日本国内において、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品は、一年間でおよそ523万トンになると推計されています。この食品ロスを削減するために、自治体やNPOなどが家庭や企業などで使い切れない食品を集め、必要とする人に届ける「フードドライブ」の取り組みが広がっています。愛知県知立市と刈谷市で行われている取り組みを紹介します。
年々広がるフードドライブの活動
知立市では2018年から毎年、自治体によるフードドライブの取り組みが行われています。食品ロス削減月間の毎年2023年10月にも、市役所環境課のほか、知立市内のNPO法人や観光交流センターで食品が回収されました。
捨てられてしまうもったいない食品が少しでも減ってゴミの減量に繋がればと毎年フードドライブの活動が行われ、2023年で6年目となります。持ち込む人の数や持ち込まれる食品の量は年々増えていると言います。
市民が持ち寄る草の根活動
フードドライブで回収できる食品は、缶詰やレトルト食品、調味料などです。しかしどんなものでも持ち込めるわけではありません。賞味期限が2か月程度あり、未開封に限るほか、成分表示が日本語でしっかりと読める状態であることなどが条件です。
なかには玄米を持ち込んでくれる人もいます。
「実家で父と母がお米を作っているのですが、家で食べるだけなので新米が出来るタイミングでお米が余ってしまいます。美味しく食べてもらえるとうれしいですね」
集まった食品は、知立市社会福祉協議会やフードバンクの団体に渡され、地域の福祉団体などに配られます。
NPO法人を立ち上げた市民たち
一方、刈谷市では、市民がフードドライブの活動を行っています。NPO法人「いこまい刈谷」では、代表の吉田千秋さんを含め10人が在籍し、2021年からフードドライブに取り組んでいます。
いこまい刈谷では、市内のファミリーマートの協力店に寄附された食べ物を回収し、必要とする人に配布しています。当初2店舗だった協力店も、いまでは7店舗まで増えました。
食品の回収は月に2回行われ、去年の5月からはいこまい刈谷のスタッフのほか、地域の市民サッカークラブ「FC刈谷」と連携し、練習を終えた選手たちも回収に協力しています。
FC刈谷とも連携し 広がる支援の輪
この日は、元サッカー日本代表でFC刈谷に所属する茂庭照幸選手(取材当時)が、練習後に駆け付けました。荷物を積み込むと、高齢者の介護や医療、福祉などを支える刈谷朝日地域包括支援センターに向かいます。こちらには、月に3回ほど食品を届けているそうです。
地域包括支援センターのセンター長、鈴木健司さんに、この活動について聞いてみました。
「ご高齢の方ですと、食品をもらうことに抵抗感がある人もいます。けれどもフードロス削減のために消費してくださいという形ならば受け取ってもらいやすいので、非常にありがたいですね」
困っている人のために継続的な活動を
茂庭選手(取材当時)に、練習後で疲れていないかと聞くと、こんな答えが返ってきました。
「僕の疲れっていうのは今日1日で終わってしまうものですが、困っている人の困難は一瞬ではありません。そういうことを考えたら僕の疲れとか言っていられないです。フードドライブで手元に本当に今必要なものが届くというのは本当に大事なことだと思いますし、その活動を手伝えるのを大変嬉しく思っています」
イベントでも配布し 食品ロス削減に貢献
いこまい刈谷では、回収した食品をイベントでも配布しています。
10月8日はFC刈谷の今季リーグ最終戦でした。いこまい刈谷は、イベントで配るために多くの食品を積み込んで出かけ、試合前に食品の配布を行います。
会場を訪れる人の中には、毎回楽しみに来てくれる人もいるそうです。 訪れた人にこの取り組みに対する感想を聞きました。 「食品ロスっていま問題になっているので、そういう意味でフードドドライブをやってくれることはありがたいです」
地域の笑顔のために食品のシステムを
イベントでは、食品の回収も行われていて多くの人が、協力していました。
「子どもからお年寄りまで、食べられない人がなくなるような地域にしたいと思っています。FC刈谷のメンバーにも入ってもらい、食品があるところから頂いて、ないところにお渡しするっていうシステムがきちんとできていったらいいなと思っています」
そう語るいこまい刈谷代表の吉田千秋さん。食べきれない食品を地域で活用するフードドライブの取り組みによって、地域で笑顔も増えていきそうです。
(取材・撮影:ビデオハウス/文:石川玲子 2023年10月取材)
いこまい刈谷
ひとりでも多くの人に笑顔を届けようとフードドライブなどの活動を行う
FC刈谷
いこまい刈谷のフードドライブに賛同する地域の市民サッカークラブ
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