碧南市の南部にある、JERA碧南火力発電所。発電所の燃料をこれまでの石炭から、燃やしてもCO2を一切排出しないアンモニアにかえる「アンモニア転換」と呼ばれる世界初のプロジェクトの実証事業が始まります。
CO2の排出ゼロの火力発電所をつくる、碧南火力発電所の取り組みを取材しました。
日本最大のJERA碧南火力発電所
JERA碧南火力発電所は碧南市の南部にある発電所で、1991年10月に1号機が運転を開始し、2002年には5号機が完成、運転をはじめました。
燃料は石炭で、最大440万キロワットもの電力を生み出し、この地域をはじめ、中部エリアに電力を供給しています。これは石炭を燃料とする発電所の中では日本では最大、世界でも最大級の大きさです。
発電の仕組み
発電の方法は、石炭を微粉炭機という機械を使って小麦粉と同じくらい細かくします。それをボイラにあるバーナーで燃やし、超高圧、高温の蒸気を作って、タービンを1分間に3600回転もまわし、発電をしています。
発電所では、石炭を燃やすと発生する排ガスの中の「窒素酸化物」や「硫黄酸化物」などの大気汚染原因物質を専用の装置を使って除去しています。国の基準より厳しい独自の基準を設け、処理したのち煙突から排出しています。
二酸化炭素を出さない発電
しかし、そういった装置でも取り除けないものが二酸化炭素(CO2)です。そこで、注目したのが「アンモニア」。
アンモニアは燃やしてもCO2を出しません。これに着目し、燃料として使っている石炭の量を減らし、アンモニアに段階的に置き換えることとしました。発電所では2021年から、石炭とアンモニアを一緒に燃やすための実証実験を実施。2024年3月からは「世界初」となる20%分の石炭をアンモニアに転換して発電する実験を行います。
石炭とアンモニアは相性がいい
JERA 碧南火力燃料アンモニア設備建設所・関慎也さんは、今回の取り組みについて「アンモニアは燃焼速度が石炭と近いため、石炭と混ぜるのに相性が良い。既存の発電設備を活かし、設備の一部だけを改良することで燃料の転換ができると考えた。2024年3月に開始する実証事業では、20%をアンモニアに転換することができるかできないかではなく、今ある既存の設備を使って、どこまで燃焼効率を高められるかを確かめるもの」と話します。
2050年にはCO2排出実質ゼロに
3月から始まる「世界初の20%アンモニア転換」。JERAではこの結果をもとに2020年代後半の20%転換での商用運転に向けて、設備の建設や改造を行うとしています。そして2030年代にはアンモニア転換の量を50%に、2050年までには100%とし、石炭を全く使わないアンモニアの専焼化を目指すとしています。
関さんは「まずは3月からの実証試験を確実にやり遂げることを目標に、2050年までのCO2実質ゼロを実現する目標に向けて進んでいきたい」と語ります。
火力発電所の燃料を石炭からアンモニアに変える「アンモニア転換」。世界初のこの取り組みが軌道に乗れば、CO2を出さない火力発電所の実現が一歩近づきます。今後に期待が高まります。
(取材・撮影:杉浦和哲/文:石川玲子 2024年1月取材)
JERA 碧南火力発電所
JERAが運営する日本最大の石炭火力発電所。
住所:愛知県碧南市港南町2-8-2
JERA公式サイト 碧南火力発電所紹介ページ
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