少子化による部員数の減少と、教員の働き方改革という、中学校を取り巻く問題を解決するため、国は2022年12月、中学校における休日の部活動を、段階的に地域へ移行するガイドラインを作成しました。
愛知県の安城市もそのガイドラインに基づき、これまで学校で月に4回行われていた土日の部活動を、2023年10月から月に2回に減らしました。その代わりに、地域のクラブなどが指導する取り組みが始まっています。
中学校の休日の部活動を、学校から地域に移行させる、安城市の取り組みを紹介します。
休日の部活動の地域移行が進む安城市
安城市では、「中学生の日曜教室」と「地域スポーツ団体の紹介」に取り組んでいます。
取り組みの一つ、中学生日曜教室は、ハンドボールの男子と女子、バレーボールの男子と女子、剣道の3種目が5つの教室で行われています。2023年度末までの半年間、月に2回、合わせて12回行われる予定です。また安城市は、部活道の地域移行を加速させるため、受け皿になる地域のスポーツ団体などに中学校施設を日曜日に開放しています。そのため地域のスポーツ団体は、運動場や体育館などを無料で使用することができます。
中学生が継続的にスポーツに親しめるように
安城市生涯学習部スポーツ課の近藤真弘さんに取り組みについて聞きました。
「10月から休日の部活動が4回から2回に減っています。そのような中でも中学生が継続してスポーツに親しんでもらい、新たな活動のきっかけになるのを目的にしています。少しでもスポーツを継続してやっていけるように安城市でも支援しています。地域の方には気軽に指導に参加してほしいです」
いろいろな中学の生徒が集まり、共に楽しむ
2023年11月5日の日曜日、安城北中学校ではハンドボール教室が行われていました。中学生日曜教室の一つであるこのハンドボール教室には、安城北中学校だけでなく、市内の他の学校の生徒たちも参加しています。
参加している生徒に話を聞いてみました。
「他校の生徒とのコミュニケーションが取れるのが楽しいです。学校ごとのプレーの仕方の違いなどもあるので刺激になります」
「全員と仲良くなりたいです」
「問題点やダメなところも、わかりやすく的確に指導してくれるからいいです」
と楽しむ様子が見られました。
社会人チームの経験者も指導者に
生徒たちにハンドボールを教えているのは、学校の先生ではありません。社会人チームに所属していたOBです。
子どもたちにハンドボールを教えていた豊田自動織機ハンドボール部OBの大見知永さんに話を聞きました。
「今、子ども達が活動する場が減っているので、場所を使ってこういう活動を行う機会をもらえるのはありがたいことです。ハンドボールの競技人口が増え、ファンが増えるなどの活動につながればいいと思ってやっています」
市全体の競技のレベルアップに期待
安祥中学校では剣道の日曜教室が行われ、会場となっている安祥中学校の生徒だけでなく、安城西や、東山、桜井など、他校の生徒も数多く参加しています。指導者は市の剣道連盟の在籍者です。
安城市剣道連盟の安井和幸さんは日曜教室での指導について次のように語ります。
「安城市のいろいろな学校から集まってきているので、日曜教室によって安城市全体のレベルが上がると思います。初心者もいるので、そういう子が取り残されないよう、同じようにレベルアップしていけるように心がけています」
WEBで地域のスポーツ団体を紹介
安城市における、もう一つの取り組みが、地域のスポーツ団体の紹介です。中学生が気軽にインターネットで調べて参加できるように定型のフォーマットを作り、団体のPRや紹介をホームページに掲載しています。2023年11月8日現在、29種目99のスポーツ団体が、中学校の休日の部活動の受け皿として登録されています。
7校で設立された地域の野球クラブ
安城市軟式野球連盟では、地域移行が本格化する以前の2022年4月頃から、それぞれの中学校を拠点とする地域の野球クラブを設立しました。現在は7つの中学校に野球クラブがあり、安城南中学校では、安城南クラブが活動しています。
参加する生徒たちは
「いい仲間がいるので楽しい」
「地域クラブのほうが専門的なコーチが指導してくれる気がします。一人ひとりに合わせた指導をしてくれるので、上手くなりたいならいいと思います」
と活動を楽しんでいる様子です。
休日は地域の指導者が担う形に
安城南クラブ監督の石川直樹さんは、平日は企業に務める会社員で、仕事が休みの日曜日に地域クラブで中学生を指導しています。「指導したいというより一緒に楽しみたいと思ってやっています」と語る石川さん。
部活動の地域移行は、今後も子どもたちがスポーツに継続して親しむことができる機会を確保するために行われている取り組みです。そして2026年4月には、中学生の休日の部活動は、地域が主体となった形に完全に移行する予定です。そんななか、携わる地域の指導者たちは、それぞれの競技に誇りと信念をもって、中学生の指導にあたっています。(取材・撮影:シークラウド映像舎/文:石川玲子 2023年11月取材)
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