新型コロナウイルスの影響は、看護専門学校にも大きな変化をもたらしています。
愛知県安城市にある安城碧海看護専門学校では、2020年3月から感染対策委員会を設置。これからの医療現場を支えていく看護学生たちの学びを止めてはいけないと、医療機関での実習受け入れ先の確保やオリジナル動画制作など、看護師の卵を守るために奮闘する姿がありました。
未来の看護師の学びを守るために
安城碧海看護専門学校では、2020年4月からの臨時休校を経て、約1か月遅れで授業を再開しました。現在は、密を避けるため、普段は講義を行わない広い講堂で授業を行っています。またオンラインを使った遠隔の授業も取り入れ、授業の仕方も大きく変わりました。
川島八千代副学校長は「この数か月間は本当に手探りで大変でした。はじめての体験ばかりで、今までにない授業形態になっている」と、密にならないよう工夫した授業や遠隔授業の準備を振り返ります。
コロナ禍でも消えない看護学生の熱意
コロナ禍を学生たちはどのように感じているのでしょうか。
「学校に来られない期間があった分、いまは毎日実習があるので、覚えることも多く大変。それでも、テレビなどで医療従事者が毎日働いている姿をみて、自分も将来たくさんの人を助けられるような看護師になりたいと心から思いました」と将来への熱意を語ります。学びへの不安や不自由は特に感じないと言いつつ、現在の状況に対し「看護や医療はいま必要とされていると思うので、自分としてはやる気につながっている」と話してくれました。
手作りの動画で学生たちをサポート
さらに、コロナによる影響で例年よりも実習内容が制限されたり、時間が限られたりするなか、少しでも学生たちが分かりやすく学べるよう、オリジナルで実習動画を制作しました。制作に携わった看護教員の大原則子さんは「教員がやっているところを動画で見せることで、学生にわかりやすくポイントをしぼって教えられる」と手応えを語ります。
元々、授業に動画を活用するアイデアは3年くらい前からありましたが、今回の休校期間に教員たちにも時間ができたことから制作に着手できたそうです。とはいえ、動画の制作や編集は初めての経験ということもあり、手探りの対応が続いています。
学校内の感染対策も万全に
学校内での感染対策も大切です。安城碧海看護専門学校では、特別に設けた感染対策委員会で話し合いを行っています。
感染予防対策マニュアルの作成では、入校や授業の方法、感染者や濃厚接触者が出た場合の対策などをまとめました。入校時の健康チェックや手洗いの方法は、学生や教員だけでなく外部からの入校者への指示も徹底して行っています。定期的に開かれる会議では、対策が甘くなっている学生が見受けられることや、それに対してまずは教員から手本を示すようにすることなどが話題に挙がっていました。
看護師の育成に地域の医師会も協力
看護専門学校の使命は、地域医療を支える看護師の卵を育て、送り出すこと。そのため、徹底した対策を行い、学生たちをサポートしています。
そのなかでも、最も心配されていたのが病院実習の受け入れです。コロナ禍では、これまでのような大病院での実習が難しいため、安城碧海看護専門学校では、地域のクリニックで実習を受けられないかと、安城市医師会に相談し、臨時実習についてのアンケートを実施しました。
その結果、安城市内の17のクリニックで実習生の受け入れが可能という回答を得られました。
安城市医師会 清水誠司会長は今回の対応について「実習を絶やしてしまうと新しい看護師が増えない。増えなければ、コロナでどれだけPCR検査の数を増やそうが、病床数を増やそうが、看護師が足りずに医療が限界を迎えてしまう。看護師を育てていくという信念で、クリニックでの実習を受け入れた」と、医療現場の実情を語ります。
クリニックでの実習生受け入れ
安城市桜井町にある「のむらこどもクリニック」では、医療従事者育成の必要性を強く感じ、学生の実習を受け入れました。ここでは学生たちが、医師の診察時に看護師がどのように補助をするのかを学んでいます。
野村武雅医師は「それぞれ学生が目標を持ってきてくれているので、意義を感じている」と話します。また、実習している学生も「診察を見る機会はあまりないので、こういった機会を通して学びが深まっています」と真剣に実習に取り組んでいました。
地域医療を支え続ける使命感
看護師の大切さを誰よりも知る看護専門学校。新型コロナに立ち向かい、地域医療を支え続けなければならない使命感が消えることはありません。
川島副学校長は「医療現場のひっ迫した様子などをみると、患者さんのためにも、これからの医療を支えていく看護師を養成していかなければならないとあらためて感じます」と語りました。看護専門学校の使命感が、地域のこれからの医療現場を支えています。
(取材・撮影:モーション・ビジュアル・ジャパン/文:石川玲子/2020年9月取材)
安城医師会 安城碧海看護専門学校
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