愛知県碧南市野田町に2023年に開業し、訪問看護事業などを行っている「笑福」では、「ご近所ナースの保健室」という取り組みを行っています。
ここでは看護師に、体の不調や家族の介護に関する悩みなどを無料で相談することができます。
急速な高齢化が進む中、人生の最期まで自分らしい暮らしを続けられるよう気軽に相談できる場所づくりは、全国で広がりをみせています。
「ご近所ナースの保健室」の取り組みから、自分らしくいきいきと暮らしていくために地域に必要なこととは何か考えます。
体の不調などの悩みを看護師に無料で相談
碧南市野田町に2023年に開業した「笑福(えふく)」は、碧南市や高浜市などを中心に訪問看護や、利用者やその家族のニーズに合わせた「オーダーメイドの看護」を行っています。
笑福が行うもう一つの事業が「ご近所ナースの保健室」です。
週に3日(月・水・木)の午前10時から午後3時までの間、看護師に自分の体の不調や子育ての不安、家族の介護に関する悩みなどを予約不要で無料で相談することができます。
一番実現したかった ご近所ナースの保健室
笑福 代表取締役の山端二三子さんは、これまで病院や訪問看護ステーションで看護師として約30年間働いてきた経験の中で、地域の人たちがいきいきと自分らしく過ごしていく助けになりたいと考え「笑福」を開業。
一番実現したかったという「ご近所ナースの保健室」を2023年3月に開設しました。
山端さんに、ご近所ナースの保健室を開設した思いを聞きました。
「みなさんが健康なときから、ある程度のお手伝いをさせていただく。人生最期まで、その人の自分らしさを全うできるようにお手伝いができればと思いこの事業をはじめました」
急速な高齢化 全国に広がる取り組み
日本では急速に高齢化が進み、今後医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれています。
このような状況の中、厚生労働省は高齢者などが住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援体制の構築を推進しています。
全国でも、地域で気軽に暮らしの悩みを相談できる場所づくりは、さまざまな形で広がっています。
ご近所にちょっと寄った感じで気軽に相談を
ご近所ナースの保健室では、訪れた人の話をリビングで聞くことが多いそうです。
ここで働く看護師の小竹千秋さんは保健室について「ご近所のところにちょっと寄った感じや、学校の保健室みたいな形で誰でも気軽に入って来てもらいたいです」と話します。
落ち着いて話をしたいという人には、個室で話を聞くこともあるそうです。血圧計や体温計・体重計などを用意し、来た人に合わせて測定などをしています。
「ひとりでいるよりいい」
この日、ご近所ナースの保健室を利用するのは4回目だという女性が訪れました。
小竹さんは血圧を測り、最近の体調についてなど話を聞きます。
「うれしいです。ひとりでぼけっとしているよりもいいですから」と話す利用者。
小竹さんは保健室を利用してもらうことについてこう話します。
「お話しいただいたことに対して『こうした方がいいですよ』と伝えて、また来てくれたときに『ちょっと楽になった』などと聞くとお役に立てたかなと思います」
訪れた人が楽しめるイベントなども企画
ご近所ナースの保健室では、地域で活動する人などと協力して月に数回、催しも開催しています。
この日は「おしゃべりCAFE」が行われました。
参加者は、自身の体調や日常生活の悩みなどをお互いに話していました。
こうした催しが行われているとき、小竹さんは少し離れたところで違う作業をしながら見守ります。
参加した人が話しやすい環境を作りつつ、看護師として必要だと感じたときには声をかけるようにしているそうです。
みんなが笑顔になる保健室を
3月に「ご近所ナースの保健室」を開設してから、これまで相談に来た人数は約20人。(取材時点)
催しなどの活動も一つのきっかけにして保健室を知ってもらい、その人が自分らしい日々を過ごしていけるよう一緒に考えていきたいと山端さんは話します。
「初めてのところは、なかなか入りづらいという声も聞いたので、どう入りやすくするかは本当に大事なところかなと思います。本当に過ごしたい場所で過ごしたい人と最期まで暮らすことができるように、お手伝いできればと思っています。皆さんが笑顔になるような保健室をつくっていきたいです」
(取材・撮影:後藤未来/文:石川玲子 2023年7月取材)
笑福
場所:愛知県碧南市野田町13番地
電話番号:0566-91-8276
■訪問看護ステーション
月~金(土日祝・年末年始を除く)
午前8時45分~午後5時30分
※緊急対応は24時間365日実施
■ご近所ナースの保健室
月・水・木(祝日を除く)
午前10時~午後3時
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番組名:特集「地域の今」
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