農業と福祉が連携することで、双方にとって課題の解決やメリットにつながるとされる農福連携。福祉分野では、障がいのある人の生きがいや働く場を生み出すことが期待され、農業分野では働き手の確保につながるほか、利用されていない農地が活用されるなどのメリットがあります。
愛知県高浜市では今、市や福祉事業所、農業関係者などが協力して農福連携に積極的に取り組んでいます。
高浜市ですすむ農福連携を取材しました。
2019年から農福連携に取り組む授産所高浜安立
高浜市内で障がいがある人たちの就労支援などをしている授産所高浜安立では、2019年から農福連携に取り組んでいます。
利用者に社会経験を積んでもらおうと安城市のチンゲン菜農家のもとで施設外就労に取り組み始めたことがきっかけでした。
授産所高浜安立の就労支援員 杉浦知里さんは、はじめは不安もあったということですが、農業分野で働くことで、利用者にいい変化があったと話します。
「施設内で心身の状況が不安定だった人も外での活動を続けることによって落ち着いて過ごせるようになったり、笑顔が見られるようになったりといい影響が見られました」
農福連携を推進する高浜市
高浜市では2021年に高浜市農福連携推進委員会を設置し、農福連携の取り組みを進めています。月に1回、市や福祉事業所、JAあいち中央の担当者など委員会の中で中心となるメンバーが集まり、農福連携の具体的な取り組みについて話し合っています。
現在は、チャレンジサポートたかはま、授産所高浜安立、ジョブスマイルサービスが委員会に参加し農福連携に取り組んでいます。
委員会の委員長で、安城市のNPO法人5-CHA(ごっちゃ)の理事 太田崇さんによると、こうした話し合いの場で各事業所が互いの取り組みを知ることが、農福連携を進めていく上で効果的だということです。
高齢化の進む農業分野で働き手の確保に
授産所高浜安立は農福連携推進委員会のメンバーによる話し合いの場で紹介された市内の農家と2022年から契約を結び、市の特産品「ジャンボラッカセイ」の収穫などの作業を行っています。
こうした連携が、高齢化の進む農業分野で働き手の確保につながることなどが期待されています。
農家の川角紀美さんは「ひとりで作業をしていると1日ほどかかる。それを1.5時間ぐらいでやってくれるので助かっている」と話します。
授産所高浜安立の杉浦さんは「できることが増えることは利用者さんの自信につながる。仕事の幅が広がるとやりがいにもつながるのでありがたい」と話していました。
使われていない農地を活用した農福連携
また福祉事業所自体が農業に取り組むという農福連携の形もあります。
高浜市で障がい者の就労支援に取り組むジョブスマイルサービスでは、農家が使わなくなった畑を借りて2023年からジャンボラッカセイの栽培などに挑戦しています。
この形の農福連携では障がいがある人のやりがいにつながるだけでなく、使われていない農地を活用できるというメリットもあります。
ジョブスマイルサービスの酒井祐香子さんは、今後も農家の困っているという声にこたえていくことで、農福連携の取り組みの幅を広げていきたいと話します。
広がる農福連携の取り組み
2023年11月。JAあいち中央が主催した高浜地区農業まつりで、市内で農福連携に取り組む事業所や市の担当者などがブースを出展し、それぞれの事業所で生産した農作物を中心に販売などを行いました。
高浜市 市民部の部長 岡島正明さんは「販売している様子を見ると、みなさんいきいきしている。高浜市としては農業分野と福祉部局がそれぞれ関わって応援している。この取り組みはずっと継続していきたい」と話します。
高浜市ですすむ農福連携。「農業」と「福祉」、双方の課題解決につながる取り組みが、今後さらに広がっていくことが期待されます。
(取材・撮影:後藤未来/文:石川玲子 2023年11月取材)
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