外国人住民が多いこの地方。コロナ禍で一時は入国がストップしていましたが、2023年度から様々な規制が緩和され、外国人の在留者は再び増加しています。こうした中、課題となっているのが言葉の壁です。特に外国人労働者を雇っている事業所では、作業内容の指示や従業員同士のコミュニケーションなど、大きな問題となっています。こうした課題の解決のため、愛知県知立市では2023年8月に無料の日本語教室をスタートさせました。今回は外国人労働者の雇用促進にもつながる知立市の取り組みを紹介します。
外国人住民の割合が多いこの地域
愛知県内の市町村別に見た、人口に占める外国人住民の割合は、高浜市の9.27%が最も大きく、4位が知立市で7.68%となっています。コロナ禍で一時は入国がストップしていましたが、2023年度から様々な規制が緩和され、外国人の在留者は再び増加しています。
2023年6月、日本の在留外国人の数は、過去最高を記録。知立市でも増え続け、現在は5,324人が暮らしています。知立市の在留外国人を国籍別に見てみると、ブラジルが多いことに変わりはありませんが、この10年でフィリピンが2倍近く増加し、インドネシアは2倍以上、ベトナムはおよそ6倍となっています。
知立市が始めた無料の日本語教室
こうした中、課題となっているのが言葉の壁。
外国人労働者を雇っている事業所では、作業内容の指示や従業員同士のコミュニケーションなど、言葉の壁が大きな問題となり、雇用する方もされる方も言葉が通じないストレスを抱えたままとなっていることが多いのです。
そんな中、知立市が始めたのが無料の日本語教室。現在は4つのクラスにおよそ70人が登録し、週に1度、日本語を学んでいます。
レベル別に行われる教室
火曜日夜7時すぎ、知立団地の中にある「もやいこハウス」に外国人が集まってきました。7時30分から始まる「CHIRYUにほんご教室」の受講生です。CHIRYUにほんご教室には、入門レベルのKODAMA、初級レベルのHIKARI、中級レベルのNOZOMI、そして上級レベルのLINEAR(リニア)の4つのクラスがあります。
この日行われたのは、初級レベルの人を対象にしたHIKARIクラスです。ベトナムやフィリピン、ブラジルなど様々な国の受講生が10人~15人ほど参加しています。
HIKARIクラスでは、知立市から委託された一般社団法人DIVE.tvの講師による文法や会話の勉強が行われます。
知立市を持続可能なまちに
知立市で日本語教室を実施することになった理由について、知立市企画政策課の永田亮佑さんに聞きました。
「新型コロナウイルスの流行をきっかけに失業した外国人も多くいました。その際に際立ったのが、日本語能力が低いと優先的に解雇されやすいという現実です。日本語能力が原因で解雇されているとなると、外国人が多い知立市全体が持続可能なまちではないという見方ができます。やはり日本語能力を高めることが重要だと思い、教室を始めました。」
外国人労働者を雇う現場は
知立市にある野村工業は自動車用のパイプ部品加工を行っている会社です。人手不足を補うため外国人労働者を雇っていて、従業員24人中16人が外国人です。そんな野村工業でも、言葉の壁は大きな問題になっていました。
野村工業業務課長の一樂輝さんは、
「言葉が通じないので、作業内容の説明が通じているのか、最後に確認しなければいけません。また、通じていなければ再度説明するなど、意思疎通に時間がかかります」と話します。
外国人労働者を知立市の日本語教室へ
野村工業では日頃から、外国人従業員に日本語能力を高めてもらいたいと思っていましたが、外国人の数が多く、なかなか日本語学習の機会を設けられずにいました。こうした中、今年8月から知立市が日本語教室を無料で始めることを知り、外国人従業員を通わせることにしたといいます。
「従業員のほとんどが外国人なので、もっとたくさんの人に教室に通ってほしいと思っていますが、まずは技能実習生と特定技能の人に教室をすすめました」と一樂さん。
今では教室を楽しみにしている
CHIRYUにほんご教室のHIKARIクラスを覗いてみると、野村工業で働く3人のフィリピン人がいました。会社の勧めで日本語教室に通い始めましたが、今では週に1回のこの日をとても楽しみにしているそうです。
「仕事が終わってアパートに帰ってから、発音の練習をしています」
「日本語は難しい、でも楽しいです。もっとやりたいです」
「教室に通って、日本語がちょっとずつ分かるようになりました。日本語が上手になったら日本で長く働きたいです」
日本語の上達による効果は大きい
野村工業の事例に限らず、日本で働いていく上では日本語が上達すれば、より多くの技術を習得することができます。また、日本人とのコミュニケーションがスムーズになり、職場だけでなく地域住民との交流も可能になります。さらには、資格の取得や、職業を自由に選べるようになり、技術力が上がれば賃金アップものぞめます。
日本語教室の効果は徐々に表れている
知立市の永田さんは
「日本語を学ぶことで、スキルアップや仕事の選択肢が広がるなど、コミュニケーションだけにとどまらない効果が見込めます。雇用創出にもつながるし、持続可能な事業の創出にもつながります」
多国籍化する中で、だれもが住み続けられるまちを目指し始まった知立市の日本語教室。徐々に成果が表れ始めているようです。
(取材・撮影:映像舎 /文:石川玲子 2023年10月取材)
CHIRYUにほんご教室
知立市が行っている外国人向けの日本語教室。レベルを4段階に分けて行っている。
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