愛知県安城市で外国人支援を目的に活動する団体「Anjoyともだち」。国籍を問わず、みんなが「安城をEnjoyできる街に」と、4人の運営メンバーと外国人ボランティア約30人が活動を行っています。
そんな「Anjoyともだち」が特に力を入れているのが、母親世代を中心とした外国人女性の支援です。今回は、安城に住む外国人女性と社会を結ぶ架け橋になろうと奮闘するAnjoyともだちの活動を追います。
外国人女性と地域を結ぶ
2021年から安城市を拠点に活動をスタートした「Anjoyともだち」。
なぜ外国人ママたちの支援に力を入れているのか、Anjoyともだちの牧令奈代表に伺うと、「子どもは学校、父親は仕事で日本人と関わることができます。しかし女性は家にこもってしまうと孤独になってしまい、地域とつながることができません。だからこそ、Anjoyともだちの活動が外国人女性と地域を結ぶ架け橋になればと思います」と、話してくれました。
互いの価値観を正しく理解する
Anjoyともだちのメンバーはみんな女性たちです。この日は「ヒジャブ」というムスリムの女性が着る衣装を日本人に体験してもらうイベントを開きました。
講師を務めた、ムスリムの学生たちに話を伺うと、「私たちはヒジャブを楽しんで着ています。宗教に縛られて可哀想と思われるけど、私たちは王冠をかぶっているような気持ちなんです」と、教えてくれました。
Anjoyともだちでは、こうした交流イベントを開催することで外国人女性に日本社会とのつながりを持ってもらうことを目指しています。
代表の牧さんにこの交流イベントについて伺うと、「このような会を通じて、彼女たちがどうしてヒジャブを被っているのかを知ることで、より交流を深めることができます。ですから、そういったきっかけになるようなイベントを開いています」と、話してくれました。
お互いの価値観を正しく理解すれば、みんなが友達になれる。この日、参加した人たちが、おしゃれを通じて、楽しくおしゃべりする姿には、国籍を越えて交流を深めることの大切さが詰まっていました。
言語の先にある、それぞれが輝ける場所を
2023年12月、Anjoyともだちの運営メンバーの1人、ギョルル友唯さんが、スリランカ人のアヨミ・ワラナクラスリヤさんとともに2024年1月20日に開催するスリランカ茶会の打ち合わせを進めていました。
夫と2人の子どもと安城市に住むアヨミさん。日本人との関わりを持ちたいと、Anjoyともだちの活動に参加しました。
スリランカでは紅茶の生産が盛んで、アヨミさんは紅茶を淹れるのがとても上手です。そこで、友唯さんに協力してもらい、スリランカの紅茶を日本人に振る舞うイベントを開催することになったのです。
アヨミさんは本番の日、日本語で紅茶の説明ができるように練習しているそうです。
「子どもは小学校と保育園に通っていて、日本が大好きです。だから、私も一緒に日本語を勉強しています。今回はスリランカのお茶を、たくさんの人に楽しんでほしいです」と話すアヨミさん。
アヨミさんをサポートする友唯さんは、「アヨミさんをはじめ、地域に住む外国籍のママさんたちは、日本社会に溶け込もうとしてるのですが、言葉が分からないだけで、躊躇してしまっています。それは、すごくもったいないと思ったので、日本語を勉強するだけじゃなくて、日本語を勉強して何がしたいかにフォーカスした活動ができたらなと思います」と、話してくれました。
アヨミさんが教える「スリランカお茶会」
本番の日、普段はスタッフにも気さくに話しかけてくれるアヨミさんですが、この日ばかりはちょっと緊張した様子。
それでも会場に多くの参加者が集まると、友唯さんと一緒に考えた日本語の挨拶を披露し、スリランカの紅茶の淹れ方を丁寧に説明しました。
参加した人たちも、スリランカの紅茶文化に興味津々で、「紅茶本来の味を意識したことがなかったので新鮮でした」、「いろんなお茶が楽しめ良かった」などの声があがり、イベントは大成功。アヨミさんも、無事に終えてホッとした様子です。
その人が、その人らしく生きられる地域を
アヨミさんのお茶会をはじめ、多国籍・子育て中・学生・多文化世代が集う拠点を目指し活動を続ける「Anjoyともだち」。
最後に代表の牧さんに、Anjoyともだちが目指す姿について聞きました。
「困っている人を助けるのではなく、その人がその人らしく生きられる、自己肯定感が高まる活動をするのが目標です。そのためには、外国人の方の才能も活かしつつ、私たちの才能も活かしてやっていけたら、みんなが豊かになるのかなと思っています。」
その人が、その人らしく生きられる地域になるまで、Anjoyともだちの奮闘は続きます。
(取材・撮影:PAQLA/文:石川玲子 2024年1月取材)
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