会社員や自営業の人など仕事をしながら地域を守る存在として、日々訓練や点検を行っている消防団。災害時には救助や避難誘導を行う役割もあります。消防団というと体力勝負、力仕事と「男性」のイメージが強いかもしれません。
そんな中、注目を集めているのが女性消防団員です。刈谷市では、ことし初めて女性消防隊が結成されました。全国的に消防団員が減少し、災害時の対応に支障をきたすことが問題視される今、地域のためにと活動する女性消防団員を取材しました。
刈谷市で初めて結成「刈谷市女性消防隊」
刈谷市消防団には現在12人の女性消防団員が所属しています。
2023年4月、女性団員の中から「刈谷市女性消防隊」が結成されました。メンバーは20代~40代の7人です。
刈谷市女性消防隊は、2023年10月に行われる全国女性消防操法大会に愛知県代表として出場します。大会では、およそ20mのホースを走って伸ばします。そして的に向かって放水し、消火活動の技術や、タイムを競います。
メンバーらは週2回夜に集まって訓練を重ねています。
女性消防隊隊長 山内さんの入団した理由
男性のイメージが強い消防団に、入団しようと思った理由はさまざまです。
11年前、刈谷市で初めての女性消防団員となり、女性消防隊では隊長を務める山内裕子さんに話を聞きました。
「親戚が消防団に入っていました。当時は刈谷市消防団に女性が誰もいない状況でしたが、ちょっとやってみないかと声をかけてもらい入団しました。入ってみたらすごく楽しくて、楽しいから今まで続けることができています。消防団の活動では、今まで知らなかった地域の人とも交流ができて、新しいことを学べるのが大きいなと思います」
西日本豪雨での被災をきっかけに
父親が消防職員の近藤色音さんは、2018年、広島の大学に通っていた時に、西日本豪雨に遭い、被災しました。その時、ボランティアをした経験が入団への思いを強くしたと話してくれました。
「大学に通えないぐらい道が泥とか木で封鎖されていました。こ
れはまずいなと思ってボランティアに参加した時に、その町の消防団の人と地域の人が密着して助け合っている姿を見て、自分も社会人になったら同じようなことができたらいいなと思い入団をしました」
周囲のサポートもうけ、働きながら活動を
女性消防団員たちも、普段は会社員や教職員、大学生など、それぞれ本業を持ちながら活動を行っています。
知立市のプラスチック部品製造会社で働く松尾悠紀さんは、「災害時に出動する時などは、上司に許可をもらって活動へ向かう流れになっていて、周囲のサポートのおかげで両立できている」と話します。
消防団は、周りのサポートもうけながら活動をつづけています。
団員の定員割れ 男性の仕事から地域の仕事に
全国的な課題が消防団員の減少です。この地域も同様で、刈谷市では人口に対して必要な団員数435人に対して、現在326人と約100人の定員割れとなっています。
そんな中、年々増加しているのが女性の消防団員数です。
刈谷市消防団の石原団長は「消防団員の減少は、団員だけでなく市民もそれでいいのか考えてみてほしいです。大きな災害が起きた時には、消防職員だけでは人手が足りないので、やはり女性団員が増えていくのはあるべき姿かと思います」と話していました。
消防団は「男性の仕事」という考えをなくし「地域の仕事」にしていくことが大切だということです。
男性に言いづらい悩みも聞いてあげられたら
消防団は、災害時も地域のために出動しています。
近藤色音さんは、災害時などに地域の人と関わる中で、女性が活躍できる場があるのではないかと話します。
「災害時だと、お手洗い問題などはなかなか男性には言いづらいと思います。もし災害が起きてしまったときには、女性の視点で細かいところに気づき、悩みなどを聞いてあげられるように活動したいです」
「女性でもできる」ことを知ってもらいたい
刈谷市消防団は、団員数を増やそうと、SNSで訓練の様子を投稿しています。
女性でもできることを、地域の人に見てもらうことで、多くの人に消防団に興味を持ってほしいと女性消防団員たちは話します。
「力がある男性じゃないと、といったイメージがあると思うんですけど、そんなことないよ、女性でもできるんだよと発信したいです」
「老若男女、年代問わず地域を守るという同じ目標を持った人たちが集まってくれたらいいなと思います」
自分たちのまちは自分たちで守る。そんな女性消防団員たちの思いが、今後の消防団の発展につながるかもしれません。
(取材・撮影:山口さくら/文:石川玲子 2023年8月取材)
刈谷市女性消防隊
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「シリーズ 新しい時代を生きる」
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