公園の木や街路樹を剪定した時に出る枝や、建物などを解体した時に出る木材などをチップに加工して木材のリサイクルをすすめる企業が、愛知県西尾市一色町にあります。
燃やされるはずだった木材を分別・加工することでリサイクルの道を広げる松治木材の取り組みを取材しました。
製材からリサイクルへシフト
愛知県西尾市一色町にある「松治木材(まつじもくざい)」は、大正10年創業。100年以上の歴史を持つ企業です。
早くから廃材のリサイクルに取り組んでいて、特に2001年からは「リサイクル専門」の企業として業務を行っています。
公園の木や街路樹を剪定した枝などの生木や、建物などを解体した木材をチップに加工してリサイクルし、肥料や紙、燃料などに形を変えて利用できるようにしています。
松治木材の専務取締役、松井太一さんによると、毎日、生木10トン、解体材10トンの、合わせておよそ20トンの木材をリサイクルしているそうです。
持ち込まれた廃材をリサイクル
松治木材がリサイクルする木材の一部は、西尾市クリーンセンターに一般の人が持ち込んだもの。松治木材では市から委託を受けて毎日引き取っています。
西尾市では松治木材が引き取る以前、剪定した枝などは一般可燃物と一緒に焼却処分をしていました。焼却する際にレジャープールや銭湯の熱源にするなどして活用はしていましたが、温室効果ガスが発生していたそうです。西尾市環境部の担当者は、「西尾市だけではできることに限界があるので、こうした企業の取り組みは助かります」と話してくれました。
廃材を分別・加工することで再利用可能に
松治木材では、クリーンセンターで引き取る以外にも、直接持ち込まれた生木や解体材の受け入れも行っています。木材を種類ごとに分別した上で、チップ加工が始まります。
破砕機に入れられ細かく砕かれた廃材は、続いて巨大な機械へ。中央部分では、かごのようなものが小刻みに揺れています。何をしているのか、松井さんに聞いてみました。
「より細かいチップにするために、ふるいにかけています。燃やしやすいチップや、発酵させやすいチップにするための工程です」
こうして加工され、チップはそれを活用する企業へと送られます。
生木と解体材は別々のチップに
松治木材のチップ加工は、生木と解体材を分けて行われます。
解体材の場合、チップの8割は燃料として使用されますが、残りの2割は特別なものに生まれ変わります。それは紙です。解体材の中でも大黒柱などは不純物が少なく製紙用のチップにしやすいので、それだけを選別して製紙用にしています。選別することで焼却を少なくし、できるだけリサイクル率を高めるようにしています。
生木は ほぼ100%を資源としてリサイクル
一方、生木から作られたチップは土壌改良材や水分調整材として、ほぼ100%が資源としてリサイクルされます。西尾市内のブルーベリー農園「ゆたか農園」では、生木から作られたチップをそのまま地面に敷き詰め、土壌改良材として使用しています。
他にも、生木から作られたチップを水分調整剤として活用し、加工している企業があります。西尾市内にある小笠原牧場です。
さらに牧場でチップを活用
小笠原牧場代表取締役の小笠原正秀さんにチップの活用の仕方を教えてもらいました。
「この牧場には全部で430頭くらいの牛がいますが、牛が排出する糞尿の処理が問題になります。そこで糞尿は堆肥として発酵させて肥料にします。水分の多い堆肥と水分調整剤となる木材を混ぜるとちょうどよく発酵させられます」
小笠原牧場では水分が70%ほどの牛の堆肥にチップを混ぜ、水分を50%に下げているそうです。よく混ぜ合わせながら3カ月から半年かけて発酵させ、肥料にしているといいます。
地域の企業が地域での資源の循環を支える
小笠原牧場代表取締役の小笠原さんは、「地域にいるからこそ、資源を地域に還元する取り組みが必要だと思います。循環への参加はやりがいがあると思います」と話します。また、松治木材の専務取締役、松井さんは、「むずかしいことも多いけど、循環型社会に貢献できていることが誇らしいです」と照れ臭そうに話してくれました。
CO2を少しでも減らし、廃棄物を資源としてリサイクルする。松治木材が生み出すウッドチップが、地域で広がる循環の輪を支えています。(取材・撮影:シークラウド映像舎/文:石川玲子 2023年7月取材)
松治木材
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