様々な事情から働きたくても働けない働きづらさを抱える若者たちがいます。愛知県安城市にあるNPO法人リネーブルでは、働きづらさを感じる若者たちに働くきっかけを作ってもらえるようにと、居場所や技術を身につける場を提供しています。自分に合った働き方を模索する若者たちを取材しました。
得意分野を活かしてロボット製作
安城市住吉町にある「NPO法人リネーブル・若者セーフティネット」、通称「NPO法人リネーブル」は、企業などで働きづらさを感じた若者たちが、再び社会で働くきっかけをつくるため活動する場所です。2016年に設立され、2023年9月現在で43人が登録しています。
この日は、若者たちが協力してロボットを製作していました。2023年11月に開かれる日本最大級のビジネス展示会「メッセナゴヤ」で発表する予定で、最後の調整に余念がありません。
ソフトウェアやデザイン、3DCADを使った外装などは、メンバーがそれぞれ得意分野を活かし、協力して製作しています。
若者たちの自立のために多様な働き方を提案
NPO法人リネーブル代表理事・荒川陽子さんは、かつてはキャリアコンサルタントの資格を活かし、若者の自立を支援する団体で働いていたそうです。それぞれに合った多様な働き方を求めている若者が多いことに気づき、リネーブルを立ち上げたと言います。
「働いてはみたものの、自分に合った働き方ができずに早期離職を繰り返し、どうやって働いたらいいか、わからない人もいます。一方で、1日8時間、週5日、正社員で働くという親や世間からの期待や理想があることも。そういう若者たちが今の自分にできることを見つける。今学びたいことを見つけて学び直す場を作りたいと思いました」
専門的な学びで企業から必要とされる人材に
リネーブルには、いくつかのステップがあります。まずは若者の居場所です。ボードゲームで人との交流を楽しんだり、体操やヨガなどで体力をつけたり、「ココロと身体」の両面から働くための準備をします。
次に「若者Lab」です。ITを活用できる人材を育てるため、基礎的な学びから始め、徐々に専門的なことを学びます。
そして最後が「デジ・モノプロジェクト」です。居場所や若者ラボを経験した利用者が、チームを組んで様々な挑戦をしていきます。
若者たちは、最新の技術を身につけることで、企業などから必要とされる人材になることを目指しています。
得意なことをみつけて実践することが自信に
ロボットのソフトウェアチームのリーダーを務める嶋崎裕介さんは、2016年の設立間もなくから、リネーブルを利用してきました。当時会社で苦手なことがあるなど、なかなかうまく働けない状況だったという嶋崎さん。リネーブルに来る前はパソコンにほとんど触れたことの無い状態でしたが、今ではリネーブルのシステム管理者やアプリ開発者として活躍しています。
嶋崎さんにリネーブルの良さを聞いてみました。
「ここは得意なことがみつけられて、それを実践できる場所です。ロボット開発は、いろんな仲間と協力して作るので、難しいけど楽しいです」
製作した喜びが次につながる
3DCADを駆使して、ロボットの機械設計を担当しているのは蒲孝太朗さんです。蒲さんはリネーブルで3DCADの技術を身につけ、今ではチームのリーダーとして、メンバーを引っ張っています。頭の中にあるものを形にするのが楽しいという蒲さん。リネーブルでは3年前に、ある企業の提案で3DCADを導入しました。併せて3Dプリンターも導入。それにより、これまでに菓子店やカフェのクッキー型の製作を手掛けました。
蒲さんにそのような活動の感想を聞きました。
「作ってもらえないかと相談を受け、作ったときに喜んでもらえると嬉しいです」
企業や大学と連携して技術や知識を吸収
リネーブルは、応援してくれる企業や大学と連携していて、若者たちは第一線で活躍する技術者や教授などから技術や知識を吸収しています。そして、仲間と協力しながら一人ひとりが挑戦を繰り返しています。
蒲さんは今後、リネーブルが企業と共に開催する3DCADの勉強会で指導者としても活動していく予定です。
このような取り組みについて代表理事の荒川さんは
「若者たちそれぞれの働き方を理解してくれる企業とつながっていきたいです」と語ります。
仲間たちとそして社会とつながる
リネーブルで仲間たちとつながりながら活動を広げているのは、大学時代にスポーツを学んでいた宮田征実さん。過去の経験を生かしてリネーブルでパーソナルトレーナーとして活動しています。
宮田さんにリネーブルでの活動について聞きました。
「運動が得意ではない子が少しずつできるようになると達成感があります」
宮田さんは今後さらに学びを深め、老人ホームなどでもトレーナーとして活動していきたいそうです。
誰もが社会とつながり、人の役に立っていると自信を持って思えるように。リネーブルの活動は続きます。
(取材・撮影:映像舎/文:石川玲子 2023年8月取材)
NPO法人リネーブル・若者セーフティネット
愛知県安城市住吉町荒曽根1-245 アワーズビル2F
「シリーズ 未来へつなぐSDGsの輪」は、キャッチの番組でも放送中!
番組名:特集「地域の今」
地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。
「シリーズ 未来へつなぐSDGsの輪」では、この地域で広がっているSDGsの取り組みや、活動を紹介しています。
詳しくは、KATCH番組紹介ページ・特集「地域の今」をご覧ください。