試してもらうことに。
愛知こどもの国にあるキャンプ場は、連休や長期休暇には多くの家族連れで賑わいます。様々な薪や炭を扱ってきたこの施設で、愛知こどもの国の職員、坂部愛美さんにペーパーログを使ってもらいました。坂部さんは、初めて触れたペーパーログの軽さに驚いた様子です。実際に火をつけて、燃え具合を確かめます。
「紙なので大きく火が出るのかと思いましたが、炭のようにじわじわと燃えて火持ちがよさそうですね」
SDGsを学ぶには良い教材に
愛知こどもの国のキャンプ場は、小中学校など学校単位での利用も多くあると、坂部さんは話します。
「軽くて扱いやすく、SDGsでもあり、火をつける体験にもなる。ペーパーログは色々な要素が含まれていて、子どもたちの学習にとてもいいと思います」
ペーパーログは、子どもたちがリサイクルを学ぶ良い教材にもなりそうです。
これからも継続させたい
最後に、エディサービスの豊山さんに、これからペーパーログ作りをどう発展させていきたいか伺いました。
「今後もSDGsを意識しながら、作っている利用者さんの喜びにつながるようにやっていきたいと思います。利用者さんは自分が作ったものを、誰かが使ってくれるということが励みになりますので、より多くの人にペーパーログを知ってもらい、将来的には高くない値段での販売につなげたいと思っています。これからも継続していきたいです」
(取材・撮影:シークラウド映像舎 /文:石川玲子 2024年3月取材)
エディサービス合同会社
西尾市一色町で生活介護事業所などを行っている。
エディサービス合同会社 公式サイト
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