2023年8月4日、安城市東町に筋トレジム「筋錬(きんれん)」がオープンしました。利用していたのは、74歳、84歳など、シニアのみなさんたちです。ジムのオーナー、西部妙子さんは75歳。地域のシニアを元気にしたいという一心で、このジムを作ったといいます。
人生100年時代をどう生きるのか。新たな幸せのカタチを模索する高齢者が増えています。
今回は、シニアを元気にするシニア、西部さんの思いを取材しました。
地域のシニアを元気にしたい
筋錬の中には、株式会社「鍛錬」のマシンが20種類ほど並んでいます。筋力アップのほか、シニアに多い、つまづきや腰痛などの体の痛みや不具合の改善が期待できるそうです。
西部さんはジムを作った理由について次のように話します。
「私も後期高齢者になりました。これからも毎日楽しく、ハッピーでいられるにはどうしたらいいか考えたら、地域のシニアを元気にしたいなと思ったんです。今まで頑張ってきた貯蓄があったので、こうした器具に投資して開店する運びになりました。死ぬときにお墓にはお金は持っていけないし、みなさんの為に有効に使いたいので」
利用者の声は
筋錬を利用している人たちにも感想を聞きました。
70代の利用者は「身体を反らせるマシンがすごくよかったです。あと、最近は身体のふらつきがあるので、それをなくすためにマシンで運動したいと思っています」
また40代の利用者は「年をとってきたことで、肩が硬くてすごく動きにくくなりました。なので、肩を広げるマシンと、上げ下げするマシンで運動したら、肩がすごく楽になりました」
筋トレだけでなく「行く場所」になる
さらに別の80代女性は、趣味で車を使うことが多いためジムで身体を鍛え、認知機能検査に問題が無ければ、来年、車の免許の更新をしたいと頑張っています。
「1人で暮らしてるから車が無いとどこも行けないんです。だから身体も頭も元気でいられるように、運動頑張って免許を取りたいですね。元気で100歳を迎えたいです」
西部さんは「来てよかったって、体が軽くなったって言っていただけることが、一番嬉しいです。私にとっては励みにもなります。利用者の方にとっても、ジムという概念ではなく、行く場所ができたっていうことがとても良かったかなと思っています」と話します。
シニアが対象だからこその気遣いも
筋錬は高校生以上から利用でき、65歳以上からは月4500円、75歳以上になると月4000円で利用できます。
また、西部さんの他に5人いるスタッフのうち4人が65歳以上と、シニアに寄り添った体制をとっています。ゆっくりと話すことや、無理をさせないことなどを心がけています。
スタッフの一人に、利用者と接する際に気をつけていることを聞いてみました。
「マシンを使うことによって頑張りすぎて、身体を痛めてしまったら元も子もありません。なので負荷をとにかく確認するようにしています。お客様のその日の状態とか体調、年齢に合わせて接するように気をつけています」
高齢者同士のコミュニケーションの場
このようなスタッフの対応を、西部さんは頼もしく感じているようです。
「器具の説明がしっかりできる、本当にいいスタッフが集まったと思っています。インストラクターとか教えてくれる方たちが若いと、利用者の方もなんか聞きづらいとか言いづらいことが出てきてしまいます。
けれどここならば高齢者同士のコミュニケーションになります。利用者の方からも、安心して何でも言える、聞けるって言っていただけています。私やスタッフがこの年代になったからこそ、できることだなって感じていますし、そのことを嬉しく思っています」
西部さんの心の支えは…
そして、西部さんの心の支えになっているのが、ジムのマスコットキャラクターを作ってくれたというお孫さんです。
「娘の中学1年生の子どもが新潟に住んでるんですけど、こんな可愛いキャラクターを作ってくれました。皆さんに愛されるキャラクターになってくれたら、おばばはめちゃくちゃ嬉しいです」
シニアのファッションショーを企画
西部さんは名古屋で生まれました。23歳まで百貨店に勤め、29歳で安城市に移り住みます。
そして42歳でコンビニチェーンのオーナーになると、利用客から「お母さんみたいだと」慕われていたそうです。
その後は、58歳の頃に西尾市でカフェを始めるなど精力的に仕事をこなしてきました。
転機が訪れたのは7年前です。シニアがシニアを元気にするというコンセプトで、ボランティア団体「ハッピーハッピーエンジェル」を立ち上げました。
そこで、シニアがモデルのファッションショーのほか、料理会や手づくり教室などの活動を始めたのです。
高齢者に楽しい出来事を提供
「私は地元の人間ではないので、地元の方と仲良くなるにはボランティアが一番かなと思いました。
私が始めたファッションショーでは、初めて出た高齢者が20歳は若返ったっておっしゃってくださいました。そういう楽しい出来事を提供できたということは私の中ではとてもいい経験になりました」
コロナ禍には、思うような活動が出来ない時期もありましたが、2022年の11月から、新たなボランティア活動、一人暮らしの人の食事の応援隊を始めました。
社会的に孤立しやすい、一人暮らしの高齢者に向けたこの取り組みには、多くの人が協力してくれているそうです。
「自分も頑張らないと」と元気をもらえる
そんな西部さんが、シニアを元気にするための集大成として開いたのが、筋トレジム筋錬です。その思いは、ジムの利用者やボランティア仲間にも届いているようです。
「西部さんはパワフルですごいね。元気もらえそうって感じがしますよね。よく聞いたら西部さんと私は年齢も一緒ぐらいなので、私も頑張らないとね」と語る70代の利用者。
また40代の利用者は「みんなが楽しく人生を過ごすために、年は関係なく行動を起こすというところを尊敬しています。西部さんのそういうところを見ていると、40代なんてもっとできるかなっていう勇気を貰えます」と語ります。
最後は地域に貢献したい
しかし西部さんには、7年ほど仕事から離れていたことで少し悩みがあるといいます。
「自分の体がどこまでもつか、はっきり言って今はとても心配です。ボランティアであれば、時間も短いし ゆっくりできるんですけど、ここは仕事として10時から18時まで動いているので、やっぱり全然違います。それが75歳には少しきついところもありますね。
大変だけど、本当に助けてくださって応援してくださる方がいるから、やはり最後は地域に貢献したいし、自分自身のこういった活動を地域の人に一緒に支えていただいて、元気なシニアを増やしたい気持ちでいっぱいです」
みんなに元気とハッピーを
シニアの働き方と地域貢献への思い。悩みながらも前を向き続ける西部さんに次の目標を聞いてみました。
「あと10年、85歳まで頑張りたいです。やっぱり私たちシニアが寝たきりになるなどすると、医療費の負担が増えてしまいます。ですので、そういったことにならないためにも、ジムで皆さんが元気になって過ごせるようになったら、市のためにも貢献できるかなと思っています」
表彰状もらえるかな?と笑う西部さん。みんなに元気とハッピーを届けながら、西部さんの取り組みはまだまだ続きそうです。(取材・撮影:ビデオハウス/文:石川玲子 2023年8月取材)
筋トレジム 筋錬
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