2021年度、市民一人当たりが一日で出すごみの量が、県下の市ではワースト1となった西尾市。その減量化に取り組もうと、燃えるごみに含まれる紙ごみの資源化を始めますが、思うように集まらず、壁にぶつかります。
今回は西尾市が進めるごみ減量化に注目。燃えるごみを減らし、循環型社会を目指す舞台裏に迫ります。
一人あたりのごみ排出量ワースト1の西尾市
西尾市内の家庭から出される燃えるごみ、いわゆる可燃ごみは、2011年度から増加し続けています。2021年度に西尾市民一人当たりが一日に出した家庭系可燃ごみの量は623gで、愛知県内の市でワースト1でした。
キャッチエリアの順位を見てみると西尾市が特に多いのがよくわかります。西尾市では、このままではあと1~2年で、焼却施設の処理能力を上回る量のごみが発生する可能性が高いといわれています。
喫緊の課題は、家庭から出される可燃ごみの抑制です。
可燃ごみの4割が再生可能
西尾市ごみ減量課の久田浩隆さんに現在の西尾市の課題について聞きました。
「たとえばダンボールや紙パックはリサイクルが進んでいます。一方で、お菓子の箱やラップの箱などはリサイクルできるという意識が低い状態です」
市内の燃えるごみ集積所からサンプルを選び、燃えるごみとリサイクル可能な紙ごみ、そしてプラスチックに分類してみると、再生可能な紙ごみとプラスチック類がかなりの量、混ざっていることがわかります。
このような可燃ごみの組成分析調査は定期的に実施されていて、その結果によると、なんと可燃ごみの4割が再生可能な紙ごみだといいます。
雑がみをそのまま回収に出すことが可能に
西尾市は2020年7月から、回収する紙の範囲を広げました。ビニールがついている紙やホチキス止めされた紙など、従来はリサイクルが難しいとされた雑がみを、そのまま回収に出すことができるようにしました。それを実現したのが、静岡県富士市の製紙会社、コアレックス信栄です。
コアレックス信栄では、西尾市内で地区ごとに月に2回行われる回収で集められた雑がみは、事業系のものと合わせて処理されます。
雑がみがトイレットペーパーに
まずは紙質に応じて投入する紙の割合を調整します。水や薬品と混ぜ、タンクで半日ほど寝かせて紙を分離します。最初の工程で沈んだ金属が分離されます。クリップなどはもちろん、書類を綴じたままのファイルもここで金属だけが自動的に分別されます。
次にビニールなど軽いものが取り除かれます。続いて印刷のインク成分を泡に付着させる脱墨工程です。従来は取り除くことが難しかったコピーのトナーも、ここで分離させることが可能になりました。
これで製紙用のパルプができあがり、それをすいて巨大なロール紙を作ります。巻き直して切り分けると、トイレットペーパーの完成です。
コアレックス信栄とタッグを組んだ西尾市
コアレックス信栄 取締役専務執行役員の佐野仁さんに話を聞きました。
「私たちの会社は今年で創業60年を迎えます。製紙会社としては歴史が浅く、原料の古紙の入手に苦労していました。そこで私たちは、捨てられている紙ごみを集めて再生することを考えました。
たとえばティッシュの箱はフィルムがついています。そういった素材であっても我々の技術なら金属やプラスチックに分けられ、またそれぞれのリサイクルに回せるようにしています。ゼロエミッションを実現しています」
自治会などに出向いてごみの分別を説明
この日、久田さんは西尾市内の県営住宅に出向き、自治会の会議のなかでごみの分別について説明しました。
話を聞いた人からは、
「雑がみは、ほとんど燃えるごみで出してしまっていたので、リサイクルできると聞いて意外でした。みんなにも説明し、リサイクル活動を進めていきたいです」
「しっかりとみんなに伝わっていくのか、思ったようにできるか不安もある」
「西尾市はごみの量が多いと聞いており、このままではまずいとは思っていました。やはり個人個人ががんばらないといけないですね」
などの声があがりました。
ごみ処理のためではなく子どもたちへ
他にも、久田さんは保健センターへも出かけ、育児に関する講座の休憩中にも雑がみ分別をPRするなど、様々な場面で呼びかけを行っています。
なぜこのような活動をしているのでしょうか。久田さんは、
「雑がみのリサイクル量を増やせば可燃ごみの量が減ります。ごみが減ればごみの処理費も減ります。西尾市では現在、ごみの処理に年間20億円も使っています。一日で約550万円という計算です。
このお金を、未来を担う子どもたちのために使えるように。そのためにごみを削減する、雑がみを分別するということをお願いしたいです」と話します。
認知度向上を目指す
紙ならほぼなんでもリサイクルできるコアレックス信栄とタッグを組んだ西尾市。
課題はまだ市民の認知度が非常に低いこと。今後は認知度を高めることと、そして何より西尾市以外でもこうしたリサイクルの進展が望まれます。
(取材・撮影:オフィスげんぞう/文:石川玲子 2023年9月取材)
西尾市 ごみ減量課
西尾市 ごみ減量化の取り組み
雑がみの出し方はWebサイトをご参照ください。
また、毎月の雑がみの回収量をWebサイトや西尾市公式LINEで発信しています。
西尾市クリーンセンター:西尾市吉良町岡山大岩山65番地
電話:0563-34-8113
コアレックス信栄
トイレットペーパーやティッシュペーパーを製造する製紙会社。独自の技術でリサイクルシステムを開発し、紙製品の再資源化を行っている。
本社・本社工場:静岡県富士市中之郷575-1
電話:0545-56-2513
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